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ほんとの空と投げやりと~読書note-1(2022年4月)~

自分の読書スタイルは、気ままに面白そうと思った本を次々と読むだけで、特に記録など残してこなかった(昔のブログに書いてた時期もあった)。しかし、ふと、あの本読んだ時どう思ったんだっけ?とか、あの本読んだ気もするし読んでない気もするし…とか、自分の加齢による記憶の衰えを痛感するようになってきた。

なので、あくまでも備忘録のために、本を読んで感じたこと、思ったことを毎月読んだ順に記録して行く。書評などという、立派なものではなく、その本に関する自分のエッセイみたいなものだ。そう、他人に嫌われる自分語りが大半なので、あしからず。


1.黄金の6年間 1978-1983 素晴らしきエンタメ青春時代 / 指南役(著)

あぁ、自分はつくづく良い時代に生まれたなぁと思う。この本によると、1978年から1983年の6年間、日本のエンタメは大きな進化を遂げたとのこと。小4~中3という人生で一番多感な時期に、それを堪能できたのだから。

80'sの音楽情報発信サイト「Re:minder-リマインダー」の人気コラムを書籍化したものだが、そうだったなぁと膝を打つものから、へぇーそうだったの?という裏話まで、この時代をリアルタイムで過ごした人間には胸アツな内容となっている。著者の指南役さんの知識と取材力にはホント脱帽する。例えば、映画「銀河鉄道999」のラストシーン、聖子ベストテン初登場の羽田中継、いずれもリアルタイムで見ているが、その豊富な知識と取材に基づく描写で、40年以上たった今も当時の感動がよみがえる。

この本に載ってない、H2O の「僕等のダイアリー」、伊藤さやかの「恋の呪文はスキトキメキトキス」、ビリー・ジョエルの「アップタウン・ガール」、次に述べる83年の聖子等々、珠玉のコラムが他にも沢山あるので、ぜひ第2弾に期待したい。

ところで、よくある「戻れるとしたら、どの時代に戻りたい?」との質問には、自分は迷うことなく中3だった「1983年」と答える。この年の音楽がたまらなく好きなのだ。特に、83年の聖子は凄かった。いや、俺推しの83年の芳恵も凄かったのだ。「春なのに」「夏模様」とようやく楽曲に恵まれ、聖子やトシちゃん、マッチ、明菜と同じ土俵で戦えるー!とほくそ笑んでいた83年の夏、地元足利市の聖子ファンの親友のタケシにアルバム「ユートピア」を借りた。

のっけの「ピーチ・シャーベット」「マイアミの午前5時」「セイシェルの夕陽」3曲にぶちのめされた。何なんだ、このキラキラした夏感は!!と。そして、秋には自分的に彼女の楽曲でのダントツ2トップ「SWEET MEMORIES」「瞳はダイアモンド」だもん。芳恵ファンが瞬く間に聖子ファンになった年だった。

他にも元春、達郎、杉オメ、稲潤、悲しい色やね、想い出がいっぱい、マイケル、カルチャークラブetc…あぁ、83年の音楽たまらんのぉ。だいぶ、本の話題と逸れた。そう、これは決して書評ではない。


2.とりつくしま / 東 直子(著)

人はいつ死ぬか分からない。

先日のGWでの東北道でも、こちらが煽ったと前の車が勘違いをし、逆に後ろに回られ煽られてしばらく付き纏われた。困ったなぁと思いつつ、売られた喧嘩は買うしかなくて、これ死んでもおかしくないぞと思いながら、アクセルベタ踏みのデッドヒートを数十km演じた。そんなこんなで、到着して登り始めた安達太良山(見出し画像)でも、今年は残雪が凄く多くて、これコケたら滑ってあの世かと思い、途中で引き返したりと。

まぁ、今死んだら、間違いなくこの世に未練は残る。病気で余命を言い渡されている人、危険な闇組織に命を狙われている人、あるいは戦時下で避難している人々、自殺を考えてる人等以外、誰も自分が明日死ぬとは思っていないのだから。そんな時の話である。

辻村深月の代表作「ツナグ」は、「使者(ツナグ)」という仲介者が一生に一度だけ生きている人と死者を会わせてくれるという、生きている人目線の話だったが、こちらは、「とりつくしま係」が死んだ人間をモノとして、この世に戻してくれるという、死んだ人目線の話だ。ピッチャーの息子が心配でロージンバックになった母親、妻が綴る日記になった夫、憧れの先輩が使うリップクリームになった少女とか。ちょっと切ないけど何とも温かい。

もし自分が今死んだら、何が一番心残りだろう。やっぱ、就職浪人中の長男の行く末を見届けることができないことかな。だとすると、長男の住まいのFire TV Stickのリモコンにでもならせてもらおうか。二人の共通の趣味である海外サッカーをまた一緒に見れるし、お笑い番組大好きの長男の笑い声をまた聞けるしね。


3.キッチン / 吉本ばなな(著)

行きつけの本屋で別の本を探している時に、たまたまこの本が目に留まった。こういう時は買うしかないでしょう。30年以上前に流行った時、確かに読んだと思っていたが、内容を思い出せず、著者のツイッターもフォローしているので、せっかくだから読み直してみようと手に取る。

私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う。

「キッチン」本文より

この出だしの文だけは何となく覚えてた。いや、それはやっぱ読んでなくて、何かこの本を紹介する番組を見たり、雑誌の文章を読んで知っていただけかもしれない。待てよ、森田芳光監督の映画版を見たことがあるから、読んだ気になっていたか。

唯一の肉親の祖母を亡くした主人公が、その祖母と仲良かった青年とその母(実は父)と同居することになり、二人のやさしさに触れ、少しずつ心を許していく。今読んでも、設定と文章のみずみずしさが素晴らしい作品。人は支え合って生きていくもので、その相手は血の繋がった家族とは限らないのだなぁと。

自分もキッチンはこの世でベッドの次に好きな場所かな。


4.沈黙のパレード / 東野圭吾(著)

最近、読書スピードが落ちてんなぁと思った時は、間に東野圭吾作品を挟むと、リズムが出てきて読むスピードが上がる(俺調べ)。ベストセラー作家の強みである。単に自分が好きなだけだが。

本作はガリレオシリーズ最新作(文庫化された中での)で、今秋映画化されるらしい。複数の殺人事件とそれぞれの復讐劇が絡み合い、なかなか真相に辿り着けない難事件を、アメリカ帰りの湯川教授がいつも通り科学的トリックを解明していくことで解決に導く。最後の簡単に一件落着と行かぬ予想の裏切り感、これぞ東野圭吾という感じ。飽きずに一気に読めた。東野ファンとしては、いくつかのトリックや設定があの作品とあの作品に似てるなぁ、と思いながら読むのも…「実に面白い」。

しかし、このシリーズは「容疑者Xの献身」という最高傑作があるがゆえに、どうしてもそれと比較されてしまう、数奇な運命だなと。まぁ、今秋の映画もそんな期待せず、気楽に見てみようと思う。


5.苦役列車 / 西村賢太(著)

今年の2月に著者の訃報を聞いた時、ほぼ同年代(彼が1学年上)だということに驚いて、すぐこの芥川賞受賞作を買った。しかし、強烈な私小説だとの評判は知っていたので、自分がここ数ヶ月は気分的にずっと落ち込んでいたため、なかなか読む気になれず。でも、先ほど述べたが、何とか間に東野作品挟んで読み始める。評判通り、言い方失礼だが、なかなかの社会の底辺を描いたような作品。今読んでる話題作、ルシア・ベルリン「掃除婦のための手引き書」と同じ匂いがする。

現代小説を読んでいて、これほど辞書を引きながら読んだ本はない。それほど、難しい(普段使わない)言葉が多用されている。あまりにも読めぬ漢字が多くて、スマホに「手書き漢字検索」アプリを入れたほど。著者が恐ろしくボキャブラリー豊富ということだ。高学歴とは無縁でも、物凄い読書量で培ったものであり、心から尊敬する。

自分は主人公や著者のように、生まれ育った環境や進学、就職でそれほど苦労はしてこなかったが、一度だけ人生を投げてしまった時がある。大卒後の数年間だ。大手生保会社に就職したものの、いきなり関連会社に出向となり、全く保険と関係ない仕事をすることになったので、完全にやる気が失せてしまった。その数年間は、給料はとりあえずほぼ全額パチンコ屋の両替機を通し、勝って景品交換した金で生活し、大勝ちした時は飲み歩くという日々。

だが、ある日、行きつけの歌舞伎町のキャバクラで、20代の女の子ばかりの店でいつも一人浮いてる感じの30代半ばと思しきM(仮名)さんに、「くわひろくん、20代で人生投げたらダメよ。30代でそれを拾わなくちゃいけなくなるの。」と言われてちょっと我に返った。この人には俺が人生投げてると思われてんのかと。いつもカラオケで、由紀さおりの「手紙」しか歌わない女性だったので、妙に説得力があった。

本の最後に出てくる「串木野さのさ」の歌詞が身に染みる。

落ちぶれて 袖に涙のかかるとき
人の心の奥ぞ知らるる
朝日を拝む人あれど 夕日を拝む人はない

漁師たちの間で歌い伝えられた「串木野さのさ」
鹿児島県いちき串木野市ホームページより

この頃、一番カラオケで歌ってたのは、「ガラスのジェネレーション」(佐野元春)だったか。「つまらない大人にはなりたくない♪」って、つまらん大人に成り下がりかけてた奴がなぁ…
この曲も黄金の6年間だったね。

そして、投げやり、いや高校時代に槍投げをやってたという大学の先輩は、安達太良山の麓出身だったなぁ。

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