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TSMCの成長にみる成功の秘訣とは

いま世界一の先端半導体製造メーカーである台湾TSMCが、どのように現在の覇権を得るに至ったのか?良くまとめられた記事があったので、ここに記録しておく。

こういったところにも、日本復活のヒントは隠されているように思う。

主な流れは以下のとおりである。

  • TSMC創設者モリス・チャンはもともと、テキサス・インスタルメンツという半導体製造メーカーにいた。

  • 半導体の設計と製造は、もともと一社で一気通貫に行っていたが、モリス・チャンは1970年代から設計と製造の分離を提唱していた。

  • そのころは、半導体の主な用途は高性能な計算機・コンピュータのみであったが、そういった時代背景にも関わらず、「計算能力の低価格化は、現時点で半導体が満たしていない無数の用途を切り開くだろう」と述べていた。

そのうえで、モリス・チャンの慧眼だと思うのは下記内容である。

そうすれば、チップの新たな需要の源が生まれ、近い将来、チップは電話から自動車、皿洗い機まで、あらゆる商品に使用されるようになる。こうした商品のメーカーは、半導体をつくる専門知識を持たないので、半導体の製造を専門業者に外部委託したがるはずだ、と彼は推測した。

 さらに、技術の進歩やトランジスタの微細化にともない、装置の製造や研究開発のコストは上昇していくだろう。となれば、価格競争に生き残れるのは、チップを量産できる企業だけになる。

上記記事より

つまり、半導体の設計と製造を分離することで、半導体製造を低価格化でき、それによりコンピュータのみならず、半導体の使用など全く想像もつかなかった電話や自動車、皿洗い機まで、あらゆる商品に使用されるようになるだろう、という信念を持っていたということである。

1970年代~1980年代にかけて、このモリス・チャンの先進的なアイデアは受け入れられなかったが、やがて台湾政府の全面的バックアップを受けて、またオランダのフィリップス社等も巻き込んで、ついに半導体の製造のみを引き受ける「TSMC」を立ち上げることとなる。

ここに、従来のビジネスモデルを打破し、新しいバリューチェーンを構築していく先見性と信念と、推進力が見て取れる。

TSMCの躍進については、モリス・チャンがアメリカで築いた人脈等が役立ち、「半導体の製造のみ」を受けあうことで、これまで半導体の使用など思いもよらなかった業界に「ちょっと半導体でも設計してみようかな」という思いを起こさせることに成功したということが、理由として挙げられる。

現在、半導体はコンピュータのみならず、ありとあらゆる生活必需品に搭載されるようになっているのは周知のとおりだ。

たかが分業化、されど分業化・・・。半導体の設計と製造を、専門企業が自前で行うというもともとのビジネスモデルを、「製造のみに特化する」ことで破壊し、新たなビジネスモデルを構築し、「製造プロセスを総取りした」というTSMCの成功モデルは、ぜひとも日本人が認識しておくべきことだと思う。

TSMCが上り坂になるころ、日本の半導体業界は覇権の座から転がり落ちていったわけであるが、これは日米半導体協定によって潰されたという側面に加えて、こういったビジネスモデルの転換についていけなかったということが考えられる。

そういう意味では、現在日本が準備している「ミニマルファブ」は確かに日本反撃の大きな一手になる可能性がある。各社が独自に手軽な半導体製造工場を持つことができるようになるという、新たなビジネスモデルが築けるかどうか、注目していきたい。

(画像は写真ACから引用しています)

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