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粘土屋師匠

俺は師匠に弟子入りした
師匠とは、粘土で看板をつくる
どちらかというとモニュメントかな
例えばパン屋だったらパンを粘土でつくり
パン屋の店の前に配置する。

もちろん色塗りまであわせの仕事だ
この時代は看板屋とかではなく
粘土でつくっていたから粘土屋と
言われていた。

昔からそういうアートな世界が好きだった
殆ど丁稚に近い状態で給与も雀の涙だが
将来を想えば俺は弟子入りしたんだ

師匠がつくった看板は
良くも悪くも物凄い評判を生むんだ

ある日師匠は街一番のケーキ屋から
モニュメントを作るように依頼された
師匠とともに俺も制作に取り掛かる

作っている間は師匠の流儀で
師匠と俺以外は見れないように
大弾幕を張る。

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師匠はさっそく粘土をこね始めて
形を作っている。最初のうちは
気づきにくかったけど
どうもケーキのモニュメントの形をしていない

『師匠?これは何のケーキですか?』
「馬鹿だな、お前、これは長靴だ!」
『なっ長靴!?』

何故長靴をつくるのか
手際よく師匠は粘土を盛っていく
まさに巧。1年そこそこの俺には
あんな奇麗な盛りをした長靴はつくれない。

だが・・・長靴?

『師匠、これ怒られないんですか?』
「大丈夫だ」

大丈夫なのだろうか
『依頼は何ですか?』
「ケーキだ」

ですよね?ですよね師匠!!
でも師匠がつくってるものは長靴ですよね
『大丈夫ですか?』
「うるさいな、次口だしたらクビな」
『・・・・・』

そう言われてしまえば何も言えない
師匠の腕はまさに神業だし
その腕は盗みたい。それは俺の将来のためだ

そうこうしているうちに
長靴はできあがり、店主に公開する日がきた
皆が見守る中横断幕が上がる

ケーキ屋の店主は
幕が開いた瞬間に物凄い形相をして
言ってきた。

「ふざけるなっ!!これ長靴じゃないか!
 金なんか一切払わないからなっ!!」

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『師匠あの人凄く怒ってますよ』
「あー帽子まで怒っているな」
『師匠それはイラストの仕様です
 そこ突っ込んじゃだめです!!』

「いや、金は払って貰おう」
「なっ!!ふざけてんのかー!」
ケーキ屋さんの主張は正しいよ
そんなものはケーキ屋さんの主張が正しい!!

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