最高💕！Jikamarie

新譜(曲)や注目のアーティストはなるべくTwitter (a.k.a X)で文字数に収まる形でつぶやいてるけど、めっちゃいろいろと書きたくなるアーティストもいる。そういう場合はnoteで備忘録。

Jikamarieの曲を初めて聴いたのは2022年の終わり頃だったけれど
「この人、けっこうキャッチーでいいメロディを書くんだ」
と思った。
アレンジやビートもいい感じだし、ボーカルも音の立ち上がりがよくビートが立ってる。だけどそういうアーティストはフィリピンにはゴマンといるし、今はそれらのアーティストは現実の(現地での)ポピュラリティの高低に関わらずデジタルプラットフォームで一覧(一聴)できるから、もう少し何曲か聴いてから。。。と思っていたら去年の半ばあたりから脳内ヘビーローテーションとなってしまった。
出すシングル出すシングルどれもカッコいい。以前の作品も聴いてみたけれどいい感じ。

Kailangan ko ngは2022年の初めにリリースされたシングル。シンプルなループのバッキングにポンポンポンっと小気味よく乗るJikamarieのボーカルが気持ちいい。素直なハイティーン〜Mid 20sの気持ちを歌った歌詞と自身がギャングの親分？役に扮するMVのギャップが面白い。歌とVが内面と日常のギャップ・ジレンマを醸しているように感じて興味深かった。

The sun is youは2022年の秋にリリースされたシングルでブルーアイドソウルっぽいウエルメイドなミディアムナンバー。メリハリのあるリズムトラックに乗る流れるようなリードボーカルとバックコーラスが印象的。

フィリピンではソングライターとパフォーマーの分業がけっこうはっきりしていて以前は「シンガー・ソングライター」で売っている人というのはそれほど多くなかった(多くがバンドという形態を取った)けど最近はインディーズアーティストを中心に自分で作った曲を自分で歌うアーティストも増えている。創作とパフォーマンスレベルを維持するのは結構大変と思うが、彼女はうまく折り合いつけていると思う。
ほとんどのシングルの作詞作曲は自身単独か兄弟のKenneth Clark Ponceとの共同作業のことが多く、プロデューサーにはKennethがクレジットされていることが多い。
Jikamarieとkennethはビリー・アイリッシュと兄のフィネアス・オコンネルのコンビに擬えられることが多いが、ほぼそういう理解で間違いないと思う。

デビューシングルのLutang (2021)　前出のKailangan Ko Ng…にも通じるサウンドのポップナンバー。多感な20代前半の若者の気持ちが歌詞・タイトルにもよく現れている。

2022年にリリースしたバラード。ゆったりした6/8拍子に乗せたファンタジックなナンバー。

学生時代バンドマンをしていた両親に音楽を教わったというのはフィリピンではそれほど珍しくないことだけど、インタビュー記事でヘー！と思ったのは両親のことを「pastor(牧師)」と呼んでいたところ。
カトリック教徒が8割を占めるフィリピンでpriest(神父)ではなくpastorなのはそれほど多くない。
デビュー当時彼女は建築を専攻する学生で、卒業後の進路で「現実」を取るか「(音楽への)情熱」を取るか迷っていると言っていたが、結構フィリピンのアーティストは若手・ベテランに限らず将来の身の振り方について冷静で、ビッグネームになったアイドルタレントが人気絶頂の最中に復学することは珍しくない。貧しさで勉強ができなかったが、才能を発掘されてスターになりその収入で学業を再開するというパターンも多く、意外とフィリピンの若者はみな堅実なんだなと気付かされる点。
ファンとしてはミュージシャンを続けてほしいと思うところだけど、どうするのだろう？ひょっとしてもう卒業している頃かもしれないけれど、コンスタントに新曲をリリースしているところをみると、音楽は続けているようなので一安心。

閑話休題。

Spotifyでは2024年のミニアルバムLover Girlに収録となってるけど、2021年にリリースされたR&Bミディアムスローのbawi na lang ako sa next life。
バースの部分では細かく刻みサビではゆったりと引っ張る、歌詞の譜割りが気持ちいい。

こちらも上記アルバムに収録、2023年暮れにリリースされたシングルHinahanap-hapap。
最新のR&Bサウンドのミディアスロー。シンプルな進行だけど、ボーカルを含めたメリハリのあるアレンジが飽きさせない。

最新シングル(2024年4月)のIisa。人気シンガーJRLDMとのコラボ。
80年代のベビーフェイスが書くような美しいバラードで、何度も繰り返してしまうほど耳残りのするメロディなんだけど、実は80年代をオンタイムで過ごした僕にはちょっとだけ物足りない点が…それは、この曲はフックやサビを持たず、AA'パターンというか、いわゆる2パターンしかないところ。これはフィリピンに限らず世界中のR&B系シングルのトレンドでもあるんだけど、このバースのメロディを導入部にサビへ持っていく展開、起承転結がほしかったな…と思ってしまう。この辺は僕がおっさんだからかも。。。

インタビューや自身のSNS(インスタ・ツイッター(X) )では、Kpopの大ファンで影響を受けたとも言ってるけど、声の音の立ち上がり(小節頭とかコードチェンジ時の)、強弱、高低の出し入れ(特に低い音と弱い音)、リズムノリなどを聴いていると、明らかにR&Bの影響だろうと思う。フィリピンの多くのエンターテイナーがそうであるように。
確かにフィリピンでもKpopは大人気で、Kpop直系と思えるようなグループ、ソロアーティストも人気だし、Kpop経由でR&B的なスタイルを吸収したと思われるアーティストも多いけど、彼女の場合はシングルのサウンドにそれほどKpopの影響を感じさせないことからもR&Bから直に影響をうけたのでは。。。と思われる。

ちなみにJikamarieは一般的には「インディーズアーティスト」とカテゴライズされているが、デビューシングル以来、彼女の楽曲は全てWarner music Philippinesからディストリビュートされている。
大メジャーなWarnerからリリースしてるのにインディーズ？
と思われるかもしれないけれど、これはフィリピン独特のシステムで、プロモートからシングルの企画制作まで全てレーベルが持つフルコントラクトではなく、パーシャルコントラクトによるもの。
だから、ほとんど知られていないのにWarnerやSonyといったいわゆる「メジャーどころ」から楽曲をリリースしている「インディペンデント」アーティストはフィリピンにはたくさんいる。
日本の芸能界システムに馴染んだ目線だと、メジャーアーティストなのかインディーズアーティストなのかをはっきりさせた方が理解しやすいのかもしれないけれど、フィリピンはまた違ったありよう。
例を挙げるなら、フィリピンでは「メジャーデビュー」という言い方はされないとうことなど。
この、日本とフィリピンの「メジャー」と「インディーズ」の関係や受け止められ方の違いはとても興味深いので改めて記事にしたいと思う。
日本のインディーズ - メジャー感でフィリピンの大衆芸能(映画や音楽)を捉えようとするとうまく理解できなかったり、いい作品・いいアーティストを見過ごしてしまうこともあるんじゃないかな。。。と思っているので。

Jikamarieはじめ最新のおすすめOPMをまとめたプレイリストをSpotifyに作っています。
随時追加で今63曲、大体4時間弱。個人のプレイリストなので、選曲には偏りがありますが、自分がカッコいい！と思った楽曲だけ収録してますので、お楽しみいただければ・・・と思います。