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谷川俊太郎の絵本展


 おもしろかった。楽しかった。笑ってしまった。怖くなった。考えさせられた。東京・立川のGREEN SPRINGSで開かれている「谷川俊太郎★絵本百貨展」に2023年5月15日(月)に行ってきた。
 詩人の谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう)さんは1960年代からさまざまな絵描きや写真家とともに200冊にも及ぶ絵本を作ってきた。ことばあそび、ナンセンスの楽しみ、生きることの面白さや大変さ、尊さ、死や戦争までをテーマに、絵と言葉による表現に挑み続けている。
 バラエティ豊かな絵本に共通するのは、読み手に対する谷川俊太郎さんの希望の眼差しだ。展覧会では約20冊の絵本を取り上げており、多彩なクリエイターとともに、絵本の原画、絵や言葉が動き出す映像、朗読や音、巨大な絵巻や書下ろしのインスタレーション作品などが紹介されている。
 展示は最初の文字通りの『絵本』(1956)から始まる。そして『まるのおうさま』(71)、『こっぷ』(72)、『ぴよぴよ』(72)、『ことばあそびうた』(73)、『とき』(73)、『もこ もこもこ』(77)、『えをかく』(73)などへと続いていく。

 ウクライナ戦争が続く中、『せんそうごっこ』(82)という作品に注目が集まるのも当然だろう。谷川俊太郎が紡いだ言葉のひとつひとつが、私たちの胸に静かに迫ってくる。

 子どもの自死をテーマとした『ぼく』(2022)という作品もある。構想から約2年たって出版された。
 編集者に求められて、谷川俊太郎は絵本の帯に次のように書いた「基本的に「自死」には、はっきりした理由はないと思う。生活難とか病気とか親しい人の死とかいじめとかが語られることが多いんだけど、もっと深い何かがあるんじゃないか。そこを書きたかった」。
 「だから、ある意味で「わからない」といことがテーマだとぼくは思ったんですよ。子どもが「自分で死ぬ」という理由を明確に書きたくない、いくらでも暗く描くことができるテーマなんだけど、世界の美しさと残酷さと含めた「明るい絵本」にしたかったんです」。

 ちょっと怖くなるような作品もあった。『なおみ』(1982)という名前の人形と少女の写真集である。写真は沢渡朔(さわたり・はじめ)さん、人形は加藤子久美子(かとうじ・くみこ)さん作。
 谷川俊太郎は言った「人間そっくりのすがたかたちをもっていながら、人間とはちがって生まれも育ちも死にもしないもの、いわば凍りついたような時間を生きている人形というものと、やがておとなになる時間の流れを生きているなまみの少女、そのふたつの存在の交流と対比のうちに、時間をとらえることはできないだろうかーー」。
 「いつのまにかそんな着想が、私の中に育っていきました」。

 一方で、”おあそび”も満載の展覧会である。柱にはちょっとした言葉と絵が描かれている。前述の『なおみ』の写真の数々はトンネルを入ったところに展示されている。大きく「つな」と書かれたところには本物の太い綱がある。また「あな」をテーマにした展示もある。

 思わず笑みがこぼれてしまう作品は『おならうた』(2006)。

 映像を駆使した作品も人気だった。

 谷川俊太郎さんは1931年、東京に生まれた。48年から詩作を始めた。52年、処女詩集『二十億光年の孤独』を敢行する。そして、歌の作詞、脚本、エッセイ、評論活動などにも活動を広げていく。
 62年、「月火水木金十日のうた」で日本レコード大賞作詞賞を受賞。映画製作にも進出し、「市川崑監督の弟子」を自認した。脚本を手掛けた。67年には初の訳書『あしながおじさん』を出した。
 そのほか、75年には『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞、83年には『日々の地図』で読売文学賞、88年には『はだか 谷川俊太郎詩集』で野間児童文芸賞、『いちねんせい』で小学館文学賞、93年には『世間知ラズ』で萩原朔太郎賞、2006年には『シャガールと木の葉』で毎日芸術賞、2016年には『詩に就いて』で三好達治賞などの受賞歴がある。

 この絵本にフォーカスした展覧会は2023年7月9日(日)まで開催中。会期中無休。午前10時から午後6時まで(最終入場は午後5時半まで)。入場料は税込みで一般1800円、大学生1200円、高校生1000円、中・小学生600円、未就学児無料。休日および混雑が予想される日は事前決済の日付指定券(オンラインチケット)がおすすめだという。
 GREEN SPRINGSの住所は:東京都立川市緑町3-1。電話は042-518-9625。JR立川駅北口あるいは多摩モノレール立川北駅北口から徒歩およそ10分。車の場合、GREEN SPRINGSの共同駐車場が利用出来る。
 そのほか、連絡先はinfo@play2020.jp。


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