掘り出し物(Pさん)

 特に特徴のない一日だった。嫁が部屋の整理をはじめて、嫁ゾーンの中から僕が買った本が出てきて、いつどういういきさつで買ったのか全く思い出せない、徳川夢声という、これまた何の人だか知らないけど聞いたことがあるだけの人の、これもその人の本の中でどういう位置にあるのか知らない、もっとも想像はつくけれども、百人の著名人にインタヴューをするという対談集、『問答有用』という本が出てきた。
 かなり古い本で、その徳川夢声という人が生きていた時代に出た本であるらしい。旧字と新字、旧仮名遣いと新仮名遣いの混ざった中途半端な時代のものらしい。出てくる当時の著名人という人も、全く知らない。
 昔は、本の上で「徹子の部屋」をやっていたのでもあろうか。
 語り口が、初期の吉田健一の小説の登場人物に似ている。「イヤア……」といって頭を掻く、みたいなノリと文体。
 なんとなく、時代の空気が刻まれているといえば言えるのかもしれない。こういう曰くの知れない本は簡単に捨ててしまうのだが、少し読み進めて判断しようと思った。

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