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【note小説レビュー】村掟(花風先生)

 久々に「これは!」と思う短編とnoteで出会えたのでご紹介します。

村掟(花風先生)

村掟 あらすじ
 過疎化した村へ子のない夫婦が引っ越してきます。
 田舎ならではの面倒な人間関係はあるものの、まあまあいい人ばかりのようです。
 政府のプロジェクトで補助金も出ることですし、夫婦はここで暮らすことに決めます。
 しかし二人は徐々にこの村の何かがおかしいことに気付き始めます。村人の誰もが「ある人物」の話になると歯切れが悪いのです。


 いかにもホラー映画的なあらすじです。この手のジャンルが大好きなので冒頭の時点ですごくワクワクしました。

 陸の孤島めいた小さな村、一見すると何の変哲もないふつうの住人、しかし彼らが密かに共有している禁忌……
 物語が進むに連れて主人公の目を通し「この村は何かがおかしい」という不安感がじりじりと高まってくるのが最高でした。

 内容としてはセオリー通り、悪く言うとありきたりなんですが(偉そうなことをぬかしてごめんなさい)、ホラー映画で一番大事な「物語のスピード感」が早すぎず遅すぎず絶妙だと思いました。
 この手の田舎系ホラーですと外堀を埋めて恐怖の根源へとたどっていく流れが大事ですからね。

 さらに作者の文章がまたとても読みやすくリズミカルで、するする読めます。文章力が本当に高い! 聞き惚れるような流ちょうな語り口でした。

 ただ苦言というか個人的な趣味を言いますと、ラストがちょっと物足りず呆気なかったかな、と。

 アメリカのホラー映画大好きな小膳としては最終的に村人全員が敵となって夫婦の命がけの逃走劇となるのか、あるいは「ある人物」がモンスター化してサイレントヒル映画版のように村人全員を呪い殺すのかと期待していましたが、そういうことはありませんでした。

 特にマレビトの能面やら何やらまで出てきたのに、それらアイテムのこれといった出番がなかったのは残念でした。どこかで何か関わってくると思っていたんですが。

 ただまあこちらの「村掟」は私の好きな殺戮が見せ場のアメリカンホラーでなく、染み入るようにひしひしと怖いジャパニーズホラー系ですので、あくまで好みの問題だと思います。
 これはこれで良いと言うべきでしょう!

 しっかり面白い一作でした。オススメです!


 最後に小膳が大好きな田舎ホラー&殺戮劇の傑作、ガンニバルをオススメしておきます。


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