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三回忌

ルルちゃんが旅立って二年が経った。

ルルちゃんが部屋を歩くのをまなじりに見たような錯覚が暫くは続いていたけれど、そういうことも今ではなくなった。

けれども喪失感は消えない。
あとルルちゃんさえ居てくれたなら、もう何も不満は無いのに。

実はあれからずっと、絶えず燻り続けている自問がある。

点滴して延命させたことで、苦しみを長引かせてしまったんじゃないかって。

自然に任せるべきという考えの妻は、しかしぼくが後悔してしまわないようにと点滴に同意してくれた。

けれども結果的に、ルルちゃんにとって楽な最期ではなかった。
だったらいっそ、安楽死させてあげた方が良かったんじゃないか、とも思う。

妻は安楽死にも反対なので、これは唯一意見が合わない。

延命と安楽死では極端だけれど、自分はもし(スティーブン・キングの)ペットセメタリーが実在したら埋めに行ってしまうタイプな気がする。
なので、自分で自分をもはやあまり信用できない。

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本当は解っているんだ、何をどうしたって必ず後悔するっていうことは。
友人は少しでも長く一緒に過ごせたらそれで正解なんだと励ましてくれた。

けれどももう、正直に認めなければならない。
延命したことは間違った判断だった、と。
おそらく飢えと乾きによって亡くなる方がまだ楽だったろう。
別れがどうしても嫌過ぎて、こちらの覚悟が足りていなかったのだ。
そのために却って苦しみを長びかせる結果になってしまった。

最後の数日は視力を失い、ルンバみたいに壁にぶつかっていたルルちゃんの姿を思い出す度、自責の念にかられる。
やがて歩けなくなり、こと切れるまでの半日間の長い苦しみ……。
ぼくが判断を間違えたせいで、ルルちゃんにも妻にも辛い思いをさせてしまった。

ルルちゃんごめん。ごめんね本当に。
いつもそうなんだ、肝心なところで間違えてしまう。
もう同じ間違いは二度としないように頑張るよ。

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