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【模型】昼休みモデリングはとてもはかどる ~ドラゴン 1/72 ティーガー駆逐戦車~

仕事場での昼休みの過ごし方は会社や人によってさまざまだろう。
同僚と雑談をしていたり、昼寝をしていたり、機械を止められない現場で交代要員もおらずカロリーメイトをかじりながら現場を走り回ったり、誰も口を開こうとしない喫煙室で皆に交じってこの世の終わりのような顔をして無言でタバコをふかしていたり、これ全部体験してきたことなのだけれども、なかでも一番気の利いた昼休みの過ごし方をしていたのが、2004年から2010年に中国の東莞で商社駐在員をやっていた時のことだ。
初めは発注先の工場に出向という形だったものが、のちに複数のメーカーを見なければならなくなったことから外に事務所を設け、普段現地スタッフの娘と二人で仕事をしていたのだけれども、中国人は昼休みになるとほぼ間違いなく正確かつ勤勉に昼寝をする。
なので私は昼休みに一人になれるというぜいたくな時間を過ごすことができ、この時間にプラモデルを作ろうと考えるようになるにはさほど時間はかからなかった。

さてこういう時間に作るプラモデルは自宅でやる時とは気分がまるで異なり、どんなに単調で面倒くさい、たとえば戦車の転輪のパーティングラインを延々処理するといったようなことも、ダレてしまうことなく楽しめるのが不思議だ。
多分午前中の仕事で高ぶりすぎた頭をクールダウンして癒す効果が戦車の転輪には多分あるのだろう。
こういう作業は家でやるときは眠かったり面倒で雑になったりであまり楽しいものではないが、こういう作業こそ事務所モデリング向きだ。
他パーツの整形などをやっていると、心が洗われる心地がする。
今回は、そんな息抜きにプラモはかなりいいというお話だ。

※以下は2009年1月6日のmixi記事より転載、加筆を行った

11時半に前もって出前を注文しておくと、12時ちょうどにめしが届く
うむダンドリどおりだ。
さっそくテーブルの上を片付けて事務所のスタッフとめしを食う。
ああうまかった、ゲフッとか言いながら片づけをして茶を入れる。
それでもまだ12時半だ。
うちは中国式に午後は1時半からの仕事なので、まだまるまる1時間あるわけだ。
外は暖かく静かで穏やかな日和、スタッフの娘は自分の部屋に帰って昼寝をし、ここから私の至福の時間が始まる。

昼休みに事務所でプラモを作っている

先月辺りから事務所にプラモを持ち込んでは休憩時間にこさえている。
といってもまさか塗装までやることはできないので、基本的に塗装前の組み立てまでをやるわけだが、これが実によい。
例えば戦車などを作っていたら転輪のパーティングラインの成型は気が遠くなるような作業でもっとも気が進まないのだが、こういった業務の合間の休憩時間を利用すると、これが実に心休まる癒しの作業であることに気がついた。
なんせ業務中はハデに飛び回ったり電話口もしくは直接大音声で怒鳴りあったりしているので、こうして昼に無我の境地でパーツの整形をやっているとたいへん心が休まるのである。

事務所に持ち込んだ工具

道具は自宅から最低限の量を持ち込んだ。
道具やパーツを入れるトレーは中国南方航空の国際便からガメてきた機内食のお皿なのだが、これは積み重ねもできて実に重宝する。
道具はデザインナイフにニッパーにヤスリにエッチングハサミ、接着剤はタミヤの流し込みセメントに瞬間接着剤という必要最小限のものだが、こんなに少しの道具でもプラモはちゃんと完成するということに改めて気づかされる。

ティーガー駆逐戦車は形状が単純なのですぐ形になる

最近エライ勢いでシゴトをしているが、同時にエライ勢いで模型を作っている。
仕事をしていない時間は寝ているか出張で移動中か模型を作っているかのどちらかで、道理で最近家が荒れ放題になるわけだ。
ともかく忙しいのは結構なことだが、だからといって自分の好きなことができないというのはまた別の話であって、いちにち12時間シゴトをしようがのこり12時間は空いているわけで、つまりはいちにちは24時間あるのであって、どう時間をダンドリするかだけの違いでしかない。

事務所で組み立てまで完成した状態

そんなわけで事務所モデリング完了。
エッチングパーツはたったこれだけだが、なかなかいい効果を出してくれる。
特に排気管カバーの薄さは実にリアルだ。
この後は家に持って帰って塗装する。

最近覚えたワザだが、従来サフを吹いてから黒なりマホガニー下地を吹くところ、サフに初めから塗料を混ぜ込んで下地と黒ベースをいっぺんにやってしまうとラクであることに気がついた。
また、1/72では塗膜は薄いほうがよいのでこの意味でもメリットがある。
うむ、ダワをおこして(福井弁:横着こいて)いい結果が出るのはいいことだ。

ベースはガイアノーツのドゥンケル・ゲルプ(暗黄色)を使用したが、なかなか派手な発色で隠ぺい力もよく、いい塗料だと感心する。
なおこの車両は履帯の横にフェンダーが加わることから、先に履帯まわりの塗装を済ませてからフェンダーを接着して改めて車両本体を塗装することになる。
転輪の塗りわけは今まではエナメルのジャーマングレーを使っていたのだが、ウォッシングのためにいちいちラッカーでコートを吹くのがめんどくさいので、転輪ゴムはラッカーのタイヤブラックでいきなり塗るとラクであることに気がついた。
その際シンナーでかなりシャバシャバに薄めることで、転輪の塗り分け部分ぴったりにタイヤブラックが回ってくれるので、輪郭さえ出れば後は普通に薄めたタイヤブラックの筆塗りでも簡単に塗れる。
なんだか最近だんだんエナメルを使用する機会が減ってきたような気がする。

履帯周りを塗装しウォッシングまで済ませてからフェンダーを取り付け、改めて車体を塗装する。
ドラゴンの塗装図では左舷がわの迷彩パターンしか載っていなかったので、あとは完全に推測、適当にそれらしく迷彩を施す。
最近この手のゴマカシが上手になったような気がする。

定番のフラットブラックとフラットブラウンで陰影をつける。
さすがにツィメリットコーティングが施されているだけにこれはなかなか効果がある。
やる前とやった後では見え方がぜんぜん違う。

というわけで、塗装そのものは2晩でおわった。
この後ハイライトに若干のドライブラシをかけ、足回りにタミヤのウェザリングマスターで汚しを入れるのだが、ボロ平筆にアクリルラッカーをしみこませてウェザリングマスターをペースト状に練ったものを塗りたくり、乾いた後に古ハブラシで余分を払い落としてやるとラクにいい効果が出せることに気がついた。
特にへこんだ部分にドロがたまってこびりついた状態が簡単にできるのはありがたい。

事務所モデリング第一号完成

そのようにして事務所で組み立てては家に持ち帰って塗装というのが最近の私のプラモ事情であるが、そうして一番最初にできたのがこのドラゴンの1/72 ティーガー駆逐戦車だ。
はじめからツィメリット・コーティングがされているということで一度組んでみたかったのだが、なかなかよい質感で気に入った。
ミニスケールのドラゴンは超絶に細かい作業を要求してくる無茶なキットが多いが、このキットは部品点数も少なく、わりと簡単にできたキットだった。
ドラゴンのミニスケールにしては破格に手がかからなかった。

そんなわけで今は2両目のティーガーを組んでいる
普段なら転輪の多さで嫌気がさすところだが、昼休みの憩いの時間を活用することでまったく苦にならない
ふと時計を見るが、まだ20分もある。
うむ、シアワセだ。

2023年3月17日加筆

昼休みの過ごし方はその会社のありようと結構密接な関係にあるようで、中には「移動は休憩だ」ということで会社から倉庫までの15分かかるような移動はすべて昼休み中に行わなければならんというブラック企業にもいたことがあるが、もし過労気味の社員が移動中に事故でも起こしたら「昼休み中のことだから知らん」なんてことを言いかねない社長だったのを覚えている。
ともかくも人間は疲労するもので、この度合いによって普段は起きないミスも起きるのだから、適切な休憩を取るということは大変重要なことだ。

とはいえ肉体的に消耗する現場仕事ならともかく、通常の会社勤めだと疲労とはたいていは精神的なものであることが多い。
精神状態が正常なのか病んでいるのかでも仕事の質は大きく異なるものだ。
上司にちょっとモノを聞く場合でも、「何や、わからん事でもあるのか?」と教えてくれる場合もあれば「テメーコノヤロウルセーな!何じゃボケ!?」と返ってくることもあるので、ブラック企業で働いているならば上司の精神状態と壊れ具合を十分読んだうえでアプローチする必要があるだろう。
こんなどうでもいいことにまで神経を使わなければならないので、なるほど日本人の仕事の生産性が低いわけだ。

普段からアタマが疲れすぎている日本人は心の安らぎを適宜摂取すべきだと思うのだが、それにうってつけなのが昼休みに模型を作ることだ。
それもごくごく単純作業の連続がいい。
心の癒しになることまちがいない。
私の場合昼休みは事務所に私一人しかいなかったのでそれこそやり放題で、最後の頃になるとエアブラシでの塗装までやっていた気がするが、大部屋で他の人もいるような環境では、溶剤の臭いはよろしくないので接着剤は柑橘系の香りがするリモネン系が望ましい。
何かの間違いで勘違いした女性社員がマアステキと思ってくれるかもしれない。
ともかくも事務所で昼休みにプラモをやるようになってから私の模型を作るスピードは恐ろしく速くなった。
これ以降、組み立てまでは事務所でやって、塗装以降は家でやるというひとり分業状態となり、効率もよかったのを覚えている。

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