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荻原 浩 『噂』 読書感想
こんばんは、ジニーです。
ご無沙汰しておりました、今回読んだのは、荻原 浩さんの『噂』。
ずっと読みたいと思っていた作品で、手元にはありましたがいろいろとあってようやく読むことができました。
「レインマンが出没して、女のコの足首を切っちゃうんだ。
でもね、ミリエルをつけてると狙われないんだって」
とある香水をヒットさせるために作られた人為的な噂。
女子高生をモニターにしたこの口コミ作戦は、奏功し香水は大ヒット。
爆発的に広まっていきます。
しかし、その噂をなぞったような、足首を切られた女性の死体が見つかり事態は急転していきます。
その怪奇的な殺人事件を二人の刑事が追いかける。
そんな形で物語は進行していきます。
この手の刑事ものの魅力の一つは、コンビになります。
だいたい所轄と本庁の刑事がバディとなり、相反する考えで反発しあう形なのですが、今回のはまた妙なコンビなのです。
所轄は40代の疲れた刑事。
本庁は若くして役職付きの女性刑事。
年齢も性別も違うコンビが、徐々に相手を理解し事件の真相に迫っていく様子が、なかなか面白いです。
どちらも、身近な大切な事物を失っており、そこに去来する寂しさのようなものがシンパシーとなりコンビとしての精度をドンドン上げていくのですが、やはりその過程を見ていくのが面白いです。
さて、事件は真相につかづくにつれ、なんとなく犯人像が見えてきます。
なぜ足首を切り落とすのか、その真意は「殺戮に至る病」なみにサイコな感じなのですが、それ以上に、物語の最後にゾクっとします。
この作品、基本的に自分の世界しか見ていない鈍感な人物ばかりが出てきます。
広告代理店の営業や、その協力会社の社長と秘書。
本庁の刑事、所轄の刑事。
被害者の家族。
そんな中で最愛のものを亡くした主人公コンビの他人を気遣う姿は際立って鮮やかに写ります。
その鮮やかさが、事件の猟奇性と、犯人の独りよがりさをより際立てていきます。
そして、やはり人間の想いというものが、一番強烈で恐ろしいということも。
これってうちの近くの書店では、平積みされて大々的に売り出されてるけどドラマとか映画になってるのかな?
そういうエンターテイメントにしても十分に楽しめそうなので、ちょっと期待します。
濃厚なミステリーを読んだ、とそんな気分に浸らせてくれるとても面白い作品でした。
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