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国語力の出発点に迫る!我々の「読む」はどうやって形成されるのか?
あなたは今、
文章を読むときに音読をしていますか?
おそらく、
ほとんどの人がしていないと思います。
しかし、幼い子どもは、
声を出さなければ、
文章を読むことができません。
なぜでしょうか?
実は、「音読」という行為は、
就学前から小学1年生になるときに、
最も大きく立ちはだかる壁といっても
過言ではありません。
音読が苦手な子どもは、
ほぼ、確実に国語が苦手になります。
今回は、
人間がどのように「読み」というものを
獲得していくのか、
その行為にどれだけの影響力があるのか、
を解説していきます。
発達性読み書き障害。
彼ら彼女らの特性を把握すれば、
「読み」の獲得のカラクリは解き明かされ、
どのようにアプローチすればよいかが
見えてくるはずです。
「日本語の文章を読む」
という根源に触れる記事にしていきますので、
よろしければご覧ください。
発達性読み書き障害の事実
![](https://assets.st-note.com/img/1714617940534-61QGvl5enw.jpg?width=1200)
発達性読み書き障害。
それは、
脳機能の特性上、
読みや書きに困難を抱える障害。
限局性学習症(学習障害)の1つでもあります。
本来、
ディスレクシアが「読み」、
ディスグラフィアが「書き」に困難を
抱えるのですが、
日本語の特性上、
読みと書きの関連性が非常に高いので、
発達性読み書き障害と言われることが多いです。
世界各国の「読み」に困難を抱える、
ディスレクシアはどのぐらいいるのでしょうか。
分布を見てみます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
英語圏 5~17%
アラビア語 1%
イタリア語 3.1~3.2%
中国語 3.9%
日本語 7~8%
(日本は発達性読み書き障害の割合)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ちなみに、
発達障害全体の割合は、
文科省の調査では6.5%と報告されています。
ADHD、ASDを除いた
発達性読み書き障害だけで、
6.5%という数値を超えている。
如何に、
文科省の調査は実態を掴めていないか
教育現場で気付けていないかが分かると思います。
では、読みに困難を抱える子どもは、
どのような見え方をしているのでしょうか。
当事者×言語聴覚士として働きつつ、
講演活動も行っている方に話を聞きました。
あなたは以下の文章を、
何秒程度で読めるでしょうか。
![](https://assets.st-note.com/img/1714718124792-GLWW3aK6Yb.jpg?width=1200)
ちなみに答えは・・・
![](https://assets.st-note.com/img/1714718208768-CeO22D79xc.jpg?width=1200)
めちゃくちゃ難しくないですか?
(内容の是非はさておき 笑)
ひらがなを解読するだけでエネルギーを使い、
さらに意味を推測するのに時間がかかる。
通常ならば1~2秒でパッと読めてしまう内容。
ですが発達性読み書き障害の子は、
毎時間文字を見る度にあの状況なのです。
つまり、
発達性読み書き障害の子どもは、
普通の子どもが1秒2秒で読む文章を、
30秒、1分と時間がかかってしまう感覚なのです。
そして人よりも時間がかかっていると、
「まだ読めてないの?」
「○○くんいつも遅すぎ・・・」
「またみんなであの子を待つんかい・・・」
みたいな空気が漂い始める。
勉強が嫌いになって
当たり前だと思います。
1クラスに2~3人平均で在籍しているのに、
普通に「読める」ことが当たり前として
授業が進行している。
これは本当に恐ろしいこと。
そして、あなたの周囲にも
当たり前にいる人なのです。
芸能人で言えば、
平野紫耀くんなんかがそうだと思います。
(違っていたら申し訳ないですが)
彼の書いた文章、日記を
たまたま見たことがあります。
鏡文字が存在していたり、
字の形もアンバランス、
読みもたどたどしいといった感じでした。
その代わり、彼はダンスといった
素晴らしい力を開花させている。
余談ですが、LDの人は、
芸能分野の才能が開花する人が多い。
海外だとトム・クルーズが有名ですね。
このように、
探せば周囲に当たり前にいる存在なのです。
音韻の獲得
![](https://assets.st-note.com/img/1714618271531-wfdRfwMSKi.jpg?width=1200)
読みの能力を獲得していくために必要なのは、
「音韻の獲得」
これに尽きます。
音韻の獲得のために必要とされるのが、
「1文字と1音の対応」
です。
健常児であれば、
自然と文字に興味をもち、
読み聞かせなどを行っていく中で
勝手に獲得をしていきます。
そして、
文字を見れば自動的に
脳内で音に変換されるようになる。
これを
「デコーディング」
と言ったりします。
ただ、発達性読み書き障害の子どもは、
先に示したような状態で文字が見えているので、
文字情報だけでは一致させることが困難です。
そこで、絵カードのような教材を使います。
要するに、
「あ」の文字であれば「あり」の絵があり、
絵と一緒に文字を覚えていくのです。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
そして、音韻の獲得が困難なのが、
拗音
促音
です。
そういった音韻のトレーニングを行える方法を
幾つか紹介します。
■ グリコじゃんけん
じゃんけんをして階段を上ったりする遊びですね。
「グリコ」は3拍
「チョコレート」は5拍
「パイナップル」は6拍
のように拍を使いながら音を入れていく。
「チョ」と「チ」と「ヨ」に分けると、
音韻に問題がある子はますます混乱します。
これで1音と入れた方が易しい。
「ッ」の促音は1拍と捉えさせる方がよいです。
■ たぬきクイズ
「た」を抜くクイズですね。
かたたたきを手に入れる
「た」を抜くと答えは・・・
「かきを手に入れる」
です。
文字と音を一致させ、
1文字が1音であることを際立たせていく。
他にも、
ことりゲーム/いすとりゲーム
なんかもOK。
■ 反対言葉
単純に言葉を反対から言うゲーム。
「かき」→「きか」
「くるま」→「まるく」
などなど。
頭の中に文字羅列を思い浮かべて、
それを逆から読む。
文字と音の一致です。
ワーキングメモリのトレーニングにもなります。
■ 動物探し
隠れている動物は何かな?
みたいなクイズです。
例えば、
れいぞうこ
に隠れている動物は・・・「ぞう」ですよね。
楽しみながら、
トレーニングができます。
■ 拗音トレーニング
図のように、
拗音を一致させていく問題を
解かせるトレーニングです。
![](https://assets.st-note.com/img/1714902874357-73nqtpHHY5.jpg?width=1200)
選択式にしたり、
絵の補助を入れたりしながら、
スモールステップで段階をあげていく。
ここまで細かくトレーニングしていけば、
大分音韻の力は上がると思います。
この後も、
〇の数を増やして隠す文字を多くしたり、
完全に慣れてきたら絵をなしにしても
いいと思います。
「読む」のステージへ
![](https://assets.st-note.com/img/1714618405589-q7c7kOYs5T.jpg?width=1200)
「読み」は先の章でも書いたように、
読み聞かせが最強ですので、
幼少期に読み聞かせはたくさんしてあげたい。
その上で、
1文字1音の一致ができてきたら、
文章でも一致できるようにならしていきます。
そのために音読をするのです。
ただ、発達性読み書き障害の子どもは、
見え方に困難を抱えているので、
その補助をする支援を入れる。
例えば以下の支援です。
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
❶範読/オーディオブック
❷読みを補助する道具
❸スラッシュ法/囲み法/ルビ振り
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
自分だけで読むのは困難なのですから、
まずは音声から入れてあげる。
教師が手本として読む「範読」から入る。
もしくは、オーディオブックで聴かせる。
今では、教科書教材を読み聞かせるだけでなく、
蛍光マーカ―や、スラッシュ、
振り仮名を入れることができる
デイジーポッドといったアプリ/ツールもあります。
![](https://assets.st-note.com/img/1714619036324-FEgiKvU5fu.jpg?width=1200)
また、読みを補助するために、
リーディングトラッカーや
カラーバールーペといった道具も有効。
![](https://assets.st-note.com/img/1714694064253-uW783lvB9B.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1714694077388-Hw2Mpk69wo.jpg)
一部分しか見えないようにしたり、
一部分が強調されて見えるようにする道具。
また、
2年生の途中から「わかち書き」が
教科書からなくなるので、
スラッシュで区切ったり、
単語を丸で囲ったりすると読みやすくなります。
![](https://assets.st-note.com/img/1714694463596-CdkiWBVILW.jpg?width=1200)
ルビ振りも極めて有効な支援です。
あるのとないのでは全然違います。
「指で追いながら読む」という
作業を加えるのも支援の1つです。
他にも、歌を覚えてから歌詞を見たり、
暗唱をする指導法も有効。
ある元教師×療育者は、
暗唱をしっかりやっている学校は、
LDが少ないイメージがあると言っていました。
暗唱指導については、
以下の記事をお読みください。
受けられる合理的配慮
![](https://assets.st-note.com/img/1714618625270-qmkeBZPy6X.png?width=1200)
障害者差別解消法が制定され、
「合理的配慮」が努力義務化されました。
法律に制定されているということは、
入試でそれを適応しなければならないということ。
別室で試験を受けることができたり、
試験時間を延長させてもらえたり、
ルビを振ってもらえたり・・・
受けられる合理的配慮は、
事前に確認しておく必要があります。
ただ、その時に、
合理的配慮を受ける資格があることを
証明できるものがあった方がスムーズ。
医師からの診断書、
通級や支援級での支援の記録、
療育手帳など。
そういう活用できるサービスは、
本人が望むのであれば、
最大限使わせてあげる。
その為に、周囲の大人が、
サービスの存在を知っていることが大切です。
まとめ
![](https://assets.st-note.com/img/1714618673255-ePzxbTBvCW.jpg?width=1200)
1文字1音の認識ができて、
音読ができるようになる。
音読が習熟していく中で、
脳内で音声が自動化され、
黙読ができるようになる。
そうなってようやく、
文章の内容読解に入ることができ、
読解ができると、
解釈を加えることができるようになります。
これが、国語の「読み」の力の体系です。
後は「語彙力」をどれだけ高めるかで、
相乗効果的に「読み」の力は上がっていきます。
日本ディスレクシアセンター理事長であり、
筑波大学元教授である宇野彰さんは、
「発達性読み書き障害の子で、自動車学校の運転免許試験に落ちた子を見たことがない」
と言っていました。
だから、必ず、
彼ら彼女らに適する指導方法が存在するはず。
これまで、
音読ができなく、数々のつらく、
かなしい思いをしてきた人々の思いを
無駄にしないためにも、
よりよい方法を探し続けていきたいです。
読解に関する支援方法は
以下の記事にも記載してありますので、
そちらをご覧ください。
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