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子連れでバチカン美術館!4歳児と回る二点集中コース。

9泊10日でイタリア4都市を巡る旅。

ローマ滞在2日目はバチカン市国へ。主たる目的はバチカン美術館。

イタリア旅行を決めた瞬間から、バチカン美術館は絶対に行きたいと思っていた。

美術に明るいわけでもないのに美術館が好きなのは、両親の影響だと思う。父も母も絵画が好きで、家族旅行は美術館を中心に旅程が組まれていたと言っても過言ではない(必ず私が楽しめる時間も作ってくれていた)。特に父は歴史にも詳しく、絵が描かれた時代背景や画家の人生についてよく話してくれた。今ならすっごく楽しいと思うのだけれど、残念ながら幼い私にはちんぷんかんぷんで、早く帰りたかったのを覚えている。

それなのに、いつから美術館が好きになったんだろう。思い出の中にある美術館はいつも退屈な場所なのに。父と母が熱意を注いでいるものを自分も好きになりたい、みたいな思いが心の根底にあるのだろうか。


バチカン美術館でのお目当ては、もちろん『最後の審判』や『アテネの学堂』といった名画たち。そうです、ミーハーです!

他にも素晴らしい作品がたくさんあることは知っているけど、いかんせん子連れなのでゆっくり見て回る余裕がない。だからたくさん見るのではなく、絶対見たいものを見逃さない方針で。

システィーナ礼拝堂とラファエロの間に狙いを定め、館内に入るや否や推奨されるルートを無視し、長い廊下を突っ切って一目散にシスティーナ礼拝堂を目指した。

と言っても、途中に現れる地図の間をやっぱり素通りはできない。

豪華絢爛とはこのこと。圧巻の美しさ!つい立ち止まって見ちゃう。

何度も「ここか?!」と思わせる重厚な扉やゲートがあるのだけれど、そのどれも違う。どんだけ歩くのよ?!と思った頃に、奥に見える小さな入口の上に「システィーナ礼拝堂」のサインが見えた。と思ったら、左に折れていく手前の廊下にも、同じく「システィーナ礼拝堂」と書かれている。

え???

それを見た夫が「こっちじゃないの?」と左を指した。確かに、奥の入口は小さく薄暗いのに対して、手前の廊下は赤いベルベットの絨毯が敷かれ、華々しい。システィーナ礼拝堂があるのだとすれば、この華々しい通路の先こそふさわしいのでは?と思える。

ただ、奥のサインには「システィーナ礼拝堂」とだけ書かれているのに対し、手前のサインにはそれ以外の絵画の名前も書いてある。ということは、奥の方がシスティーナ礼拝堂への近道なのでは?なんとなく。

といっても何の確証もないので、とりあえず左に曲がってみた。だけどもシスティーナ礼拝堂に着く気配が全くない。やっぱり、さっきのサインは、数々の作品を見たのちにシスティーナ礼拝堂へ辿り着くよ、という意味だったんだ!と確信し、急いでUターンした。

「システィーナ礼拝堂」と書かれていなければ絶対に入らなかったであろう小さな入口を通ると、下へ続く石造りの薄暗い階段が現れる。何の装飾もない狭い階段をずんずんと降りていく。この先に何かあるとすればそれは牢屋なのでは?というような重苦しい雰囲気。階段を下りきってうねうねとした廊下を曲がると、突然視界が開けた。明るい大きな廊下を大勢の人がこっちに向かって歩いてくる。なんだ?と思ったら、左手前にこじんまりとした入口があった。みんなそこへ吸い込まれていく。入ろうとする人と出ようとする人で動線が入り乱れて、ちょっとした混乱状態だった。

なんとか体を滑り込ませると、『最後の審判』の右下に出た。なんだよこの通路は、と思っていたけど、本当に裏道的なショートカットだったみたい。正式ルートっぽい入口は、『最後の審判』の正面にちゃんとあった。

システィーナ礼拝堂の中には大勢の人がいたものの、朝一だったからかまだ余裕があった。
神聖な場所なので撮影は禁止、騒ぐのも禁止。鑑賞スペースを示すテープが床に貼られており、常時4,5人のガードマンがはみ出している人がいないか目を光らせていた。

ようやく辿り着いたけれど、既に足が棒。娘もとっくに飽きている。万全の状態で見たかったのに…と己の体力の無さを呪っていたら、左右の壁沿いにベンチが設置されていた!ここにベンチがあるなんて予想外すぎる!ありがたてーーー!!!

幸運にも空いている場所を見つけ、娘と共に腰を下ろす。その間に夫が鑑賞し、しばらくして交代。完璧じゃないか。せっかく借りたオーディオガイドも娘がいると全く集中して聞けないけど、これならゆっくり鑑賞できる。

撮影禁止なので何も載せられないのが残念だけれど、ぜひ礼拝堂の空気を味わってほしい。今でも実際にコンクラーベが行われる、神聖な場所。『最後の晩餐』の存在感と迫力。四方八方に描かれた名作たち。窓周辺や天井なんて、絵なのか建物の構造なのかわからなくなる。

今回の旅では幾度となく、聖書を学んでいて良かったー!と思った。

私はアメリカでキリスト教徒のおばあちゃんから聖書について学んでいる。おばあちゃんはプロテスタントだし、新約聖書のさわりを教わった程度なので私に大した知識はないのだけれど、それでも作品から受け取れる情報量が全く違い、鑑賞が何倍も面白くなった。

聖書からの学びをまとめたマガジンはこちら↓ Podcast「日々、駐妻。」でも配信しているので良かったら聞いてください。


システィーナ礼拝堂は絵の数も多いし、描かれた主題の種類も多い。私が持っている知識だけでは到底カバーできないことは明らかだったので、事前にYouTubeや本で予習してから臨んだ。
その甲斐があって、色々な角度から楽しむことができたと思う。もちろん絵そのものが持つパワーがあるのだけれど、時代背景や主題の内容などを知っているとより面白い。数々の解説動画と本に感謝…!

ただ、真っ先にシスティーナ礼拝堂へ向かう戦略が正解だったのかはよくわからない。システィーナ礼拝堂は順路の最後の方に位置しているので、カフェで一息つこうとした私たちは結構な距離を戻る羽目になった。館内が広いし複雑だしマップはわかりづらいしでしばしウロウロ…。

なんとかカフェを見つけて休憩し、中庭で少し遊ぶ。ずっと付き合ってくれている娘よ、本当にありがとう。親に付き合わされていた自分の姿と重なる。少しでもあなたの糧となりますように。

さて、一つ目の目的は達成されたので、次はラファエロの間へ向かう。

途中でラオコーンも見ることができた。

生々しさがすごい。紀元前に作られたなんて…


ラファエロの間がまた遠い。随所で夫に抱っこしてもらっていた娘だが、ここでついにHPが切れ、夫の腕で眠りに落ちた。4歳児を抱えてひたすら歩くことになった夫。ようやく辿り着いたぞラファエロの間…!という瞬間に、夫の腕と肩も限界を迎えた。どこか座れる場所でもあれば良かったのだが、見当たらない。ここにはベンチないんかーい!
通路は狭いし部屋の中は人でごった返しているから、ベンチなんて置くスペースはないけどさ。

やむを得ず体力も筋力も夫の100万分の1しかない私が代わりに抱っこした。お、重い…
重いけど、勝手にどっかに行ったり騒いだりしないので落ち着いて見ることはできた。すごく重いけど。

ええ、もっと上手く撮りたかったです。

遂に来た!『アテナイの学堂』!
あれがプラトンで、アリストテレスで、ディオゲネスで、ラファエロ自身で…。何度も至る所で目にした絵の本物が、目の前にある。そして実際に描かれたであろう場所に自分が立っている。これは筆舌に尽くし難い体験だと思う。

広間全ての壁と天井を埋め尽くす絵、絵、絵。ずっと見ていると首が痛くなる。昼を過ぎたからか明らかに館内に人が増えていて、ラファエロの間はギチギチだった。

体力も限界だし主目的は達成されたし、これにて終了。ということで出口へ向かう。その途中でまたシスティーナ礼拝堂に立ち寄った。ネットで調べたところによると、システィーナ礼拝堂内にサン・ピエトロ大聖堂へ直接移動できるツアー客向けの通路があり、タイミングによっては一般客も通れるらしい。サン・ピエトロ大聖堂へ入るにはまた行列に並ぶ必要があるから、もし通れるならすごくラッキー!と思ったけど、通路は閉まっていたし横には守衛さんがいた。当たり前か。

せっかくなので今一度システィーナ礼拝堂を堪能した。朝一に来た時とは段違いの人の多さ。真っ先に訪れる戦略は必ずしも正解ではないと思うけど、朝の方が落ち着いて見られたのは間違いない。開館前に訪れられるツアーもあったはず。もちろん高いけど、子連れじゃなかったら検討したかったなー。

ちなみに、朝訪れた時に通った裏道的なショートカットの入口は、この時にはもう通れなくなっていた(チェーンが設置され、守衛さんが立っていた)!やっぱり朝一番だと早く辿り着けるのかも。


こんなにも広くて人で溢れる美術館を子連れで回ろうというのが、そもそも無謀ではあるけれど、無理ではなかった。
「4歳児は歩くべきだし、イタリアの街はほぼ石畳でベビーカーに向いていない」という夫の強い主張により、私たちはベビーカーを持参しなかった。でもいっそ美術館に一日費やすつもりで子をベビーカーに乗せて回るのはアリだと思う。ただしその場合は効率の良さは諦める他ない。
バチカン美術館の公式HPには、ベビーカーは歓迎だし回りやすいルートを教えるよ!と書いてあるので、見て回れないことはなさそう。ただ最短ルートを行こうと思うと、そこにエレベーターはない。何度もベビーカーを抱えて階段を上り下りする親達を目撃した。ほんとお疲れ様…。

娘にはなんのこっちゃなのは百も承知で、それでも作品に触れてほしい!と思っていたけれど、もうここは親の楽しみのためと割り切って、ベビーカーに乗ってiPadを見てもらっても良かったのかもしれない。実際、娘は何も覚えていないし。

美術館に行くたびに時が早く過ぎることばかりを願っていたかつての私が、今や美術館を旅行の主目的にしているように、いつかこの体験が娘の人生のエッセンスとなりますように。もちろん、ならなくてもいい。


余談だけれども、バチカン美術館のショップでは日本語のガイドブック?が叩き売られていた。

まさかの1€。左上に写り込んでいる別の本も4€。

叩き売られているということは売れないということだろう。この値札だけ手書きなのも最後の大安売り感がすごい。コロナや円安も相まって日本人旅行客が減ったのかな。世界から日本語の本が減っていくのは悲しい。というか今となっては日本語の本を売っている方が珍しいか。

この写真の『ヴァチカン』、かなり大きくて分厚く、内容も充実していたので迷ったけど買って帰ることにした。すんごく重たいので荷物になるけど、何かのご縁だと思って。ついでに『システィナ礼拝堂』という本も買った。こちらもまさかの4€、安過ぎる。


結局5時間くらい滞在したバチカン美術館。子連れでも絶対に見たかった作品は堪能できて大満足だった。いつかまた必ず行きたい!

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