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なんでもない記念日にひとりでカレーを煮込む夜

縁側のパキラ、丸みをおび祖母のハサミを箱からとりだす

薬品の茶焦げの瓶に花が咲く。ビルの日陰に春迷い込む。

日焼けした畳を返すと現れる隠しておいたテストの花丸


公園の遊具が撤去された日に残されていた歯車の花

平仮名の「ぬ」の字が書けたその日まで
犬が「いぬ」だと私は知らない

火傷にはアロエの葉だよと母が言う。チラシの裏に春を描いて

なくなった実家の跡地の駐車場。あれが風呂場で、あれが床の間。

綴じ紐の祖父の詩集は達筆で、金剛力士の眼光鋭し









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