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街の本屋支援議員連盟総会

 日本各地で街なかから本屋が次々に消えている。
 便利なネット販売の普及、若者を中心とした活字離れ、その背景でもあるスマホなどで他の娯楽が容易に楽しめることなど多くの理由があろう。
 実際、2022年9月に全国で書店がない自治体の比率は26.2%だったが、今年3月には27.7%とさらに悪化した。
 この1年半の間に609書店がなくなったということだ。
 活字文化の拠点としての地域の書店が廃れていくことに危機感を抱いた書籍・出版業界の働き掛けもあって発足した「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」が2024年4月18日(木)、総会を衆議院第二議員会館地下1階第一会議室で開いた。
 同連盟は発足時40人程度だったが、今では約150人が参加している。
 同連盟の塩谷立会長(衆議院議員)は開会挨拶で「具体的にことが進んできたという実感がある・・・こうして話し合いをする中で様々な問題も出てくるが、更なる議論を各地域で書店がしていくことは文化のバロメーターだ。我が国の伝統文化、知の拠点を高めて発展させていきたい」と述べた。

同議員連盟の塩谷立会長


 同連盟幹事長を務める斎藤健・経済産業大臣は書店の減少に危機感を露わにした後、次のように話した。「これはコンテンツ産業の問題に入るだろうとプロジェクトチームを作らせました。これから中小企業庁との連携の必要も出てくると思うので(そのような)体制を作りました」。
 「世の中の本好きの人たちからの反応を思ったよりも多く頂いており、大変勇気づけられています」と斎藤大臣は語った。

斎藤健・経済産業大臣


 ここで同連盟の伊東良孝事務局長(衆議院議員)は、子どもの読書習慣づけ、リスキリング(学び直し)、文化観光振興などについて各省庁で検討を進めてもらっていることを紹介した。
 この後、経済産業省、文部科学省、文化庁、公正取引委員会からそれぞれの書店支援のための検討事項などが報告された。
 そして書店サイドからは日本書店商業組合連合会の矢幡秀治会長から話があった。「書店はなくなって当たり前とか時代の流れだという声があるが、なくしてはいけないと思う。国民の声が変わっていけば、我々も生き残っていける。悲痛な声はまだまだ強い。自助努力は必要だと思うが、助けて頂いて何とかしたいというところです」。
 図書館のいわゆる「複本」(同じ書籍を複数冊購入すること)の状況は、ベストセラー本の複本について図書館の約6割の複本が「2冊未満」だと報告があったことに触れて、矢幡会長は「残り4割に苦しめられているのです。そこをもうちょっと深掘りしてもらいたい」と注文をつけた。
 矢幡会長によると、図書館が大手からではなく地元の中小書店から本を購入すれば1000万円くらいの経済効果があるという。

日本書店商業組合連合会の矢幡秀治会長


 続けて出版文化産業振興財団の奥村景二副理事長が報告をした。「少しずつ、一歩ずつ前に進んでいると実感しています」。
 奥村副理事長は無書店自治体の比率が高くなっている、つまり閉店が多いのは①不採算②ショッピングセンターなど本屋が入っている建物のデベロッパーの都合③後継者難だと説明した。
 「駅前の書店は約40%減りました。高い家賃を賄いきれない。オーナーとしても他に貸したほうがいいということになる」。
 本の「流通を守っていくことが必要です。喫緊の課題です。とりわけ輸送コストですが、ドライバー不足や燃料代高騰などがある一方、書店の数も減っていて、両面からのコスト上昇となっている」と奥村副理事長。

出版文化産業振興財団の奥村景二副理事長


 矢幡さんは自助努力ということで書籍・出版業界の構造に関して何か問題意識を持っているかと問われ「配本制度もだんだん改善されつつある。我々の望む冊数を入れてくれるようになっている」と答えた。
 さらに「昔は本の配送が遅かったが、(今はほぼ迅速に配送されるようになるに至った過程で)取次の果たした役割が大きい」。
 「でも我々(書店)が苦しければ取次も苦しくなるのも事実です。雑誌中心の扱いを続けていくと破綻するかもしれない。また、東京などの首都圏はいいが、それ以外は返品にコストがかかる。全国で差がある」。
 この総会の前日に行われた斎藤大臣と書店経営者4人による「車座ヒアリング」での提案としてーー〇図書館内に小売書店管理の書籍注文が出来る端末を設置し書籍販売を促す〇図書館で予約した書籍を書店で受け取れるようにする〇書店がない地域での図書館による書籍販売〇図書館員の推薦により本を表彰する「図書館本大賞」(仮)の創設ーーが紹介された。

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