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ミクロ及びマクロ経済学の勉強法(ECC受講者)

※自分は令和2年度の編入学試験を受験し2020年4月に編入学しました。令和3年度(2021年4月入学)・令和4年度(2022年4月入学)の編入試験は形式が変更されていますのでご注意下さい。
※追記:2022年以降正式に、京都大学経済学部編入試験から筆記試験がなくなりました。現在は口述試験(経済学に関する口頭試問を含む)・TOEFL iBT公式スコア・所属大学等の成績・学修設計書・学業人物評価書などで選抜が行われていますのでご注意下さい。
※追記:本noteの情報が古くなってきたことを踏まえ、無料で読める範囲を拡大しました。編入経済学に関して必要十分な情報を無料公開しておりますので、是非ご活用下さい。



そもそも、

あらゆる勉強には、対象の分野に関係なく共通する『基本戦略』があると自分は考えていて、ミクロ経済学・マクロ経済学を勉強する上でも自分はこの考え方をかなり大切にしてきました。

それは、

❶本質的『理解』
❷知識の『整理』
❸問題の『徹底反復練習』

の3つです。
以降それぞれについて解説していきます。

第1に、どんな基本事項であっても『なぜ』そうなるのかまで理解して下さい。それが『本質的理解』だと自分は考えます。そして、その本質的理解を提供してくれる、質の高いテキスト選びに相当の時間を割いて下さい。目的とする試験に最適な教科書を選ばないと、不足が生じて何冊も読むことになるか、オーバーワークになって時間が足りなくなります。できる限り大型の書店へ行き、経済学テキスト全てに目を通し、本質的理解に足るテキストを選んで下さい。自分は2つの大型書店に合計6時間以上にわたり居座り続けました。
後ほどお伝えしますが、ECCの予備校のテキスト(と自分の場合はそのweb講義)はソローモデルを除き残念ながら本質的理解には至りません。また、多くの経済学テキストがいろんな要素を省いている割に冗長で読みにくく、初学者が本当に知りたい内容も不足しています。以下に自分が厳選したテキストを載せますのでご確認下さい。非常に優れたテキストです。
そしてさらに優秀なテキストが出ていないか、ご自身の目でご確認下さい。

第2に、それをいつでも振り返ることのできるよう『核たる経済学知識集』として『整理』して下さい。一度本質的理解に到達してもいずれ人間は忘れます。自分の本質的理解の結論を紙に残して下さい。忘れたらそれを振り返れば1分で思い出させる、そんな『整理』をしておいて下さい。がむしゃらに『暗記』した知識は忘れやすいですし、本番で役に立ちません。体系的に『整理』された知識だけが本当に使える知識だと自分は考えます。
整理ノートを作る際は、自分は一般的な『大学ノート』ではなく一目で重要事項の全てが目に入る『A4コピー用紙』を使用しました。グラフを書くとき邪魔なので罫線は不要なんです。また重要な概念・キーワードについては赤ペンを使い丸で囲みました。いろんな書籍を読んでさまざまなノートの取り方を試してきましたが、上記が自分にとって最も視覚と記憶に残りやすい方法でした。A4であれば1ページあたり5〜10秒程度で内容を読めますので、復習の際は機械的にページをめくり続けていくだけです。
因みに、使用する用紙の大きさに自分はかなりこだわっていて、B5は一度に目に入る情報量が少ないので使いません。また面積が狭いので複雑な概念を整理するのに不足することが多いです。一方、B4用紙の場合は全体像を把握するのには最適ですが少し大きすぎます。目を上下左右に動かしていかなければならないので、大量の枚数を復習する場合には脳よりも目が疲れて効率が下がります。一生使う知識集になるわけですから、整理の仕方にとことんこだわることをオススメします。

第3に、『本質的理解』をベースにその分野の問題を『徹底反復練習』して下さい。同じ問題集をあきるまで繰り返してください。問題集とは『解く』ものではなく、解法を『脳に染み込ませる』ためのものだと理解して下さい。後に改めて説明しますが、最も質の高い問題集は『ECCテキスト』と『過去問』です。間違いありません。過去問はできる限り過去まで遡りましょう。他の受験生が持っていない過去問と解答まで入手できれば、それだけで一歩先に行けます。自分は平成22年までさかのぼってやりました。
また、解法プロセスが重要なので、重要問題および難問については、解法プロセスを段階ごとに整理して論述形式にまとめストックしていきました。この場合はB4用紙を使いました。論述はどうしても文量が多くなるのでA4よりB4をオススメします。

以下は、上記のプロセスで、自分が整理したミクロ・マクロに関する整理ノートの全てです。中身も一部公開しておきますので、参考にしてみて下さい。

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ちなみに、上記の整理ノートは『知識編』と『解法プロセス編』に分かれています。
『知識編』は経済学の知識として必要なエッセンスを自分なりに整理し、重要な概念に赤ペンでマークをつけたものです。一目で重要事項全てが目に入るように基本A4(場合によってはB4)用紙にまとめてあります。
『解答プロセス編』は過去問や模試・ECCのテキスト問題などの設問を左上に貼り付け、解答プロセスを段階毎に整理しながらB4用紙にまとめたものです。

次に自分の使ったテキストを列挙していきます。

❶石川秀樹 『速習ミクロ経済学』 『速習マクロ経学』 : 難易度★☆☆

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これは国家公務員試験などを主な対象に書かれた資格検定用のテキストですが、非常に優れた入門書です。説明は非常に丁寧で分かりやすく、なぜそうなるのかまで必要十分な説明が与えられています。入門的なテキストとしてよく名前が挙げられるテキストとして『らくらく』がありますが、自分はこちらを使用しました。(2019年執筆当時『速習』はほとんど知られてなかったのですが、今ではコア本として比較的名前が上がるようになってきました)
自分はなぜそうなるのかまで納得・理解できないと次に進めなくなってしまうのですが、らくらくの情報量ではどうしても満足できない項目が多かったからです。このテキストは、らくらくより文量が多いだけに(概ね標準的な事項に関して)不自然な情報の欠落も過不足もありません。(なお付随するYoutube講義動画はさほど質が高くないので見る必要はないと思います。)ただし問題点もあります。ミクロ経済学では『純粋交換経済』の問題やその解法の記載がありません。また、マクロ経済学では、『ソローモデル』の説明などは表面的で本質的理解には至りません。さらに、本書を完璧にしても編入試験の問題は解けません。それには編入試験に対応した知識と、問題演習が必須です。それでも、経済学初学者からある定度の中級者まで、目から鱗の情報が多く記載されています。
例えば、ミクロ経済学において、企業の「限界費用曲線MC」が、なぜ「平均費用AC」と「平均可変費用AVC」の頂点を下から上に貫くのか直感的理解をされている方はどれくらいいるでしょうか。
自分は本書を読み進めながら紙面を赤ペンで猛烈に書きこみしつつ、記載されているエッセンスのみをA4コピー用紙にまとめていきました。書いてまとめるのは泥臭く、エネルギーも時間もかかります。自分は1冊につき1ヶ月以上かかりました。それでも、いつでも振り返ることのできる『知識集』のようなものが欲しかったので、最後までやりました。
ミクロ・マクロの両書を終えたのは本番から概ね9ヶ月程前だったかと記憶しています。

文量が多いため『速習』は比較的時間的余裕がある方向けです。時間がなければ『らくらく』でも問題ありません。特に(自分は使用してないのですが)『らくらくの計算』には基礎的な計算パターンのエッセンスが詰まっているので、早い段階であれだけ先に仕上げるという手はありかと思われます。

❷ECCテキスト 『ミクロ経済学α』 『マクロ経済学α』 『京大経済学』 : 難易度★☆☆

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必須です。説明は省略が多いですし、なぜそうなるのかの記載が基本ありません。文体も箇条書きに近く無機質ですし、文と文の間がどういう論理構造になっているのか推測できないので、本質的理解に到達しません。
それにもかかわらずやはり必須です。ここには編入試験を突破するのに必要な知識がまとめられているからです。ここに記載されている内容は全て重要です。逆に言えば、ここに記載されてない内容は編入試験においてオーバーワークになる可能性が高いと言えます。
上記の『速習ミクロ・マクロ』との関連では、『速習』に記載がなく『ECCテキスト』には説明が与えれている内容も多くあります。例えば、すでに述べた『純粋交換経済』の解法パターンがそれです。また、唯一ECCのweb講義の中で『ソローモデル』については極めて本質的な説明がなされています。これだけでも自分は受講の価値を感じました。web講義の中ではテキストではなく担当講師の独自プリントを使用し、基本方程式の導出や時間経過を伴う動学の動きについても思考訓練を与えてくれています。ただし独自プリントは見にくかったので、自分は『解法プロセス集』としてB4にまとめ直してストックしました。
因みに、受験生の間では難問と言われていた令和2年度(2019年入試)の京大マクロ経済学大問2-(4)ですが、『合理的期待』と『適応的期待』についてもECCのテキストにはしっかりと説明・記載があります。
一方で、参考までに、『速習』に記載されている内容でかつ『ECCテキスト』に記載のない情報もあります。例えば、IAD-IAS動学モデルについては『速習』には一定の説明がありますが、編入試験では出題がほぼ見られないようで『ECCテキスト』の情報量はかなり薄いです。また『産業連関表』『ヒックス=サミュエルソン・モデル』『金利平価説』の説明なども同様です。ただし編入試験に出ないからと言って、やっておいて損はありません。
自分は『速習』に記載のない重要な項目については、そのエッセンスをA4もしくはB4にまとめてストックしました。Web講義については1日あたり5時間程度、倍速で集中的に受ける期間を設けて、概ね1〜1.5ヶ月で全ての講義とテキストを一通り確認しました。

上記以外には、マクロ経済学の全体像や最低限のマクロ経済史を抑えるために笹倉和幸『標準マクロ経済学 第2版』の序章を読んだり、自分の実力を把握するために『経済学検定試験ERE』を受けたりなどしていましたが、編入試験にはほぼ役に立ってません。(例えばEREは公務員試験対策などには良いかもしれませんが、必要とされる知識・理解は表面的で問題傾向も全く異なります。)

非常にマイナーではあるものの、内容を見る限り以下の2冊はかなり編入試験向けのマクロ経済学の本で質が高いと自分は思っています。表現が平易でかつ文量も抑えられており、無駄な記述がありません。
  ❶嶋村紘輝『マクロ経済学』商学双書2
  ❷芹澤高斉『基本マクロ経済理論』八千代出版
独学を考えられている方は良かったら少し見てみると良いかもです。有名どころの二神マクロ・中谷マクロをやるより得るものが大きい気さえします。

以上です。
「核となる経済学知識」を得るためのテキストとしては上記の2つで充分だと思われます。つまり、やみくもに難しいテキストを読む必要はないということです。高度に学術的なテキストは理解するのに時間がかかるので、費用対効果が低いというのが自分の率直な印象です。それよりも、基礎から標準的事項に関する説明が丁寧かつ論理的に与えられている入門書をしっかり理解して下さい。編入試験合格のためにやるべきこと・時間をかける必要のあることは山ほどあり、難しいテキストと格闘し時間を消耗するのは(編入試験においては)非効率的です。どうしてもチャレンジしたいなら合格した後に読んで下さい。
ただし、他の方の体験記などでオススメされている各大学の問題作成者が作問の参考にしている可能性の高い教科書などは一読する価値がありそうです。京都大学を例にするなら、荒井一博『ミクロ経済理論』・N=グレゴリー=マンキュー『マンキューマクロ経済学』などでしょうか。ただし自分は読んでいません。そのような"タネ本"があるとは当時は知らなかったからです。知っていれば必ず目を通していただろうと思います。

続いて自分が使用した問題集について列挙していきます。

❸ECCテキストの『演習問題』 : 難易度★★☆

必須です。ECCテキストを使わない手はありません。経済学を深く理解している講師の方が、相当の吟味を重ねて選抜した問題ですから、全ての問題を完璧に理解する価値があります。問題はどれも本質的です。ECCテキストの最大の価値はこの問題集にあると理解してください。これを徹底反復しましょう。
実際に解いた後は頭の中で解法をイメージできるまで繰り返すか、解答を反復して読んで頭に叩きこむなどする必要があります。自分は重要問題と難易度の高い問題については自分なりの『解法プロセス集』にまとめストックしていき、定期的に見返していました。ECCの模範解答は、作成している人がバラバラなのか、類題でも記述表現がまちまちです。頭の中をごちゃごちゃにしないように注意して下さい。『解放プロセス集』さえ作ってしまえば、次に問題を解いた際も答え合わせに悩む必要がなくなります。

❹過去問(最低10年分) : 難易度★★★

入手できる限りの過去問を集めてください。そしてそれを徹底的に繰り返してください。一般入試と違い過去問と同じ問題が再度出題されることが、京都大学でも他の大学でも複数回見受けられます。実際に、令和2年度(2019年)の京大試験でもミクロ経済学の経済人に関して同じ論述が出題されています。
繰り返しますが、他の受験生が持っていない過去問と解答を入手できれば、それだけで一歩先へ進めます。少なくともこの点で情報劣位にならないよう注意して下さい。2次受験者であっても過去問を数年解いただけで本番に臨む人は案外多いのが現状です。せっかく正しい方法で正しい努力をしたのに、過去問集めによって点数を落とすのは非常にもったいないと自分は考えます。
ところで、過去問を解く際は『2回解き』をオススメします。1回目は、本番同様時間をはかり解答時間内で1点でも多く点数を奪い取りに行くことを意識します。2回目は、解答時間を無制限にして自分の持っている知識をフル動員させ、納得いくまで解きます。もうこれ以上の解答は作れない、これ以上何も浮かばないというところまでやり切ったら、そこで初めて解答を見ます。こうすれば、自分に足りないのは時間内で解答を仕上げる『答案力』なのか、本質的な『知識・理解不足』なのか判断することができるからです。
参考までに、過去問の『ソローモデル』については自分なりに『解法プロセス集』を作り本番までに相当数繰り返しました。また平成22年度のIS-LM曲線の導出の問題も同様です。極めて本質的で、IS-LMモデルがどういう体系で成り立っているのか整理する素晴らしい問題だと思っています。
京大の解答はECCのものと中央ゼミナールが編纂しているものと2種類がありますが、余裕があれば2つの解答を見比べてみて下さい。驚くことに、平成27年度の「信用創造」に関する貨幣乗数の解答は2校で完全に異なっています。どちらも相当の実力を持った講師の方によって作成されているはずですが、そのくらい編入試験の問題は曖昧な要素を含むということでしょうか。なお、本問に関しては中央ゼミナールの方が正しいと自分は考えます。

❺実務教育出版  『新スーパー過去問ゼミ』  マクロ経済学・ミクロ経済学 : 難易度★☆☆

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ECCのテキスト問題は非常に優れていますが、基本的な問題演習が不足している気がします。素振りや足腰を鍛える意味で、過去問ゼミに記載されている計算問題に限り、全て解きました。また解いた問題全てに対して論述を想定した『解法プロセス集』をB4にまとめストックしていきました。
このテキストは上記と違い必ずやる必要があるわけではないのですが、これはこれで非常に優れた問題集であることは間違いありません。問題数がかなり多いですから、皆さんがご自身の目で確認してやるかやらないか、やるならどこまでやるかを判断して下さい。
個人的なことですが、国家レベルの経済規模や財政・金融政策の動学的な影響が、紙とペンだけで算出できることにある種の知的興奮を感じます。それがきっかけでマクロ経済学に興味を持ち編入試験を受けるに至りました。過去問ゼミをかなりのエネルギーを費やしてやったのは、自分の場合、必要性に迫られてというよりもただ解いていて楽しかったからかもしれません。

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