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文庫Xと「あれ」の話

盛岡のさわや書店で売られている、タイトルや作者、内容の一切が伏せられた「文庫X」が話題になっている。

お値段は810円。本としては決して安くはないが、店舗で2100冊も売れたそう。予約も7000件を超えているという。

このような売り方は以前天狼院書店もやっていたし、文庫本葉書もほぼ内容がわからないものを買う、という点では共通するから、そこまで目新しい手法ではないだろう。(担当書店員並びに書店の力には目を瞠る。すごい)

ただ一つ言えるのは、人は謎めいたものに興味を惹かれる生き物なんだなあということ。ネットで色々わかる時代だからこそ、余計にだろうか。

さて、次に「あれ」の話である。

浅草の中華料理店「あづま」には「あれ」というメニューがある。

壁に「焼き餃子」や「ラーメン」と貼られている中に「あれ」と書いてあったら、ちょっと気になってしまう。
料理が来るまでのワクワク感はたまらないだろうし、たとえ味覚が合わなかったとしても、話のネタになる。

「あれ、ちょーだい」って、ちょっと常連のわかってる感も醸し出せて気分いいし。

とはいえ「あづま」の「あれ」が成り立つのは、ある程度評価されたお店だからという気がする。(食べログ3.58点)

すっかり定着した「謎解きイベント」も人気コンテンツと絡めた方が集客できるだろうし、逆にテレビやゲームで「一切が謎」の新作が出ても、ヒットはしにくいだろうな、と思う。

そういう意味では、本ってすごい。
単体で完結し、安価だからこそ「一切が謎」でも売れる。

「文庫X」で、少しでも本の楽しさに気づく人が増えたら嬉しい。そして「あれ」を食べてみたい。






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