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ちょっと楽しくなる小説の読みかた

高校の時に国語教師から小説を読むときの心得的な事を教わり、7年たった今でもその読み方が身についているほど効果的なものだと実感しているので、それをメモがてらまとめてみます。ちなみに、論文とか評論文の読み方ではなく、あくまで「小説」の読み方です。普通に読むよりちょっと楽しくなる小説の読み方、と捉えていただくのが一番わかりやすいかと思います。

作者の背景をざっくり理解する

いつ、どんな時代で書かれたか。作者はどんな人物に影響されたか。どんな家庭環境で生まれ育ったか。作者の背景を知ることで、本の理解はぐっと深くなります。超当たり前じゃん!って拍子抜けすると思いますが、作者の背景がわかっていないと、あとから紹介するコツさえ活用できなくなり、物語の重要なコアを見落としてしまいます。なので、最低限このポイントは抑えるべきです。ちなみに、ここでこだわると永遠に深入りしてしまうので、面倒な方はwikiなどを読んでさくっと理解する程度でも充分です。

本の内容をググらない

「作者の背景を理解する」と前述しましたが、気をつけて欲しいのはこの時決して「本の内容」を検索しないことです。小説を読んでいると、文内に他の著名人の引用文や、不可解な描写を見つけることがよくあります。例えば、村上春樹の作品『海辺のカフカ』だと、いきなりジョニーウォーカーなる人物が登場する。誰?となりますね。この時に「村上春樹 ジョニーウォーカー 意味」とネットで検索すると、数多くのブログ、読書家からの分析、まとめサイトを見つけることができます。ネット情報を参考にすると、ある意味多角的な視点から本の理解を深めることができるかもですが、ネットの情報を一度吸収してしまうと、自分で考える空白部分が埋もれてしまい、視野が狭くなってしまいます。初めて本を読むときは、ググって他者の意見をみずに、まずは自分の視点で文章を追ってみてください。自分にしか見つけられない、小さな発見こそが、文学の面白みなのです。それでもどうしてもググりたければ、最悪読み終わってからググってみると良いでしょう。

あえて皆が注目してなさそうなシーンに注目する

本のあらすじなどをネットで検索すると、大半は有名な引用文に注目し考察する内容を多く見かけます。また、国語の授業でも、有名なシーンや文章を抜粋し、「この場面が示唆する内容は何か。200文字以内で答えよ」的な質問が試験に出てきたりします。そんな大衆が注目しているシーンを読んでも、文学の面白みはこれっぽちも感じられません。より文学の面白みを味わうには、まだ世の中に出ていない考察や視点を持ったほうがより面白くなります。そのためには、どんなに些細なシーンや台詞でもいいので、あえて皆が注目してなさそうな描写にライトを当ててみる。

例えば、ある本の中で「虹色のカラスが主人公の頭上を通り過ぎた」という描写を見つけたとします。ここで多分大半の人は「なぜカラスが虹色なのか」という点に焦点を当てるはずです。その考察も十分面白いのですが、ここであえて「なぜ作者はスズメや鳩などの鳥ではなく、あえてカラスを選んだのか」という点や、「なぜカラスは道路ではなく、主人公の頭の上を通り過ぎたのか」という、超細かいし誰も気にしたことがないような部分に焦点を当てて分析すると、面白い考察が浮かび上がってきます。中には、本の作者でさえ考えたことがないような飛び抜けた考察ができるかもしれない。これこそが小説の醍醐味です。

全ての設定は作者が意図して作っている

小説を読んでいると、さっと物語の流れを理解する程度に留まりがちです。ここで一歩後ろに下がり、「この本に出てくる登場人物、台詞、着ている服や素材まですベて作者が意図して作ったものである」ことを念頭に置いてみてください。すると、例えば「なんでこの人物はいつも赤い服を着ているんだろう」という考えから、「なんで作者はあえてこの人物に赤い服をいつも着させているんだろう」という考えにシフトするとができます。前者の考えだと、「きっとこの人は情熱な人なんだろうな」という考察で止まりますが、後者だと「なぜあえてこの人物に、この色なのか。作者は戦時中にこの作品を書いたから、当時の争いに対する情熱や怒りを読者に伝えるため、あえてこの凶悪な人物の服飾にいつも赤を使っているのかもしれない」というように、登場人物のキャラを理解するだけでなく、作者からの隠れたメッセージや、示唆された意図を探り当てることができます。これをするためにも、前述した「作者の背景を理解する」ことが重要なのです。

繰り返し出てくる単語に注目する

夏目漱石の『こころ』では「血」に関する描写。『グレートギャツビー』では「緑色」の描写。どちらも共通しているのは、それぞれの単語が作品中に繰り返し出てくることです。作品の中で繰り返し出てくるということは、つまり作者が意図的にその言葉を繰り返し散りばめているということ。1つ1つ拾い集め、それぞれ繋げてみると、作者が伝えたい大切なメッセージが浮かび上がってきます。どの作品でも、必ずと言っていいほど繰り返し使われる単語、描写、傾向があります。それらを拾ってみると、意外なメッセージを見つけられるかもしれません。

アナログで読む

近年kindle本などの本の電子書籍化が進んでいますが、個人的に小説は紙の書籍で読むことをおすすめします。私はkindleと紙書籍どちらも使っていますが、基本的にビジネスや自己啓発などの教養本はkindle、小説や物語を楽しむものは紙書籍に分けて読んでいます。kinldeの利点は、いつでも読めるので満員電車でも読めることと(都内在住だと結構重要)、ハイライト&メモ機能がついているので本の要点をいつでもさくっと読み返せること。なので、教養本には最適かなと感じています。その反面、ページを頻繁に前後しながら読む小説にとっては不向きなように感じます。実際、kindleで小説を読んだ時よりも、紙書籍で読んだ時の方が小説の前後を瞬時に確認しやすく、分析もしやすかった。ちなみに、このポイントは私の超個人的意見なので無視してもいいです(笑)


以上、小説を読む時のちょっとした工夫でした。私は登場人物の名前やキャラ設定をすぐ忘れてしまうので、小さいノートに登場人物の特徴をいつも書き留めておきます。あとは、気になる描写を見つけたら付箋を貼りまくる(笑)今後も、もっと小説を楽しく読めるような工夫がないか模索し続けたいな〜。あとは人の名前を覚えられるようになりたい、切実に。

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