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朗読LIVE 132 竜(4)

全くの大嘘が本当になってしまう。そこに至るまでの、ちょっと担いだろ、という出来心を持った嘘つき本人の心理描写がとても細やかな作品だと思う。

うわ、ほんまに騙されてる?!
そんなわけないやーん、けっけっけ!
はめたったわ。しめしめ。
え? ちょっと待って。そんな噂、よう言うわ。
竜やで、竜、しかも猿沢池。
いやいや、なにこの見物人。本気?
どうしよ、これ、うそでしたー! とか言われへんやん…おばちゃんまで来てしもたし。
どないしょ。Xデーきてもたで。
一日中ここにおるんかいな。
うわ、あいつも来てるわ! ひゃっひゃー。
え、なんか真面目やし。
ちょっと、あんさん、騙されてまんで!
いやそれにしても、上から下まで何この人出。
なんでなん、なんでなん、竜やで、竜…
いや、こんなにみんなおんねんからさ、いや、もしかして、ほんまに出ちゃったりするんかな?
で、出てもおかしないかもしれへんで。みんなこんなに来てんねんし。
うわー! で、出たっ!
で、出たけど、目の迷いか?
え? おばちゃんも見えた?
まじかー。うそやん。いや、ほんまやん。
なんでー? うそ、やったはずやねんけど。

嘘がバレた時は恐ろしい。
嘘が本当になっても、やっぱりそら恐ろしい。
なんの拍子に嘘がバレるかもしれない、とは誰しも思うけど、なんの拍子に嘘が本当になるかも、とは思わない、というか、本当になってと祈ることはあるけれど。
つまり、この嘘は未来志向なんだな。過去に起こってしまったことを誤魔化すタイプの嘘ではない。いや、でも、先のことについて嘘をつく予言系のことを言う機会は中々ないかも。ほら吹き、なんてのはそうなのかな。
嘘をつくって、結構高度な精神の働きだと思うけど、なぜそんなことをするんだろう。そして、めっちゃ規制する。
でも擬態なんてものがあるくらいだから、人間に限ったわけじゃないのかなー。みな、騙し騙され。

竜(4) 芥川龍之介

朗読は、3分15秒過ぎからです。

https://stand.fm/episodes/65c817a61ed742a9f87af429

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