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買えなかった蛤

音楽を聴きながらリメイクしたので
流しながらお読み頂けたら幸いです。

お金が必要な時期があった
彼女には子供がいて
親父の下で働いていて羽振りもよかった

一緒に暮らすようになって
親父にトラブルが起こり
ストレスの捌け口にされ
逃げ出すように親父の元を去った

再就職したけど甘かった
小学高学年、お金もかかる
とってつけたような仕事では
生活費を捻出するいっぱいいっぱい

海に連れて行けば
蛤がとても美味しいそうで

1つ500円もする
3つで1500円をなんとか捻出して
余りにも美味しいから
娘がもう一つ食べたいと

我がままを言う子ではないから
美味しかったのだろう

だけど500円が捻出できない
一人海に行き深々と潜ったよ
世界一情けない男に思えて
泣く以外に心を保てなかった

就職した仕事先に相談しに来た人がいて
その人と話しているうちに
一緒にやらないか?と

水回りのトラブルを
解決する仕事をしていて
WEB広告と事務をする人を探していた

誰でも何でもよかった
蛤が1つ買えるなら

でも蓋を開けてみたら
彼はアルコール依存症で
酔って事故を起こし免許を失効する

でも今更引き返せない
現場まで俺が運転をする
緊急の仕事だから夜中も多い
彼の家で寝泊まりすることにした

現場で広告の管理をしたり
かと言えば現場の助手もする
ただ3か月もすると軌道に乗った

約束とは違うけど
給与も少し上げてくれて
蛤を食べさせてやれる

だけど酔うとわけがわからない
たまに早く帰っても
クビだとアル中を発動される
その度に詫びに事務所に戻る
首にされたら蛤が買えない

盲目的に生きていたなぁ

羽振りが良くなると
事務所で女と寝ていて
仕事を事務所で割り振っていると
うるせーー!と起きてきて殴られた

なんだか心が壊れてしまった

限界だったのかもしれない
蛤を食べさせてあげられない
そのことを思えば泣けた

会社を立ち上げた理由は
崇高な理念じゃない
単に追い詰められたから(笑)

すでに親父は亡くなっていて
母親が少し援助してくれた

今にして思えば親不孝だけど
最初にしたことは生命保険への加入
失敗したら死のうと思っていた

できれば娘に分けてあげて欲しいと
メモを添えておいた

初めての依頼は埼玉の奥地で
夜中に大雨が降って心細かった
でも、帰り道に虹が出て

その虹を見た時に
涙が止まらなかった

娘は大学を無事卒業して
今は立派な社会人だ
蛤はもう自分で買えるだろう

ただ、絵が売れないと
俺が蛤が買えないかな(営業(笑))

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