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娘が胡麻油の湖に浮かんでいた

それは暑い日の午前中に起きたことだった。

暑さが厳しすぎてセミは息を潜めている。

1歳の娘はリビングでいないいないばあに夢中。必死でピカピカブーを踊っている。


しめしめ、このすきにゆっくりトイレに入ろう。


ゆっくりといってもトイレにこもっていたのは2,3分のことだったと思う。

トイレからリビングに戻ると、テレビの前にいたはずの娘の姿がなかった。


不審に想い、娘の名前を呼ぶ。


「あーい」


返事が聞こえてきたのは、キッチンだった。


視線をキッチンに移すと、瞳に映り込んできたのは胡麻油の中に浮かぶ娘の姿だった。

どうやら500mlのごま油の容器をすべて空にしたかったらしい。


ぷんと香る胡麻油の香りを胸いっぱいに吸い込んで、これから起こり得るであろう事態にため息をついた。


まずは娘を湖からお風呂場に連れ出す。

足の裏まで油まみれの娘は、シャワーで足を滑らせないように必死に立とうとしていた。

シャンプーとすすぎを2回繰り返したところでいつもの滑らかな肌が戻ってきた。


午後に予定していた幼稚園の個別懇談のために娘にもかわいいツーピースを着せていたのだが、それも全部水の泡、、、いや油の泡か。


娘を着替えさせたあと、私は一人でキッチンに向かう。

この途方もない胡麻油の湖をどのように処理すればよいのだろうか。今までの経験をすべてこの事態に生かそう。


そうだ、油汚れに〜JOY!


使い古したタオルで大まかな油を拭き取ったあと、JOYを床に吹きかけていく。


ワックスが剥がれることなんて気にしていられない。

ああ、このままでは床がツルツルになってしまう。まるでトータルテンボスの中華料理店のネタのようだ。あのネタのオチはなんだったっけ。

油を拭き取りながらあらゆる無駄な思考が脳内を駆け巡っていった。


最後の仕上げはセスキ炭酸水。ラベルに油汚れに強いと書いてある。


キッチンペーパーで拭いていくうちに床はいつもの様子を取り戻したかな見えた。


多少のべたつきは時が経つにつれ、なくなっていくだろう。

きっとこの先に胡麻油のボトルを手に取るたびに、胡麻油の臭いをかぐだびに今日の娘の姿が思い浮かぶのだろう。

胡麻油の湖に浮かんでいるかわいらしい娘の姿を。






というわけで散々なイタズラでした!疲れたわ!


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