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近づく気配のないスカイツリーに向かってひた走る

先週、夜に出かけてエッセイを書いたところ、思ったよりもスラスラと言葉が浮かんできた。

さらには、久しぶりに重い腰をあげて走りに出かけることもできたのもあって、まさにいいこと尽くめ。

要するに、ランニングとエッセイを紐づけてしまえば、どちらもいい感じに続けられるのではないか、そう思ったのだ。

そんなわけで、浅はかに一蓮托生を決意して、今回も走り終えてすぐにPCの前に座っては、文章を書いているのだった。

今夜は、穏やかな春の暖かさに、時折、心地よい風が吹く絶好のランニング日和。先週とは雲泥の差もいいこと。

今日は前回とは逆方向に向かって走りだす。
同じ道を行くのはつまらないから。

走りだしてすぐに、体がポカポカとした熱気を帯びる。走れば走るほど冷えていく体を嘆いたあの時とは明確に違う。

そもそも強風の日に走りにいくなんて、大荒れの海にひよっこが航海に出るようなものだった。遭難待ったなしでよくがんばったあのときの自分。

前回との気温差も相まって気持ちよく走っていると、周りの景色を観る余裕だってある。どちらかというと普段は通らない道だったので、目に映る風景はどれも新鮮に感じられた。

雰囲気のいいカフェや居酒屋を見つけては、今度行ってみようかなと計画を企てつつ、ペースを落としたくなくて、記憶に刻みつけるに留めておく。そして、明日になったらきっと忘れている。知ってる。

そうこうしてるうちに、視界の端にはスカイツリーが見えてきた。

東京に越してきてからと言うものの、その姿を見ない日はないくらい身近な巨大塔は、今日もどでかい存在感を放っていた。

ちなみに、このスカイツリーという建物、その巨大さがゆえに「意外と近くにあるし、もしかしたら歩けるんじゃないか」という錯覚を引き起こしがちだ。

5分くらいで着くんじゃないかという大方の予想を裏切り、20分以上かかったりする。たまにあれは幻想なんじゃないかと思うときもある。

そんな逸話がごまんとあるスカイツリーなので、今夜も、走れども走れどもまったく近づく気配はなかった。ずっと大きいし、ずっと遠い。

あまりにも代わり映えのしないスカイツリーを頭の片隅に放っておいて、イヤホンから流れる音楽に意識をうつす。

最近、よく聴いているのがTOMOOさんの『Super Ball』という楽曲。
殻を突き破るような力強い歌声が響く。

そして、歌詞もすごく好き。
矛盾をはらんだ言葉が連なって、確固たる意志をぶつけてくる。
「丸いままつらぬいて」って最高の歌詞だ。

実際、ボールほど丸いわけではなく、かといってサイコロほど角ばっているわけではもない。そんな形のものが目の前に転がっていたとき、自分だったらどうするだろうか。

いつ実るかもわからないまま、ひたすら丸くなるまで蹴り続けるのか。
それとも、現実的にサイコロとして転がしていくのか。

今はそんなあやふやな思いのまま、ボールでもないサイコロでもない歪な代物を持て余しているわけだけれど、それこそ『Super Ball』の歌詞のように、型にはめる必要はないのかもしれないと思う。

サイコロでサッカーをするくらいの気持ちで「好き」を貫きとおしていたいし、浮いてぎこちないブカブカの靴でも大通りを軽やかに歩いていたい。

そんなことを考えていたら、いつのまにかスカイツリーに辿り着いていた。
本当にいつのまにか目の前にあったので、やっぱり幻想なのかもしれない。

ところで、スーパーボールって言葉だけ見ると、めちゃくちゃ強そうな武器みたいだな。なんたってスーパーだもんな。

めちゃくちゃいい曲なので、ここまで読んだかたは、ぜひ最後に聴いて帰ってくださいね。ではでは。



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