掌編小説 帰り道

 十月になり、随分と日が短くなった。仕事を終え外に出ると、西の空がかすかに赤いのが見えるが自分の真上はすでに暗い。

 自宅まで歩いて帰る。等間隔に立っている街灯の光が眩しくて、目を細める。辺りの家々の窓からも、明かりが漏れていることに気付く。

 明かりの数だけ、人生がある。
 かつて東京の夜景を見たときに、そんなことを思って泣きそうになったのを思い出す。いつも通る道沿いの住民がどんな人たちなのか全く知らないが、それぞれに人生があって大切なものを守りながら生きていることだけは分かる気がする。

 他人の家でも、明かりを見るとホッとする。そこには、確かに人がいる。日々の営みの静かな躍動を感じながら、帰路に着いた。