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ものすごい映像作品を見た話

いやまじでびっくりしました。感動しました。この興奮が冷めないうちに文章に残したくてこれを書いてます。

いや僕今ね、久しぶりに余裕のある夜だったんで、キャベツとタマネギを切って炒めて、それを白ごはんと一緒に食べながら、パソコンでアンメットの8話を観てたんですよ、で、ドキドキしたり心配したり感動したりキュンキュンしたりしながらエンディングまで見終えて、次回予告も見て、幸せな気分に浸ったままパソコンを閉じようとしました。

するとそのときです。パソコンの画面に、朝の光に包まれながら野菜を切る男性の、その手元の映像が流れ始めました。一瞬ドラマの続きかと思いましたが、シークバーの色で広告であることが分かりました。
しかし、広告だと分かってもなお、僕はパソコンを閉じることができませんでした。包丁が刻む一定のリズムに、なぜか心を奪われてしまったのです。何気ない日常のワンシーンがなぜか透き通るように美しく見えて、僕はその映像に紛れもない「幸福」が写っているように感じました。

そしてカットが変わり、その部屋で眠る女性の穏やかな寝顔が映し出されました。とても美しい顔立ちで、女優ののんさんかな?と僕は思いました。似てるけど別の人だと後で気づくのですが。少しすると彼女は目を覚まし、気づいた男性が優しく声をかける。力の抜けた自然な会話から、二人はおそらく同棲しているのだとわかります。

ここで一度画面が真っ黒になり
「行定勲 監督作品」
という文字が大きく映し出されます。その名前に見覚えがあった僕は、5分以上あるそのCMを最後まで見ることに決めました。

二人の会話と机の上の様子から、女性は翻訳の仕事をしていてその最中に眠ってしまっていたのだということが分かってきます。
「起こすかどうか迷ったけど、すごく幸せそうな顔してたからそのままにしておいたよ」
と男性。

「タイであれ食べた時ぐらい幸せそうな顔してたよ」
「そりゃあれ食べたら幸せな顔するでしょ」

見てる僕にはわからない「あれ」についての会話からは、2人がどれだけの時間を共にしてきたかを感じられます。ありふれた、愛に溢れたその映像を、僕はずっと夢中で見ていました。これどういう映画なんだろう、とちょっと疑問に思ったりもしていました。

そして男性は恐らく職場に向かうのでしょう、家を出て歩き始めます。彼曰く「世界一美味しい」朝食と共に家に残された女性は、大きく伸びをした後、傍らにメッセージカードと手のひらサイズの黒い箱が置かれていることに気づきます。カードに書かれていたのは「あなたの寝顔を見て今だと思いました。よかったら受け取ってください」との言葉。箱を開けるとそこにはダイヤの輝く結婚指輪。そこで画面が真っ白になり、ナレーションと共に文字が浮かび上がる。

「銀座ダイヤモンドシライシ」




えええええええええええええ!?!?!?!?

結婚指輪の会社のCM!?!?!?!?!?

映画の広告じゃないんかーーーーい!!!!!

「冒頭5分ノーカットで見せちゃいます」
じゃないんかーーーーーーーい!!!!!!!

映像、セリフ、演技、そのすべてが、単なるCMのクオリティを遥かに超越してたやないかーーーーーーーい!!!


いやほんとに、今年の映像作品で一番ぐらいの衝撃でした。もちろん「映画じゃないんかい」「会社のCMかい」という一発目の驚きも大きかったです。
でもそれ以上の感動が、徐々に僕を満たしていきます。この時代に、このCMが製作され放送されているのだという感動です。

情報とコンテンツが飽和して倍速視聴が当たり前になっている時代。
緻密さよりも何よりも一目見たときの分かりやすさが求められる時代。
資本主義の競争原理に飲み込まれて『時間の価値』が高騰した時代。

そんな時代に、なんですかこのけしからんCMは!!!!!!!5分間最後まで明かされない企業名!!過激なことが何も起こらないただの日常会話!!せめて笑いどころぐらい作れ!!!!時間がもったいない!!!!

もしも僕らの生きるこの時代が人格を持っていたら、多分そうやって激怒すると思います。それぐらい時代に逆行した作品。

ほんと感動しちゃいますよね。映像の力は、表現の力は、こんなにすごいんだぞって、誰もが知らぬ間に生き急いでしまうこの社会の流れに飲み込まれないんだぞって、人の心を本当に動かせちゃうんだぞって、忘れられないものが残るんだぞって、見せつけられた気がします。カッコ良すぎる。「5分間日常会話を流して最後に企業名を宣伝」っていうアイデアを実行に移すだけでも勇気と気概があってすごいのに、実際に僕をまんまと魅了してるわけですから。スキップボタンなんてその存在すら忘れちゃってたわけですから。いやまじですごいです。半端じゃない。1人でも多くの人に届いてほしい。


以上です。最後にそのCMを貼っておきます。本当にすごかった。ぜひ見てみてください。

※改めて見返すと、僕の描写は実際のCMと全然違う点もあったりします。ですが、僕が受けた印象と感動をなるべくそのまま文章にしたくて、僕の間違った記憶を間違ったまま書いてそのままにしてあります。どこがどれだけ間違ってるかはご自身でCMを見て確認してみてください。






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