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道尾秀介 『向日葵の咲かない夏』 読書感想

こんにちは、ジニーです。

今日は道尾秀介さんの「向日葵の咲かない夏」です。
道尾さんの作品の中で、必読の作品として各所でこのタイトルを目にしていたため、ずっと気になっていた作品でした。
ようやく、読むことができました。

■まずは作品の簡単なあらすじを。

主人公は小学校4年生のミチオ。
夏休み前日、休んでいたクラスメイトのS君にプリントを渡しに行くことに
なったミチオは、訪れたS君の家で、首を吊って死んでいるS君を見つけます。
急いで学校に戻り事情を伝えたミチオのもとに届いたのはS君の死体などどこにもなかったという情報でした。

1週間後、意外ものに形を変えたS君と遭遇し、一緒にS君の死体を隠した犯人を捜し始めます。
3歳の妹ミカと、子供たちだけの犯人捜し。

彼らが見つけた意外な犯人と、彼らに隠された秘密とは・・・。

非常にざっくりとしたあらすじです。
あまり細かく書きすぎるとネタバレにもなってしまうので、ここまでにとどめていますが、読んでいるうちにいろんな違和感を感じることと思います。

そして、物語の最後。
ここでちょっとぞっとする感じの一文が・・・。
いわゆるイヤミスに属するミステリー作品ですね。

■読んでみた感想

とても個人的な感想ですが、思っていたほどの面白さは感じませんでした。
最初の期待値が高かったことも影響していると思いますが、途中で作中にある違和感の正体のようなものに気付いたので、そちらのほうが気になってしまって本作品の醍醐味となる部分を純粋に楽しめなかったというのがあるかもしれません。

僕としては「シャドウ」のほうが好きでした。
(本作を読んだ後にシャドウを読んだので読書感想は後日書きます)

ただ、いろんな人から高い評価を受けている作品であることは間違いがなく。
ミステリーとしての謎解きの面白さはもちろんのこと、人の命の行く末や
誰しも抱えるトラウマ、この辺りが物語の世界観に深みを生み、ただの子供たちのひと夏の冒険では収まりきらない、重厚で胸に深く居座る「淀み」のようなものが浮き彫りになる作品です。

冒頭で足を踏み入れた世界観が、物語を読み進めるうちにいつしか特殊なものではなく、当たり前のものになっていく。
頭のどこかの感覚がマヒした状態が当たり前のもののように馴染んでしまっています。
じわじわと蝕んでくる感触こそ、道尾秀介という作家の筆力とプロットの妙なのではないかと思います。
そして読後の戻ってきたときの脱力感。
これは是非体感してほしい。

■好みの分かれるタイプの小説かも

この手の雰囲気を持つ作品は好みが分かれますよね。
好き嫌いが明確になりそうな作品。
僕ももう少し予備知を持たず純粋な状況で触れたかったなと思いましたし、最後の一文にたどり着いた時の、終わりが終わりではない感覚は好きです。

タイトルだけ見ると、夏の爽やかさを感じる部分もありますが、これを爽やかと捉えるかどうかは、ご自身で確かめてみてほしいです。

丁寧で細かな伏線の数々。
道尾秀介という作家のきっかけとしては、最適なひとつとなる作品ではないかと思います。

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