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解説!日本維新代表選#4 「目標は統一選600議席」

新代表に就任した馬場伸幸衆院議員

8月27日の日本維新の会臨時党大会で新しい代表に選出された馬場伸幸ばばのぶゆき。ふたを開ければ、投票総数1万1054票のうち、8割近い8527票を獲得し、足立康史あだちやすし衆院議員の1158票、梅村うめむらみずほ参院議員の1140票を大きく上回りました。

新しい党の「顔」の誕生に、本拠地の大阪以外でも関係者から期待と不安の声が上がりました。

代表選の解説は今回の4回目が最終回。「圧勝」で新代表に就任した馬場氏が率いる維新は、今後どこに向かおうとしているのか。その戦略や課題を探ってみようと思います。(政治部/元大阪社会部・広山哲男) 

「解説!日本維新代表選」前回までの記事はコチラ↓

■ キーマンは吉村知事、「広告塔」からの脱却は

新代表に就任した馬場氏は、党大会の記者会見で次のような発言をしました。(一部要約しています)

・しっかりと改革を前に進め、自民党と対峙たいじできる政党に大きく育てていく。

・「日本大改革プラン」(今年5月に発表した党の目玉政策)で、税と社会保障と働き方規制の改革をセットでやることにした。夢や希望のある社会を一緒に作ろうと国民に伝えていきたい。

・政権とは是々非々ぜぜひひの路線を堅持けんじしたい。野党とは政策ごとに連携しても良いと思うが、他党が旧態依然きゅうたいいぜんとした態度で自民党と向き合うのであれば協力しない。

・最大の目標は来年の統一地方選。今のままでは、維新の議席は微増微減びぞうびげんで推移していくだけなので、もっと地方議員を増やしたい。

 この記事を書きながら、何度か繰り返し読んでみましたが、党の運営方法や政策の具体的な内容、つまり「どういうことをしたいのか」というビジョンが、いまひとつはっきりしないなという印象です。

党内ではすでに、松井一郎まついいちろう前代表の「院政いんせい」論を求める声が上がったり、「松井ロス」「イチロー・ロス」という言葉もささやかれたりしています。

そうした中、馬場氏は、副代表を務めていた大阪府の吉村洋文よしむらひろふみ知事を党のナンバー2に当たる「共同代表」に指名しました。これにはある狙いがあります。

大阪で発足した維新は、地元の大阪府議会、大阪市議会の議員らと、東京・永田町の国会議員団との間にあつれきがあると言われてきました。

その両者をまとめるための「仕掛け」が、国会議員をトップにするのではなく、大阪府知事や大阪市長という地方自治体の首長が代表を務めるという独特のスタイルでした。創設者そうせつしゃである橋下徹はしもととおる氏や松井氏は、党の代表であると同時に「地元・大阪の代表者」だったわけです。

今回、初めて代表が国会議員の馬場氏になったため、新たな「仕掛け」が必要になりました。それが地方自治体の首長である吉村氏の共同代表就任です。吉村氏は馬場氏を支えながら、地元・大阪を取り仕切る役目も担っています。

共同代表に就任した吉村洋文大阪府知事

吉村氏は2011年に大阪市議となった後、衆院議員も経験し、2015年から橋下氏の後継として大阪市長を務めました。2019年に大阪府知事となってからは、新型コロナウイルスへの対応でメディアに登場する機会が増え、一躍いちやく全国的な有名人になりました。

これまでも党の副代表を務めてきましたが、大阪の地方議員の中には「幹部というより、あくまで広告塔だ」という声もありました。共同代表となった今、党の運営でどれだけ手腕しゅわん発揮はっきできるか注目されています。

■ 大阪市長選で「予備選」を導入!狙いは…

維新が今年3月の党大会で採択した活動方針では、来年春の統一地方選で「地方議員の数を600人以上にする」という目標を掲げています。現状は約400人ですので、1・5倍ということになります。

とくに大阪以外のエリアでは、現状約150人のところ、倍増となる300人以上を目指すことにしています。馬場氏は民放のテレビ番組で、全体で600議席に届かなければ代表を辞任する考えを示しました。

トップ自らが進退しんたいをかける姿勢を示し、党内の奮起ふんきを促すのが狙いとみられます。

統一地方選には、吉村氏の動向が注目される大阪府知事選や、政界を引退する松井氏の後任を決める大阪市長選も含まれます。

吉村氏が代表を務める地元組織「大阪維新の会」では、大阪市長選の公認候補者の選考せんこう予備選よびせん」を導入しました。手を挙げたのは大阪府議や大阪市議ら5人。12月に党所属議員や党員らによる投票を実施し、候補者を決める予定です。

大阪維新の会が導入する大阪市長選の予備選の応募者とオンラインでやりとりする吉村氏

予備選を導入する目的について、松井氏は「選考過程を明らかにすることで政治に対する関心が高まるから」という考えを示しています。

ただ、維新のベテラン府議は取材に対し「統一選で勝つためには、維新中心の選挙にしなければならない。予備選を盛り上げ、その勢いで統一選に臨みたい」と話しました。話題になるような新しい取り組みで注目を集め、選挙本番に向けてPRしたいという思惑を隠していません。

予備選に応募した5人はいずれも「吉村世代」と呼ばれる比較的若い地方議員たち。今はあまり有名でない候補者も、予備選で知名度を上げることができれば、本番の市長選でも大きな「武器」になる―というのが狙いです。

■ 迫られた変化、今後はどうなるのか

共同通信が実施した世論調査の結果では、2016年4月時点で3・6%だった維新の政党支持率は、今年10月時点でトップの自民党(34・1%)に次ぐ12・6%でした。立憲民主党(10・7%)を上回り、公明党(3・5%)の3倍以上となっています。

データを見ると、大阪以外でも少しずつ浸透しつつあるようですが、自民党との間にはまだまだ大きな差があります。国会議員は大阪選出のメンバーが圧倒的に多く、今回の解説2回目でも触れたように「全国政党」への道筋が見えてきた…とまでは言えません。

実際、馬場代表も取材に対し「地方議員が増えなければ衆院選で勝つことは難しい」と話しています。

国会議員初の代表に就任し、統一地方選の結果に進退をかけた馬場氏。
共同代表という立場で党全体と大阪の両方を引っ張ることになった吉村氏。
「予備選」の導入で支持拡大を目指す大阪市長選。

今回の代表選は、維新にさまざまな変化と覚悟を迫りました。

馬場・吉村体制のスタートからまもなく2カ月。今回の変化は維新に、そして国や地方の政治に、どのような影響を与えていくのでしょうか。今後も取材を続けていきます。

結党からの10年を振り返った松井氏のインタビュー記事はこちら ↓

日本維新の会代表選の一部始終をまとめた記事はこちら ↓

広山 哲男(ひろやま・てつお) 1990年生まれ、千葉県出身。2015年に入社し、福島支局、松山支局を経て大阪社会部で検察庁、大阪市役所担当。22年9月から政治部。結果にコミットするジム通いで25キロの減量に成功も、リバウンド気味なのが悩みの種です。

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