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経済安保法シンポ

 このほど国会を通過・成立し、機密情報の保全対象を経済安全保障分野に広げる「重要経済安保情報保護・活用法」を推し進めたのは岸田文雄首相の政権が権力を維持したいがゆえに米国の意向に従ったためだとジャーナリストの望月衣塑子(いそこ)さんはいう。
 海渡雄一弁護士によると、米国は米中衝突を避けるために緩衝地帯である日本に中国と戦わせようとしている。
 経済安保法の狙いは半導体など重要産品のサプライチェーンと基幹インフラを多元化することだと海渡弁護士は語る。
 「日本は製品のかなりの部分の原料を中国から輸入しており、この法律によって政府は基幹インフラ企業から中国製ITを一掃することを狙っている」と海渡弁護士は付け加えた。
 「当然、これは中国の逆鱗に触れて、対抗措置が取られ、日本への輸出を停止することが間違いなく起こります」。
 「日本がアメリカの尻馬に乗って中国をいじめているなんて国民は知らないから、中国を許すまいという雰囲気が作られて、日中戦争へと発展してゆく芽になるのではないか」と海渡弁護士は危機感を露わにする。
 これらの発言は2024年5月23日(木)に文京区民センターで行われた「新しい戦前にさせない」連続シンポジウムー「経済の監視統制と軍事費大増強の危険な本質を暴く!」でのものだ。

望月衣塑子さん(中央) 
海渡雄一弁護士(右)と青木理さん


 背景には日本の公安警察の新たなるレゾンデートルを模索しつつの必死の巻き返しがあるとジャーナリストの青木理(おさむ)さんは指摘する。
 青木さんによると、戦後の公安警察のレゾンデートルは反共だったが、90年代に入って冷戦構造が崩れ、彼らは官僚組織なので新たなレゾンデートルを見つけようとして、出てきたのがテロ対策と政治権力に入り込み密着して自分たちの権益を増やすということだった。
 「彼らは、新しいレゾンデートルであるテロ対策や経済安保で何か手柄をあげないといかなくなって、かなり無茶をしたのです」と青木さん。
 経済安保法では、重要な安保関連情報に触れる人々の審査を内閣総理大臣が行うとなっており「ここがミソだ」と海渡弁護士はいいつつ、「実際は内調(内閣情報調査室)が行うことになるだろう」。

権力のつく嘘は許されない
 コーディネーターの佐高信(さたかまこと)さんは言うー「私たちのつく嘘は許される。権力のつく嘘は許されない。嘘がすべて悪いわけじゃないが、権力はそこのところをごちゃまぜにしてやってくる」。
 「政府は本来私たちの秘密に踏み込まない、踏み込んじゃいけない。彼らは裏金のような秘め事はかばうけれど、我々の秘め事には踏み込んでくる。まさに戦争の地ならしということだと思います」と佐高さん。

佐高信さん


 海渡弁護士はメディアの問題を指摘した。1931年の満州事変は関東軍の謀略だったと大手メディアには事前に知らせていた軍部だったが、メディアは不買運動などの脅しを受けて黙らされたという。
 「15年間、国民をだまし続けました」。
 望月さんも「一番酷いのはメディアだと思う。安保のため日米が一体だというメッセージを届けて、アメリカが行く戦争に日本の自衛隊がついてゆくということを言っているようなもの」だという。
 望月さんによると、これを唱えているのは元朝日新聞幹部の船橋洋一氏で「彼のシンクタンクを支えているのはアメリカの軍事産業だといいます。アメリカ型軍産複合体を進めて、私たちを戦争に引き込もうとしている」。
 こうした主張を展開するメディアの黒幕は他にも、日経新聞社で会長を務めた喜多恒雄氏などがいるという。

プライバシー侵害の恐れ
 特定秘密保護法の適性評価は自衛隊員や公安警察官など主に公務員が対象だったが、今回の経済安保法では数十万人の民間技術者や大学研究者が徹底的に身辺調査されてプライバシーを侵害される恐れがある。
 特に評価対象者の家族、同居人の氏名、生年月日、国籍、住所、犯罪および懲戒の経歴に関する事項、薬物の濫用および影響に関する事項、精神疾患に関する事項、飲酒についての節度に関する事項、信用状態その他の経済的な状況などについて調査を行うとされる。
 シンポジウムでは途中、民衆の抵抗史を語り継ぐ社会人講談師・甲斐淳二さんによる講談「房総・花物語-戦時下で花を守った母と子」が行われた。戦時下では花は必要ないとされ、守ろうとする人たちを「非国民」とする雰囲気だったが実は、みな密かに将来のため隠していたことが最後に分かる。
 花畑は戦時下の食べもののため芋などを栽培するようにいわれる。だが、「花は心のご飯だと思っている」と母が言っていたという。

講談師・甲斐淳二さん


 シンポジウム会場には社民党の福島みずほ党首と立憲民主党の川内博史衆議院議員の野党議員2人が駆け付けた。
 総合司会はジャーナリストで和光大学名誉教授の竹信三恵子さんが務めた。

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