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原発事故を予言した歌人

 東京電力福島第一原発の大事故を予言した歌人がいた。その原発が立地する福島県双葉郡大熊町で農業を営みながら「反原発」の歌を詠み続けてきた佐藤祐禎(さとう・ゆうてい)さんである。
 2004年、第一歌集「青白き光」を自費出版した。原発がある町で事故を心配しながら過ごす日々などを歌に詠んだ。

ー原子炉の寿命知らされざるままに原発ひしめく町に慣れて住むー

 そして7年後、佐藤さんの「予言」は当たってしまう。
 そう、2011年3月11日に東日本大震災が起こり、大津波などによって福島第一原発が大事故を起こしたのだ。
 予言書「青白き光」は「いりの舎」から文庫本化された。
 2013年、佐藤さんは念願の帰郷がかなうことなく、移り住んでいた福島県いわき市でこの世を去った。
 2022年、佐藤さんの弟子たちが協力して遺稿歌集「再び還らず」(いりの舎)が刊行された。

ー放射能いつをさまるか永くつづくか帰宅する夢見るしばしもー
ー県下一ゆたかな町原発の崩壊に辿る貧窮への道ー
ーそれぞれに勝手な論を展開す原発専門とふ学者らはー
ー海も陸も空も死にたり原発の落人となり今はいわきにー

 佐藤さんは3.11後、原発事故に直面して思うこと、とりわけ放射能リスクにより故郷を追われた不条理、経済論理を優先してきた原発推進派への強い不信感を次々に歌にしていったのだ。
 怒りは福島第一原発の恩恵を受けていた都会の人々へも向けられた。

ー大熊より電気送りし東京がいつまでも無事の保証はありやー

 返す刀でマスコミへの不信感も表明した。

ー報道は原発収束順調と伝ふれど大熊のわれら信ぜずー

 能登半島地震が発生し、震源近くの北陸電力志賀原発がトラブル続きで、余震が続く中、事故のリスクが問題となっている今こそ、佐藤さんの血と汗と涙が込められた歌の数々を一読してみませんか。

 いりの舎は:〒155-0022 東京都世田谷区代沢5-32-5  
                 シェルボ下北沢403
       ℡03-6413-8426


 

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