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ボブ・ディランとパン屋さん

スープストックトーキョーでスプーンを口に運んでいると、なじみのある曲が聴こえてきた。

ボブ・ディランの「like a rolling stone」。

今では大好きなこの歌も、社会人になるまでは全く知らなかった。

そもそもわたしの洋楽との出会いは遅く、高校を卒業してからだった。現在は洋邦問わずに聴くが、ラジオで流れるものを認識するくらいで、とてもライトに付き合っている(時期的に今はQueenが多くかかっている)。

さて、話をボブ・ディランに戻そう。
彼のことを初めて認識した場所は、なんとパン屋だ。

何年か前のある日、会社の近くにできたお店が気になって覗いてみた。感じの良いお姉さんが1人で切り盛りしていた小さな空間。

店内には同じ人の歌声が、絶えず響いており、声の主のポスターも飾られていた。
「好きなんですよ」とパンを袋に入れながら語ってくれた彼女は、とてもいい笑顔をしていた。

興味を惹かれ、ボブ・ディランのベスト盤を借りた。まとめて聴いたらどれもいい曲でびっくりした。こういう、知らない世界の扉が開いた時はいつも嬉しくなる。
自分だけで生きてるのではないなと実感する。

それから、そのパン屋でお昼を求めつつ、話をする日々が続いた。常に彼の声に包まれ、見守られながらの買い物は、楽しかった。

残念ながら、1年も経たずに会社が移転してしまい、それ以降はそこに立ち寄っていない。

曲を聴く時、ノーベル賞のニュースを知った時、いつもお店のことを思い出した。でも、すぐに他の思考に紛れ、やがて沈んでしまう。

今回、さすがにもう忘れたくなくてこのエッセイを書いた。そして本当に久しぶりに、パン屋の名前を検索してみた。そうしたら、

営業中

となっていて、本当にほっとした。相変わらずおいしそうなパンを作っているようだ。

また買いにいきたい。そして今でもボブ・ディランが流れているのか確認したい。もちろん風に吹かれて。










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