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ソール・ライターとミニマリスト

「肝心なのは、何を手に入れるかじゃなくて、何を捨てるかなんだ」

最近「ぼくたちに、もうモノは必要ない。」という本を読んでいる。物がない部屋を夢見ながら、なかなか果たせない自分を叱咤激励するために。

極端なミニマリストには憧れないが、この本は物がある生活、ない生活について深く掘り下げており、それゆえかなり納得して読み続けることができた。

さて、冒頭の引用文に戻ろう。なんだかいかにもミニマリストっぽいこの言葉、実は写真家のソール・ライターによるものである。

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リチャード・アヴェドン、マリオ・テスティーノ、ハーブ・リッツ……時代は異なれど、有名なファッション写真家は、華やかで魅力あふれる作品を残した。

それらに比べるとソール・ライターのファッション写真は些か地味である。
でも、そこが心地よい。

ファッションをきちんと見せつつ、遊び心もあり、でも落ち着いている。
これらが破綻なく矛盾なく同居する作品を撮れる彼を羨ましく思う人もいるだろう。特に今は。

そんな彼が捨てたのは、他ならぬファッション写真だった。「Harper's BAZAAR」や「VOGUE」の仕事を手放すなんて、超一流企業のサラリーマンを辞めるのより勿体無い気がする。

でもソール・ライターは絵を描き、大好きなモデルと時間を過ごし、猫と戯れ、地元の写真を撮ることを大事にした。

やはり彼はミニマリストかもしれない。なぜなら、前述の本では「大事なものが何かわかっていて、それ以外を減らす人」をそれと定義しているから。

読んだ本と見た展示が偶然つながる、不思議な体験だった。たいへん有意義である。

しかし図録を購入してしまい、さらにミニマリストから遠ざかってしまったことは、誠に遺憾である……。





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