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趣味や音楽、写真、ときどき俳句21 中国大連の猫
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大連の猫は眼が青かった。
中国の遼寧師範大学に行った時、早朝に大学周辺を散策していると小さな屋台のそばで白猫がのんびりしており、見ると両眼が綺麗なブルーだった。
人慣れしているのか、近づいても逃げずにこちらを見つめている。私も猫のそばで佇みながら様子をそれとなくうかがっていると、白猫は大きな欠伸をした後に毛繕いを始めた。
中国の人々は朝が早い。私が散歩していたのは6時半頃だったが、多くの人が足早に歩きながら職場に向かっていた。冬の朝は寒く、人々は白い息を吐きながら黙々と歩いたり、あちこちの屋台で朝食を買ったりしていた。
その忙しない朝に黙って佇んでいるのは私と白猫ぐらいであり、それが何だか可笑しかった。
毛繕いをしている白猫の様子をそれとなく見ていた私はやがてポケットからコンパクトカメラを取り出し、何気なく白猫にレンズを向けた。猫は動作を止めて「?」とこちらを見つめ、「…何をしているんだ?」と怪訝そうな表情をしながら、興味があるようでもあった。その時の猫の表情が上の写真である。
もしかすると、猫はエサをくれると思ったのかもしれない。
しかし、私が取り出したのは小さな黒い物であり、それも猫とほどよく距離を取りながら黒い物を動かしているので、猫は興味があるような、訝しいような、結局エサではないのか? といった不思議な表情を浮かべたのを覚えている。
その複雑な感情のようなものが見え隠れしする猫の表情を見ていると、白猫はどことなく仙人の化身のようにも感じられてきた。中国の大連にいるので仙人を連想したという安易な連想なのだが、悪くない空想に感じられた。
私はカメラで仙人的な白猫を幾枚か撮った後、そっと離れた。
遼寧師範大学に滞在している間は毎朝散歩に出かけたが、その後、白猫に出会うことはなかった。あの青い眼は今も曇った空を眺めたり、早朝に早足で歩み去る人々を眺めたりしているのだろうか。
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(初出:「セクト・ポクリット」2022.1.24)
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