見出し画像

鳥が啼く

欠けたる月の 照らし夜に
りんと鳴きたる 鈴の虫
人が恋しと 嘆く声

待ち人 来たれと
呼ぶ声に
ざわりと答える 松の声

長の年月 待ち続け
恋し恋しや人心
思い余りて鳥となる

走りて抜けたる 者どもの
心苦しさ いかばかり
後を追いたる 里の声

星の明かりを 道連れに
五里六里と 杣の道
涙にくるる 秋の月

わらじを踏み替え 山下る
後に残せし 老寄りの
節くれだつ指 目に浮かぶ

山の裾にて 見えるのは
二度と戻らぬ 村明かり
恋し恋しと 虫が鳴く

聞くものもなき 山中で
切なき想い 鳥が哭く
恋し恋しや 人恋し・・・

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?