介護等体験で特別支援学校へ行ったときの話
僕は数学の教員免許を持っています(免許状はどこかに失くしてしまいましたが…)。教職課程では数日間、特別支援学校へ出向く介護等体験というものがあります。今日は、そこでの出来事をお話ししたいと思います。
介護等体験では、指定された特別支援学校へ出向いて生徒たちと触れ合うことになります。そこで教員としての資格があるかどうかチェックされるわけです。
以前もお話したことがありますが、僕には知的障碍者の兄がいます。ですので、そのような生徒たちと接することに特段の不安はありませんでした。ただ、人前で話すのが苦手だったので生徒たちと仲良くするのは難しいかもしれないな、と感じていました。
案の定、初日の自己紹介でうまく話せず、生徒たちと距離を縮めることができないまま次の日を迎えてしまいました。
二日目は、生徒たちと一緒に近くの公園へ散歩に行く予定でした。散歩中は、一人の生徒に対して原則一人の先生が手をつないで歩くのですが、実習生たち(僕以外にもたくさん来ていました)もその役割を担うことになっていました。
僕は、初日のときから目を付けていた生徒がいました(仮にその子をA君と呼びます)。初めて会った時から、なんとなくA君とは気が合いそうな気がしていたのです。ただ、初日はあまり話せずにいました。
散歩の時間になって、僕はA君と手をつなぐことにしました。公園までの道すじ、ずっと手をつないで歩くことになるのですが、緊張で手がガチガチに強張っていました。それはA君も同じで、僕の緊張が伝わる分だけ余計に緊張してる様子でした。僕から話しかけることもなく、A君もウーウー唸るだけ。その場は気まずい空気が流れていました。
そうこうしているうちに公園に到着するのですが、僕は何をしたらいいか分からず、手をつないだままその場に突っ立っていました。
と、その時。A君が突然、僕の手を振り切って走り出したのです。
「あっ!」
A君の後を追いかけると、A君は砂場のところでしゃがみこんで砂遊びを始めたのでした。
「ほっ…」
安心した僕は、同じようにしゃがんで砂遊びをすることにしました。A君と一緒に遊んだ…というよりは、各々が同じように一人で遊んだ、という感じでしたが、とにかくこの出来事が何かを変えました。
完全に緊張がほぐれた僕らは、自然と手を握って帰ることができました。最終的には、A君の方から遊びに誘ってくれるまでになっていました。
この経験は今でも忘れられません。
最後まで記事を読んでいただきありがとうございました!