クヮン・アイ・ユウ

クヮン・アイ・ユウ

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生きて死ぬ あいだの生

休日をふいにすると ぴったりだと思われて 乾いた笑いが起こる ほんとうは悲しいのに まっすぐそのまま言えない ふふっと言ったあと 小学生の頃 一時期毎日通った あの美しいとは言えない川に 波紋が広がっていく 獲った魚もろくに触れない 釣りの真似事 幸い一匹も釣れなかった それなのに 連日通っていた時期があった あれはどうしてだろう 釣りは父に教わった 父はどうして釣りを教えたのだろう 今思えば 一人で釣りへ行くこともない人だったのに 一時間前や昨日降った雨ではない たぶん何

    • riding in the poem written by someone(誰かが書いた詩に乗って)について

       もしも私がタクシー運転手だったとして、たとえばお客さんから「三千円で行けるところまで行って」と言われたら、きっとここから海までは行かないだろうと思う。でもそれが詩で頼まれたなら、私は喜んで海にまで行ってしまうのだと思う。つまり「海をテーマにした詩を書いて」と言われたら報酬以上のことをしてしまうだろうし、なんなら報酬がなくても全力で取り組んだ過去だってある。それはただただ嬉しかったから。  これまでの人生で一編の詩に心動かされたことがあって、たぶんこれをご覧になっている一部の

      • wiper

        休日の朝に飼い犬と散歩 シャワー 朝食排泄洗濯排泄 昼食 までは良かった 空白 空白 この文字と文字の間 自由 と言われても 何で埋める? 食べるを選ぶ 過食 過食 嗚呼またやってしまった 昼過ぎ 罪悪感 血糖値上がって 眠くなって 横になって すぐに意識遠のいて もしかしてその為にやってる? (小さいころ 顔色をうかがっていたことを思い出して 嗚呼って 力が 抜けてしまう) 起きたら また やってしまった って 言うんだろう 言えよ 言えよ それで? 何が良くな

        • 2024/9/3のあれこradio

          クヮン・アイ・ユウがあれこれ話しているradio風音源です。よろしければ何かをしながらお聴きください。

        生きて死ぬ あいだの生

          「ジャバ・タウン」

          予想外にも 厚みのある体躯 厚みのある掌 「握手をしましょう」 癖のある歩み 見送った後にも まだ鳴っているその声 瞳を輝かせて この街が好きと言うから 街に怯えて町暮らしの 私にも芽生えるものがあった チャリンコに乗って 口笛を吹きながらすれ違うおばさんも 酒の匂いだけがするおじさんも いったい何で稼いでいるのか 全くわからないあんちゃんも おじさんもおばさんもあんちゃんも 同じ郷土民だということが どうして今日は嬉しいのだろう タイフーンに追われているからと 逃げる

          「ジャバ・タウン」

          読書

           あれほど毎日Xから情報を得ていたのに、最近はあまり受け取ろうとしなくなった。し辛くなったと言う方が正しいのかも知れない。代わりに本を読むようになった。とは言え自身が関心のある犬についての本だが。「クヮン・アイ・ユウが読書?」と言っても過言ではない大きな変化だと思う。毎日毎日、情報依存症かのように脳を喜ばせていた自分が今は少し遠く、車内で大人しく読書をするとは思わなかった。それが日常である方には伝わりづらい話かも知れないが、自分でも驚いている。本の中に逃げ込んでいる感覚もある

          鬼雨よ降って

           早朝、強烈な雨が降った。覚醒しきらない意識のなかでも、一時間以上はゆうに降り続いたであろうことが把握出来た。この時間、いつもなら涼しいうちに飼い犬のソフトと散歩へ行くのだが、この日は先に朝ご飯を食べることにした。そうこうしている内、八時ごろには雨が止んだ。外へ出ると、いつもの厳しい夏の朝とは異なり、町中で行われた大規模な打ち水の効果を体感した。ひときわ目立っている縦に積まれた塔のような雲が季節を再認識させた。  散歩を終えて帰宅すると、家族にソフトを預けてまた外へ出た。コン

          詩人が

          その人は一度、真っ逆さま 霞を食っても生きられないが 悲しみひとつが執着を生むと知った地の底にて 涙すら音楽に変わるじかんを生きて 誰にも聴こえない朝に立ち上がる (「夏草が撫でる鼻に泣いただけ」より抜粋) あの頃私は 驚かせたかった 揺らしたかった 生きて来たこと 今ここにいることを 知ってもらいたかった 「あなたは詩を必要としている人」 そう言われたこと なんだよって しばらく受け入れられなかった 「詩に選ばれた人」 そう言われたかったから けれどもう詩に選ばれなく

          なぜ詩を書き続けるのか

          ukariさんの「なにもないところ」に文章を掲載していただきました。詩を書くこと、生きることについての文章です。よろしければご覧下さい。

          なぜ詩を書き続けるのか

          おかえり

          誰にもやらされていないから 誰にもやめさせられない 誰にも期待されていなくても 俺だけが期待している けれどもう信じてる 応援してくれている人たちがいることを 知っている その大切さを いつもありがとう それでもどれか一つしか選べないのなら 最後一人きりになったとしても 俺は俺の期待だけは 決して 裏切りたくない 名前のない山を踏破して 帰り道には明日の弁当のおかずを買う 翌朝には弁当を用意してオフィスにいる そうしてまた名もないところへ出掛けて行って 帰って来て 洗濯物

          詩の朗読「夏のこころ」

          「夏のこころ」という詩の朗読をXで公開しました。よろしければお聴きください。

          詩の朗読「夏のこころ」

          「距離について 赤」

          感染症は 人と人の距離を顕在化した 私と大切な人の近さを 私と他人の遠さを そしてその距離を さらに延ばした 太鼓の音に掠れる声 以降 マスクもなしに こんなに近づくこと あっただろうか 距離の取り方もcommunication そのことを改めて知らされる 額に貼りついた髪が濡れている 顔に提灯の赤のけわい 電車内で なかっただろうか 自らに対する距離に どこか許されたように感じられたこと そして異性愛者の私は 同じことを同性にも感じるのだろうか いや と首を傾げて では

          「距離について 赤」

          summer breeze

          4つのポエトリー・リーディング作品を繋げた作品「summer breeze」です。 元々バラバラに公開していた音源4つを1つに繋げたものを聴きながら会社へ向かっていたら、奇しくも夏の陰日向を感じられてとても良かったです。 1.「ヤマダ電機キリバス店」 2.「海へ来た」 3.「the last dance」 4.「豊里ハイライト」 ※「ヤマダ電機キリバス店」は武田地球さんに詩をお借りしました。その他は自作詩です。

          ポエトリー・リーディング「the last dance」

          自作詩のリーディングをXにて公開しました。 よろしければお聴き下さい。 よろしくお願い致します。

          ポエトリー・リーディング「the last dance」

          リーディング「海へ来た」

          Xで公開したんですが、自作詩の朗読をしたものです。よろしければお聴きください。 <オマケ> 動画内には出て来ないですが、飼い犬のソフトです。

          リーディング「海へ来た」

          「君が好き」って言うみたいに「詩が好き」

          十八歳の時の食事をしたら 深夜三時 「なぁもう二十年前だよ」と叩き起こされた ごめんごめんとトイレで謝っている でもさ 色んな人がいる社会で よく働いて 休みの前の日にもなればさ 崩れたくもなるんだよ そう伝えたら 「もうっ!馬鹿っ!」って怒られた だからごめんごめんとトイレで謝っている 今は ごめんなさいごめんなさいとベッドで謝っている メールチェック マイクチェックワンツーワンツーと言うように 格好をつける メールチェックワンツー 進行中の企画に関してのメールが届いて

          「君が好き」って言うみたいに「詩が好き」