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有川浩 「三匹のおっさん」 読書感想

こんにちは、ジニーです。

今回読んだのは有川浩さんの「三匹のおっさん」です。
有川さんと言えば「阪急電車」や「図書館戦争」など、エンタメ要素の強い面白い小説を書く作家さんというイメージが僕にはありまして、今回の「三匹のおっさん」というタイトルからも何やら面白そうな雰囲気が漂ってきますね。

■物語のあらすじと登場人物の紹介

主人公は還暦を迎えた3人のおじい・・・もといおじさん。
還暦くらいでジジイ扱いされるのは我慢ならんと、幼少期からの悪ガキ3人組だったこの3人が町内の自警団を結成して、身近な悪を打つ!
というお話です。

登場する3匹のおっさんはというと、それぞれにまた個性の強いメンツ。

キヨこと清田清一は、剣道の達人。
ゼネコン会社を定年で退社し、その後嘱託社員として系列会社のゲームセンターで経理などの管理を担当することになったおっさん。
いわゆる絵に描いたような曲がったことが大嫌いな口下手で不器用な性格。

シゲこと立花重雄は柔道の達人。
三匹のおっさんのたまり場ともなっている居酒屋「酔いどれ鯨」の元店主。
いまは息子夫婦に店の切り盛りを任せているなか、その手伝いをしているおっさん。
こちらは絵に描いたような熱血漢。いつもジャージで過ごす豪快な性格。

ノリこと有村則夫は機械の達人。
この3匹の中では、参謀役に位置する存在で、自営の電気屋を切り盛りしています。
高齢出産で妻を亡くしており、忘れ形見でもある一人娘と過ごしています。
いつもコートを着てるのは勝手に改造したスタンガンなどを持ち歩いているためキレると手に負えないなど、ある意味いちばんヤバい性格。

■おっさんが主人公だから古臭い?むしろそこが味!

物語は連作短編という形式をとり、第1話では3匹が自警団を結成するところから始まり、以降、町内で起こるいろんな事件を老獪な頭と老練な手腕で解決していきます。

これがもう、面白くて爽快なんですよね。
最近の60歳の方は、健康な方が多いですが、この3匹もご多分に漏れずまぁ、元気元気。

話だけ聞いていると、なんだか時代劇の現代版のように感じてしまうところもありますが、ちゃんと今の時代の読み物としてフィットできるようなエッセンスが入っています。
その最たるものがキヨの孫の祐希とノリの愛娘・早苗の存在。
ふたりがおっさんに絡むことで、古臭さが一気に緩和され、ますますおっさんが活躍するという本作のエンターテイメント性を高めていると思います。
なので、若い方が手にとっても凄く読みやすいと思いますし、むしろ若い方にこそ読んでみてほしい作品でもあります。

こういうおっさんが主人公になる作品って、それ独特の良さがあって、一つ一つの物語に情緒というか、すっと胸に染みる読後感があるんですよね。
時にはそれが3匹のおっさんからの説教に感じられ、
時にはそれが3匹のおっさんの哀愁にも感じられ、
そして時には3匹のおっさんの味にも感じられます。
いずれにしても、この3匹のおっさんを通して伝わるメッセージは、ただ単純な言葉として受け止める以上にグッとくるんですよね。

■個人的なお勧めは

個人的に良かったのは、第3話。
シゲとシゲの奥さんが主人公なのですが、終わり方がとてもいい。
解説を書いている中江有里さんもこのお話が気に入っているようで、こういう話はおっさんが主人公出ないとなかなか説得力のあるものにはならないのだろうなと感じます。

もちろん、そのほかの話もとても楽しく読めるものばかりです。
本作には「三匹のおっさん ふたたび」という続編があり、そちらもすでに購入済み。
こちらも楽しみながら読ませてもらおうと思います。

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