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オフィスはデジタルツインになる(4/4)

1回  拡張したオフィス空間
  デジタルツイン・オフィスとは
  デジタルツインが持つ三つのルート
2回  PDCAに代わる業務フレームワーク
  センシングが生命線
  日常的管理でこそ生きるセンシング
3回  変わるオフィスデザイン
  オフィスの「センシング」
  デザイナーの役割が変わる
4回  「可視化」による貢献
  ワーカーの「時間マネジメント」を支援

オフィスのデジタルツインの影響は、「開発設計」段階だけでなく、「日常業務」の高度化にも現れます。前回は①「設計デザイン」への貢献をみてきましたが、今回は、②日常業務に対する貢献、について考えてみたいと思います。

「可視化」による貢献

「オフィスはデジタルツインになる(1/4)」で触れたように、デジタルツインの「②日常業務に対する貢献」は、収集データをフィードバックする「リアルタイムフィードバックルート」で実現しています。

ただし、「リアルタイムフィードバックルート」とは「可視化サービス」です。取得したワーカーの位置情報を「屋内マップ」や「居場所リスト」に表示し、オフィスの利用実態を「可視化」します。

ワーカーが自宅とセンターオフィスに分散し、センターオフィスでもフリーアドレス制でワーカーが分散、見通しが悪いので「可視化」が要請されます。
可視化サービスは、例えば座席を予約して利用する「ホテリングサービス」や「トイレ満空表示サービス」などにも組み込まれており、このルートの実態は「可視化サービス」です。

ワーカーの「時間マネジメント」を支援

それでは、「可視化」以外にデジタルツインが「②日常業務に対する貢献」することはないのでしょうか。

ABWという働き方を想定した場合、基本になるのは、ワーカーの「自己裁量」と、それに基づく時間マネジメントです。
しかし、今まで固定的な時間管理のもとにあったワーカーが、一足飛びに働く時間や場所、相手を上手にマネジメントしくのは困難です。

そこで、ワーカーの時間マネジメントを支援するサービスが考えられます。
従来、「勤怠管理」は、会社の労務管理のためにありました。労働基準法も労働者の時間管理を会社の責務と考えています。しかし、ABWを推進するには、まず現場における各ワーカーの時間管理があり、それを集約した結果が会社の「勤怠管理」になるという真逆の発想が必要になります。

そのために各現場、ワーカー毎の時間管理を、様々なデータを提供することでサポートする必要がでてきており、デジタルツインは力を発揮します。

一つは、「空間以外の可視化」。単なる空間の可視化ではなく、例えば、同僚や部下の総残業時間を可視化することで、無理のない仕事のマネジメントが可能になります。

もう一つは、「プレゼンス発信」。これは自分が俯瞰して眺めるのではなく、自分のプレゼンスを自ら積極的に発信していくというものです。例えば、センターオフィスでTeamsでチャットしているという状況がリアルタイムに発信できれば、センターオフィスで働いていた人が相対の簡易ミーティングを求めてくるといった偶発の機会が生まれます。

さらに、「レビュー」。一週間の終わりに時間マネジメントをレビーするというもので、とのような仕事種類にどの程度時間を割いたかを把握します。例えば、コニカミノルタジャパンの仕事区分を借りれば、過去半年間、「創造じかん」を増やしたことで「作業じかん」の割合が減ってきた、といったレビューを定量的に行うことで、「今後は少しずつ「自分じかん」を増やしていこう」と思ってもらうということです。

加えて、「レコメンド」があります。ここはアイデア勝負ですが、自分の好きなセンターオフィスのエリアに予約の空きがでた、二つの会議の合間の時間の使い方を提案する、関係者の予定を加味してテレワークか出社かを提案する、といったアイデアがあります。

これらは、具体的なサービスが登場していない中での想定にすぎませんが、分散社会下で必ず需要が立ち上がっていくと考えています。

(丸田一如)