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道尾秀介 『いけない』 読書感想

こんにちは、ジニーです。

寒い冬でも読書は続けております。
読書の冬ですね。

今回紹介するのは、道尾秀介さんの「いけない」。
これもまた文庫化を待っていた小説です。
タイトルがキャッチーですよね、「いけない」、非常にシンプルに不穏な感じが伝わってきます。

■著者からの「ルール」が与えられている小説

本作では著者から簡単な「ルール」が与えられています。
背表紙から引用しますと、

①まずは各章の物語をおたのしみください
②各章の最終ページには、ある写真が挿入されています
③写真を見ることで、それぞれの〝隠された真相〟を発見していただけると幸いです

となっています。
ここからわかる通り、本作は全4話の短編集となっています。
ただし舞台となる町は同じで、それぞれの話が巧妙に絡み合っていきます。
それぞれで見て見える各論的な真相が最終的にどういった物語に行きつくのかが、最大の読みどころでしょうか。

■真相は読者が考察する

いわゆる「読者に真相を解いてもらう」系のミステリーです。
そのため、それぞれの話のオチの部分はぼやかされたまま終了するため推理が好きな方は考察できる面白さも一緒に味わえると思います。

「ん、どういうことだ?」
と感じても、読み返すとちゃんと伏線が張ってあるし、最後の写真を見て真相に気付けるようになっているし、小説というエンターテイメントをより視覚的に楽しめるような工夫を道尾さんは常に考えているのだということが全体から伝わってきます。

そして読後感。
前述の通り、オチは読者にゆだねているところがあるので、その先の話をどうしても想像してしまう。
読み終えても自分の中でそこから少し先のストーリーが展開していくという面白さが味わえるのも本書の特徴だと言えます。

■個人的なわがままを言わせてください

一つだけわがままを言うなれば、各章の事件の関連性をもっと持たせても良いのではないかと思いました。(偉そうなこと言ってスミマセン)
僕が勝手にそういう作品だと思い込んで読んでいたところがあったのでそう感じてしまうのかもしれませんが、全体の統一感が増すことでより心をつかまれたのかもしれません。
そんな可能性を秘めたアイデアのように感じます。

なお、本作の続編「いけない2」がすでに発行されていますので、さらに洗練されたミステリーを味わえるかもしれません。
こちらも文庫化が楽しみです。

「いけない」。
読者も思い込みをもって読んでいては「いけない」。
そんな忠告をタイトルからされているようにも感じます。
未読の方はぜひ手に取ってみてください。

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