没頭と俯瞰と(神保町編集交差点vol.6レポート)
神保町編集交差点vol.6「あのころのオレ」との戦い方
そんな長いタイトルのイベントに参加した。
今のところ編集者ではなく、「あのころのオレ」などという業績もない身だが、行ってよかった。
登壇者はライターの古賀史健さんと編集者の柿内芳文さん。
仕事終わりで30分ほど遅れて行ったときには、「優れた編集者の5条件」というスライドトークが展開されていた。
その5条件はこちら。
・原稿を受け取ったら1秒でも早く返信する
・ほめ言葉は感情的に、直しの指示は論理的に
・ほめることに照れない、直すことにおじけつかない
・答えではなく選択肢を提示する
・本を出した後のアフターフォローをきちんとする
ベストセラーとなった書籍「嫌われる勇気」出版の際、古賀さんが書き出しにこだわったのに対し、柿内さんはフィナーレ感が足りないと提示したという。
柿内さんは映画を幼い頃から浴びるように見ていて、終わりが大事であることを知っていたのだ。良い読後感は、口コミにつながる。売って終わりではなく、広がらせる。
そのことの重要性を、古賀さんは柿内さんから学んだという。
人とは違う視点の、有用な提案ができるひとは編集者に向いているかもしれない。
もうここまでだけでも、既に充実した内容のトークである。しかしこのイベントの魅力は、ただ真剣なのではなくて、脱線や行きつ戻りつが起こり笑いが満ちていたところにあった。とてもチャーミングな会だった。
料理の入門書を100冊購入して分析したり(!)、スーパーで目当てのものを探す時、必ず2人など複数の人に聞いたりする柿内さん。
自分にも他人にも日常的に取材し、質問するときは常に仮説を立てるという古賀さん。
そしてこの2人にいじられつつ、司会進行をしている今井さん。
ちょっとコントみたいで、いい関係性だった。
さて、このイベントでは「没頭と俯瞰」というキーワードが頻出していた。
没頭は、ディレクター、職人的。強さを作る。
俯瞰は、プロデューサー的。文脈を作る。
この2つの要素をどれくらい持っているか?偏っているのか、半々くらいなのか。
これは、各所で語られるオタク気質とヤンキー気質の話にも通じる気がしている。
古賀さんも柿内さんも、バランスは違えど両方を、しかも特濃タイプのものを持っている。
物事の共通点を考えたり、毎日書いたりして、絶えず没頭と俯瞰を繰り返すおふたり。その姿をほんの少しでも見習いたいと思う。
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