Pさんの目がテン! Vol.68 早すぎる民俗誌 タキトゥス『ゲルマーニア』3(Pさん)

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 タキトゥスの『ゲルマーニア』についてもう一つ。
 読んでいて「アッ」と驚いたのは、ゲルマン人の婚姻について書かれた箇所。

ただきわめて少数の人々が、その放恣のゆえにではなく、単に門地の高さのゆえに、いくつもの婚姻を結ぶのを求められているのみである。
 持参品は妻が夫にもたらすのではなく、かえって夫が妻に贈るのである。このとき、〔妻の〕両親、近親が立ち会ってそれを検する。……
(タキトゥス『ゲルマーニア』、89ページ)

 ここで、婚姻が、一族の縁組のために行われているということ、娘が「差し出される」ということ、それに伴う贈与品が、どれくらいの価値のもので、ということが書かれている。
 これって、噂に聞く、レヴィ=ストロースの『親族の基本構造』の主眼点と、同じではないか! ということに、驚いたわけだった。
 むろん、タキトゥスがそこに着眼して、広範にさまざまな国の情報を収集し何らかの結論を得た、などということでは全くない、このパートはほんの一部のことだ。しかし、それほど、異国の婚姻の制度というのは第一に書かれなければならないことで、それが普遍的だということが、もしかしたら当時からあったのか、などと想像すると、何だか、今までのレヴィ=ストロース観、人類学観をまた更新しなければならないような気分になった。

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