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花さか童子

ちりぢりになったくも
はんぶんうめられた
とーますのひたい
おうだんするありのむれ
ゆびさきで
すなをはらって
えがかれる
さくらのはなびらもよう
そして
にどともどらない
じかんのなかで
わたしによくにていた
あのこはもう
もどらないだろう

あの日全知全能であった私が砂を撒くたびに桜の花が開いていった
陽光に目を細めて、見上げた雲がものすごいスピードで過ぎ去っていく
蟻達の歩みは相変わらず遅く、今やっと山脈の麓にたどり着いたようだ
一瞬が永遠のように引き伸ばされていく
まだ、その車体のほとんどを砂の中に残したトーマスを置き去りにして私は走り出した
次の朝には、公園の桜は満開になったが、私は二度と戻ってくることはなかった

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