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自分の価値基準と相手の価値基準の摺りあうポイントを見つけるのが管理職の役割。

私の所属している組織では、今度人事異動があり、それに伴い、チーム内でも業務担当の変更を行うことになりました。

課長以上で話し合って業務分担を決め、それをメンバーに説明していくのですが、納得してもらうのに苦労をしています。

みんな正論はわかっているので、どうしてそのような担当になったのか、説明すれば一定の理解を示してくれます。しかし、どこか納得できない気持ちがある。全員が全員同じ価値基準ではありませんし、考えていることをロジカルに説明できるわけでもありませんから、会話をしながらお互いの理解を深めようとしていくわけです。

先日、今度の異動で私のチームから出ていくことになった部下のA君と1on1で会話しているときに、このような話をしてくれました。

・私が忙しくなるのは自分で納得したので頑張りたい。
・でもB君とC君は負荷が軽すぎないか?
・彼らに私の業務を引き継ぐが、正直、私の今の業務時間のうちの30%くらいの内容。少なすぎる。
・ちょっと不平等ではないか。

この話を聞いて、業務の価値、負荷を測る指標というのは人によって異なるのだな、と気づかされました。

確かに、A君は毎月の業績データの整理をしてくれており、今かなりの作業量をこなしてくれています。仕事が非常に速いし、指示をすぐタスクに落とし込んで進めてくれています

ただ、私の組織の課題というのは、「数字をまとめることより課題形成をすること」であると考えており、極力ルーティン作業量を減らすことを考えています。そのため、今A君がしてくれている作業を改廃したり、別の関係部署に一部作業を切り分けるなどをすることを前提にしていました。

そうするとB君とC君は何をするか、というと、まだ数字に表れていない製造現場の課題形成をしてもらうことを考えています。

これは非常にタフな作業です。各工場の生産台数や不良金額など様々な情報を集め、因数分解して、要因まで落とし込んで、現場に課題認識をしてもらえるように表現する。現場で解決できないことは技術や営業など、それを解決できる人を探して呼んでくる

B君とC君はこれらの業務の必要性、難しさを理解してくれており、製造現場に張り付くくらいのつもりで作戦を考えだしてくれています。

一方でA君。B君とC君は負荷が軽くなったと思っています。
私はB君とC君がどれだけ重要なミッションを抱え、困難に立ち向かうかを説明しようかと思いました。でもA君の話を聞いていると、「ルーティン作業が少ない」ことをしきりに言っています

そうか、と気づきました。
A君はルーティン作業を業務と思っているから、その大小で負荷を測っているんだ。

ルーティン作業というのは、明確にアウトプットが定義されており、やり方も決まっています。A君は、それをいかに正確にこなすか、で自分の存在意義を証明しようとしているタイプです。

ですから、作業は早いし、ミスはしませんが、業務改善提案はほぼありません。結果報告をしたら、そのあとその情報がどのように使われているかに興味を示すことはありません。

私は半年前からA君と仕事をしていますが、私の前任の課長はやり方まで指示をする人だったので、正直そうなってもやむを得ない環境ではありました。

とはいえ、です。

A君もチームメンバーですから、組織の課題、狙いと起こっていることを何とかして理解・納得してもらわねばいけません。
でも上に述べたように、A君は作業量で価値を測る人で、未知の課題に取り組むことを評価する軸は持っていません。そのA君にB君とC君が立ち向かう課題の大きさを語っても平行線でしょう。

そこでです。
A君には、「B君とC君のミッションを作業に落とし込んで定量化して説明をする」しかないと考えました。

具体的には、
・B君とC君は週に3日、工場に出張してもらいます
・工場では、生産ラインが20本あるので、各ラインの経費をまとめてエクセルデータにしてもらいます、毎月月初に2日くらいかけて作業してもらいます
・そしてそれを各ラインの班長さんに説明してもらうようにします、全ラインを回るのに3日かかるはずです
・各ラインから分析をもらったら課題を整理して、本社の部長に報告する資料を作ってもらい、20日に会議で報告してもらいます・・・
など。

B君とC君は自分たちで作戦を考えてくれるので、こんなことを言いませんし、この量が是とも思っていませんが、A君には、B君とC君が何日かけて、どのくらいの作業をするのか、を説明せねばいけないと考えました。

そしてA君からの引継ぎ作業を合わせると、毎月ほぼ予定で埋まる、という説明をしたところ、「彼らもやり方が決まってないことをするなんて、作業時間がかかりそうで大変ですね」ということで何とか腹に落としてもらえました。

作業が得意な人、課題形成が得意な人、様々な人がいます
私自身は作業の精度は正直高くないほうですが、課題形成をする役割には向いていると思っています。
そうすると、正確に作業してくれるメンバーは非常に重要です。実際、組織には必要な存在です。
DXが進む中で、その存在意義が変わってくる、というのは否定できないところですが、少なくともいまそれなりの価値を出してくれていることは間違いありません。

そのメンバーに納得して業務にあたってもらうために、様々な説得アプローチを試みなければいけません。

自分の価値基準だけでは平行線になります。
如何に価値基準を因数分解して、他の価値観と摺りあうポイントを見つけるか。管理職として必要なスキルだと気づかされる出来事でした。







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