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鹿児島市内のほぼ全てのダンススタジオを見学・体験して気づいた、「大人が踊らない・踊れない理由」

初めまして。山瀬加奈です。これから、Iターンで移住した鹿児島で、大人が自分らしく楽しめるダンススタジオを作ります。それに至った背景や、立ち上げに至るまでの試行錯誤をまとめていこうと思います。前回は、自分のダンス「な」自己紹介をしました。

本業のコロナ失業を経て鹿児島に移住。鹿児島市内にあるダンス教室のほとんどに見学・体験をしに行き、オーナーの方たちともお話しをしたりしました。そして、そこで、気づきました。

自分が楽しくスキルアップできる教室を探して通うことも良いのだけど、「私」が東京で作っていたダンスという居場所(=「I-LAB」)を鹿児島「で」作らなければいけないということに。


鹿児島の人は踊ることが好きなはず。

移住してすぐ、このCMが鹿児島市から発表されました。

『鹿児島は、みんな元気に舞(待)ってます。』というテーマで作った、「まってるし鹿児島市」という動画です。

そして、そのあと、維新ふるさと館に観光に行って、まってるし鹿児島市の作品の前に「維新dancin'鹿児島市」を踊っていること、そしてこれが市民にすごい知られていることを知りました。

両方の動画にちょこちょこ出てくる西郷隆盛みたいな少年たちは、鹿児島実業高校という、新体操で全国的に有名な高校の学生さんたちです。

両方見ていただくとわかるのですが、鹿児島市民、老若男女が楽しそうに踊っているじゃないですか。うまい下手関係なく。

ある日、天文館でごはんに行ったら、そのお店の店長さんが「まってるし鹿児島市」に出演していることがわかり、一緒に動画を見て探したりしました。動画に出ている人たちは、本当に、一般の方々なのです。←

私は、ダンスフルな県に移住したんだ…!

そう、ワクワクしました。


市内のダンス教室に体験に行くが…

ワクワクな気持ちを抱きながら、ダンス教室を調べると、私のリサーチ力で鹿児島市内には12か所ダンス教室があることがわかりました。

1か所はコロナウイルスで新規会員募集を停止しているのと、2か所はまだ時間が合わず行けていないのですが、9か所は11~1月の3か月かけて体験に行きました。

9か所の教室の中で、大人が同じクラスの中にいたのは、4か所。うち2か所は、クラスに私のほかに1人しかいませんでした。

そして、他の生徒さんは、小学生、中学生、高校生。大学生がいなくて、大人が数名。ガラスの向こうの待合室に、子どもたちの踊る様子を見守る、私と同い年くらいのお母さんたちが見えました。

あれ?

なんで?

大変ありがたいことに、教室のオーナーさんとレッスン後にお話をさせていただいたりして、わかってきたことがあります。ここからは、私の仮説でもありますが、鹿児島ではダンス教室の経営のために必要な2つの仕組みと、多くのダンス教室で起きている1つの傾向が、大人がダンス教室に「通いづらくなる」仕組みになっていたのです。


鹿児島で大人が踊らない・踊れない理由(仮説)

【1】「鹿児島を盛り上げるため」に開催されるイベント「に向けた練習前提」

最初は、発表の場がとても多いということです。アミュプラザやよかど鹿児島、ウォーターフロントパークや鹿児島環境みらい館などで開催されるイベントにて、ダンススクールが依頼を受けてダンスパフォーマンスをすることがよくあるようです。そうした本番に向けた練習をレッスンの時間内にしていくことがほとんど

これによって何が起きるかというと、
(1)イベントへの出演のために週末が埋まります&出費が増えます。
リハーサル→準備(着替え、化粧)→本番→集合写真→解散、という流れがほとんどなので、5分のパフォーマンスのために半日の時間を取らないといけなくなります。また、パフォーマンスのための衣装代なども発生します。

(2)レッスンに毎週参加しないといけなくなります(or行かないといけない空気になります)
イベントで発表するための立ち位置を決めたりするために、練習=レッスンへの参加必須率が上がります。もし出演しないという選択肢を選んでも、発表に向けてのレッスンになってしまうので、先生の近くではなく、スタジオ後方や端っこで踊る流れになってしまいかねません。

(3)成果を見せる・アウトプットをする、ということが目的になってしまいかねないです。
年に1回の発表会だけでなく、プラスでイベントが年に数回あることで「人に見せる」ということが常に意識されるようになります。

では、なぜこうしたイベントにダンススクールは参加をするのか。仮説ではありますが、地元鹿児島を盛り上げたいということはもちろん、経営面では(1)生徒さんを増やすためのスクールのPR、(2)生徒のスキルアップ・モチベーションアップからの定着率強化、(3)観客である保護者の満足度UPからの定着率強化、の3つがあるようにも思います。人に見せる発表の場というゴールがあることで、生徒たちも頑張ろう、という気になりますし、もちろんスキルも上がります。年に1回の発表会の場だけでなく、細かくマイルストーンがあることで、安定的にモチベーションを維持しながら、前を進み続けることができるのだと思います。

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(2020年11月、友達の指宿のダンススクールに合流しておはら祭で踊ってきました)


もちろん、レッスンの時間とは別の時間を取ってイベントへの参加に向けた練習をするというスタイルをとるダンススクールもあります。しかし、ほとんどの鹿児島のダンススタジオはイベントに向けた練習をレッスン内で実施。つまり「発表」以外の目的で踊りたい人には通いづらい空気が醸成されやすくなっています。ダンスは人に見せるもの、という定義が浸透してしまうと、「私はそんな見せるほどの人ではない…」と、ダンスを「できる・できない」の二極でと考えてしまう人が増えてしまいます。



【2】安定的な収入確保のための月謝制・クラス固定制

次に、レッスンの受講料の仕組みです。鹿児島に来て驚いたのは、1つ決めたクラスで月謝をお支払いする、という受講料の仕組みがほとんどであること。東京では月4回8000円とかで色々な先生のレッスンを受けることができたり、有効期限3か月の10回分の回数券を購入して、好きな時・行ける時に行ける、など、柔軟性があるスクールが多かった印象です。(東京23区内の10か所以上のダンススタジオに体験に行った経験から)

これによって、1つのダンス教室で色々な先生に出会うことができなくなるのと、毎週通わないといけないという空気が醸成されます。大人の目線から行くと、急に出張が入ったり残業が入ったり、毎週必ず通うことができない人は入会しづらくなります

スタジオ目線から行くと、雇用している先生へのお給料や、スタジオの家賃や光熱費などの支払いを考えると、安定的に毎月お金が入ることは必要で、そうすると月謝制が最善の手段になります。

実は、私が東京で通っていたダンススクールは、おそらく生徒の比率が子どもと大人で半々でした。しかし、大人の大多数がおそらく回数券制を選んでいたからでしょうか、他の要素もあるかもしれませんが、安定的な収入が得ることができなかったのか、なくなってしまいました

また、東京で教わっていたダンスの先生も、ダンススクールだと安定的な収入が得られない、ということで、スポーツクラブでインストラクターを始める方もいました。

「安定的」にダンススクールが運営されるためにも、先生方の雇用を安定させるためにも、当たり前ですが、「毎週通ってください」というのが、ダンススクール側のお願いになります。でも、そうした「コミット」の見せ方・伝え方を間違えると、「毎週通うことができない人、毎週頑張れない人はダンススクールに入会できない」と、そういうわけではないのに思わせてしまうのかもしれません。


【3】日中ダンススタジオの別の使い道がない現状

最後に、上記2つにせざるを得ない鹿児島のダンススクールの傾向を見つけました。というよりも、スクールのオーナーさんから教えていただきました。それは、日中はスタジオが真っ暗ということです。つまり、日中はあまり使われていないということです。

子どもが多いダンススクールなので、学校の放課後の時間からレッスンがスタートします。つまり、教室が開くのは16,17時頃からです。そして、21,22時ごろに閉まります。日中はレンタルスタジオにしたり、それこそ大人向けにヨガクラスを開講しているところもありますが、あまり需要がなく、スクール側の収入はわずか。

そうしたなかで、スタジオの賃貸や光熱費を毎月支払わないといけないとなると、安定的な収入が必要になり、安定的な収入を得るためには、前述の①生徒さんを増やすため・定着させるためののイベント参加&スクールのPR、②月謝制の2つをせざるを得ないところがあるように思います。

スタジオを持たず、地元の体育館や公民館、イオンの中の貸しスペースなどを使って複数拠点でレッスンを展開しているダンススクールもあります。ただ、そうした場所のリスクは、今回のパンデミックのように、感染予防のために市町村が施設の利用を制限したり、休業になってしまって使えなくなってしまうことがあること。実際に、私が2年前から所属している東京のダンススクールは中野区の施設を使ってレッスンを展開していましたが、緊急事態宣言により体育館などの広い施設の利用ができなくなり、小さなスタジオをレンタルして補っています。それにより、レンタル代が区の施設よりも高いので出費が増え、大きな体育館が使えなくなり子どもたちが広々と踊れないのはもちろん、小さなスタジオで複数回教えないといけなくなり先生の負担も増えているように見えます。

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(前回のnoteでも紹介したこちらの写真の体育館、緊急事態宣言になってから使えておらず、ここの1/6の広さのスタジオで教えています…)


このように、私の仮説ではありますが、①イベントへの出演頻度が高い、②月謝制・クラス固定制、前述2つにならざるを得ない③日中は他の使い道がない、の3つの要素により、それ以外のダンスとのかかわり方をしたい人が排除されてしまうような空気感が作られているのではないか、ということに気づきました。

鹿児島市内にある2か所のスポーツクラブのダンスのクラスにも、体験と見学に行きました。30代から上の方が、それは、それは、たくさんいました。逆に、スポーツクラブでそこの世代は成立するから、ダンススクールは子ども向け、というスタンスで行ってもいいのかもしれません。でも、正直、スポーツクラブのダンスのレッスンは、人数が多すぎて馴染めず…苦笑、ちょうどよいところはないんだろうか、と考えました。

自由に大人が自分らしく楽しめるダンススタジオはないのだろうか。


そんなときの、KISYABASTARとの出会い

前回のnoteで書いたような「居場所」であった東京の「I-LAB」は、前述の3点の視点から行くと、以下のような仕組みでした。

・発表会(パーティー※詳しくは前回のnoteに)は2年に1回でした
→むしろ毎回のレッスンがピザパ、誕生日会、ハロウィン、クリスマスといったダンスと関係ないイベントをしていました(笑)
・月末にその月に参加した回数を集計して月謝を支払ってもらっていました
→参加すればするほど安くなるのは事実だけれど、前払い制にしていませんでした(生徒さんたちが自然とそうしていたのでそうなったのですが笑)
・日中は芸能事務所で、夜はダンススタジオという仕組みでした
→夜の時間が空いていてもったいないからということで教室をやらないか、とお声がけをいただいたので、日中はその場所が使われていました

振り返って思うのは、このような仕組みだったからこそ、大人が気軽に参加してくれて、続けてくれて、増えていってくれて、結果経営に苦労したことがなかったのかもしれないということ。結果、とてもサステイナブルにダンスという居場所を作っていたのだな、ということ。


そしてそんなタイミングで出会ったのが、騎射場の「KISYABASTAR」でした。

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騎射場、という町は、鹿児島大学が近くにあることもあり、学生が多く住む街でありつつ、地元の方も沢山住んでいて、飲食店もたくさんあります。市電に乗っていると、朝沢山ここから人が乗ってきて、天文館で沢山の人がおりていくので、市内のオフィス街で働く人たちが住んでいるベッドタウンなのかな?という風にも思います。

そして、ここでは、騎射場ののきさき市というイベントが騎射場公園で開催される等、とても素敵な街おこしイベントも開催されています。沢山の素敵な人たちが集まっているエリアです。

ここでの仕掛け人のうちの1人が、2021年4月からオープンしようとしているのが、オンラインパーク「KISYABASTAR」。オンライン配信やオンラインコンテンツを作ることができる場所を作ろうとしています。

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設営や工事の様子の写真をいただきました。カメラなどの機材が多い!

このスタジオは、オンラインスタジオにするために工事を始める前までは、今までも地元のチャリティーバザーとして場所を貸したり、騎射場エリアのプレミアム付商品券の配布・お店の換金場所にしたり、とオフライン・リアルで、人が会える場を作っていました。今後は半分はオンラインスタジオなのですが、半分はレンタルスペースとして運営していくそうで、仕掛け人さんとお話しさせていただいた結果、そのオフライン・リアルで会える場のスペースとして、ダンススタジオをさせていただけることになりました

これにより、先ほどの3つの視点の中から、3つ目である「日中ダンススタジオの別の使い道がない」という大きな課題が払しょくされます。あとは、今まで東京でやっていたように、発表会ありきではなく、月謝制ではない回数券制or後払い制にする、というスタイルと同じ形ができれば、鹿児島でもサステイナブルにできる!


よし!

私が!

自由に大人が自分らしく楽しめる「居場所」を、鹿児島で、作るぞ!


ダンスは、上手い人だけがするものではないし、若い人だけがするものではない。誰でもできる、ということを、鹿児島の人たちに改めて気づいてほしい。そこから、芸術振興に携わっていきたい、と思いました。


と、いざ、立ち上がったのですが。まあ、壁はありますよね…察するかとはおもいますが。笑

また今回のnoteも長くなってしまったので、次のnoteで、自分がぶつかった課題と、それをどう乗り越えたか、整理してまとめたいと思います。


(2/26追記 クラウドファンディングを始めました!)
なぜクラウドファンディングになったかの経緯は上の次のnoteにて…ぜひご支援・拡散よろしくお願いします!!

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