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扉が開くと、そこに剥き出しのウサギが待ち構えていた。

前回からの続き。

要約すると、東京在住の女がある日、一人で都内のホテル ART STORAGE HOTELS KAIKA TOKYO(以下KAIKA)に泊まり、お茶を飲みながら仕事をし、たまに館内をうろついて、夜はTVでケン・ローチ監督の『わたしは、ダニエル・ブレイク』を見て帰った、というだけの話である。

なのに何がすごいって、館内の仕掛けが見応えありすぎ!

ここでミュージックビデオ、撮れるよね

まず、宿泊者にしか公開していないというアートコレクション。絶対にこれは見て帰らなければならない。B1Fに降りると、MuseのMV『Time is running out』が今すぐ再現できそうなラウンジがある。

写真では明るく写ってるけど、実際はもっと暗い。そして何かの電子音がずっと鳴っている。宿泊者はここでお茶しながら仕事したりできるそうだけど、心の平穏はあまり保たれなさそうだ(正直に言うとちょっと怖い。誰かきて。できればマシュー・ベラミー...)。

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いざ、現代アートの「裏側」に潜入!

さらにそこから薄暗いアートストレージにアクセスする。NANZUKA、Yoshimi Arts、Clear Gallery Tokyo、VOILLD、KOSAKU KANECHIKA、Yumiko Chiba Associatesといったギャラリーの作品収蔵庫となっており、ここから先はカードキーがないと入れない。

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駐車場だったと思しき空間で、鉄網越しにアート鑑賞をするというのは美術鑑賞というより、むしろアートの中に自分が入っていく感じ。生々しい体験だ。個人的に舘鼻則孝さんのファンなので、間近で作品が見られて嬉しい。

ここにあるスタッキングボックスは「インテリア」ではなく、実際に使われているものだろう。ブルックリン風というのも単なる格好つけではなく、ここの場合はちゃんと実用性と結びついている。蔵前、ほんとにブルックリンなんじゃん。

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エレベーターが開くと、そこには剥き出しのウサギが

アート作品はこのほかにもロビーや各フロアなど、KAIKAのあらゆるところに飾られている。公募プログラムなどもあるので、若手アーティストが作品展示をできる良い機会にもなっているようだ。ロビーでは作品集やグッズも販売されていた。美術館でもギャラリーでもない距離感なので、アートファンでなくても楽しめると思う。

ちなみに何がどこにあるというのは特に説明されていない。巨大ウサギのオブジェはどこにあるか分からなくて、エレベーターでいろんなところをさまよった末に見つけた。急に現れたから、まじでびっくりしたわ。

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私はこの今までにない外的刺激の多さにドキドキして、夏バテも吹っ飛ばして部屋でバキバキ仕事をした。そして夜中に鑑賞した映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』の素晴らしさも相まって、たった一泊で、ものすごくたくさんのことをチャージできた気がした。一人で、3,000円ちょっとでこれだけの体験ができたら上出来じゃないか。都内も、立派な旅先だ。

「教養」とは学歴のことではなく、「一人で時間をつぶせる技術」のことでもある。(中島らも『今夜、すべてのバーで』)

もちろんコロナ禍なので、宿泊するにもマスクして、入り口で消毒して、チェックイン時には検温も必要となる。友だちとキャッキャしながら泊まるというのはまだできないけれど、いつか戻ってくる「みんなとの時間」まで、私は中島らも流の「教養」を少しずつ身につけていきたい。

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なかなか会えない人たちも、これから会うかもしれない人たちも、お互い元気でいつか会おうね。

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