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「行き詰る」新規事業や Start-Up で起こっていること~正しい「壁打ち」で「企業価値」「事業価値」は10倍になる

こんにちは、TecchnoProducer株式会社 CEO/発明塾 塾長 の 楠浦(くすうら)です。今回は、新規事業における私の実体験、および、直近で支援しているいくつかの Start-Up での成果を紹介します。これらを通じて、発明塾が重視している「アイデアを(企画へ)育てる」という考え方、そのための「壁打ち」で行うべきこと、および、それらの「効果」について、皆さまのご理解を深めていきたく。

結論から言うと、正しい「壁打ち」を通じて、「欠けているパーツ」を埋めていけば、事業価値・企業価値(Start-Upの場合は、投資額)は、飛躍的に向上します。企業内発明塾で行う、情報分析、アイデア創出、それらをスジの良い企画への落とし込む、などの作業は、結局のところは「事業価値」「企業価値」の飛躍的向上のため、です。

まず最初に、「行き詰って」しまう新規事業や Start-Up について、何が起こっているのか、具体的にどのようなパターン(類型)に分かれるか、経験にもとづく私の考えをお話しして、その後、対応策として、結果が出たものを紹介します。

その前に、新規事業開発を担当されている役員の方、Start-Up の経営者、および、Start-Up に投資している心ある投資家の方々の課題意識を整理しておきます。


前置き)うまく行っていない「新規事業」や「Start-Up」に携わっている方の課題意識~私の経験から

以下で、「壁打ち」のお話をしておりますが、多くの新規事業担当の方や、Start-Up の経営者の方は、基本的に「孤独」です。相談すると情報が漏れてしまいますから、当たり前です。

「抽象化」して、知り合いに相談することも不可能ではないでしょうが、実際の課題は「具体的なところ」に潜んでいることがほとんどなので、抽象化した質問に対して、「一般論」のアドバイスをもらっても、役に立ちませんし、何も改善されません。

僕も実際、そうでしたし、今でもそうです。新規事業推進役の方や、スタートアップ経営者の方は、多くの場合、「人一倍、勉強熱心」ですから、一般論のアドバイスをもらっても、「そんなことは知っとるわ」となります。私も、契約がない状態でのアドバイスでは、具体的な情報をいただかないことにしており(後で必ずモメます)、そうなると一般論か、「参考になりそうな本の紹介」になります。

逆の立場で、私が誰かに相談する場合も、守秘義務契約なしで情報を出すことはあり得ませんし、守秘義務契約を負わせておいて無料というのは、後で契約の有効性に問題が生じる可能性があるので、適正な対価を設定することにしています。唯一あり得たのが、発明塾OBOGに、発明塾の今後をどうするかという視点で相談に乗ってもらう、というものでしたが、最近では「私が考えている以上に、OBOGが考えることはできない」という状況になっているため、この手は使えなくなっています。

これは当たり前で、上で述べた通り、「(根の深い)課題は具体的なところにある」のが通常なので、「現場の情報がない」OBOGには、私が考えていることが、全くわからないのです。仕方ありません。一緒に仕事をするか、同じレベルで仕事をしたことがある人に相談する以外の方法はありません。一応、16年ほど、スタートアップ、もしくは、ある程度の規模を目指す企業の経営者としてやってきた上での結論ですので、それなりに妥当性は高いと思っています。

新規事業 や Start-Up が、そうそう簡単には上手くいかないのには、それなりの理由があるのです。

「新規事業が、なかなか立ち上がらないけど、毎日何やってんの?」
「もっと積極的にPivot(ピボット)して、ブレイクスルーしてほしい」
「現状に甘んじず、大きなビジョンを描き、”飛躍”にチャレンジしてほしい」

周りはいろいろ言いますが、現場は見えないわけで、もっというと、「見せてはいけない」ことになっているのです。

ご参考までに、現時点での私の結論は

「異分野で、同じレベル(以上)で苦労した方で、まさに”今の時代”を生きている方」

にお越しいただく(相談する)のがベストだ、ということになっています。これまた探すのは大変ですが、これしかないと思っています。異分野でないと、競合してしまいますので、ここは外せませんし、そもそも、同じ分野の知識で解決できるなら、おそらく自分で解決できます。

「今の時代を生きている方」というのは、年齢の話ではなく、今も何か事業を必死で回しておられる方、という意味で、「あがっちゃった方ではない」という意味です。「他人ごと」や「一般論」になると、お互いに時間がもったいないので、「個別具体論」で「自分ごと」として考えていただける方に相談する、ということです。自分ごと、というのは、「仲間」になっていただく、という視点でよいでしょう。インセンティブの問題もあるでしょうし、メンタルな距離というか、そういうものもありますね。

なかなかそういう方は見つかりませんので、次点として

「ある分野のプロであり、かつ、私がやっていることに共感していただける方」

に、メンバーになっていただくことになります。普通に採用の話ですね(笑 人手が足りないから採用する、という話ではなく、「頭脳」が必要だから採用する、ということです。


「前置き」のサマリー

前置きにもかかわらず、そこそこ長くなりましたので、サマリーを書いておきます。

- 多くの新規事業担当推進役の方や、Start-Up の経営者の方は、情報管理の問題から、具体的な問題を相談できる相手がおらず、「孤独」である

- 実際の課題は「具体的なところ」に潜んでいることがほとんどなので、「抽象的」な質問をして、「一般論」のアドバイスをもらっても、役に立たない、そもそもそれぐらいのことは、勉強してよく理解している

- 「異分野で、同じレベル(以上)で苦労した方で、まさに”今の時代”を生きている方」にお越しいただく/相談するのが、ベスト


本論)「行き詰って」しまう新規事業や Start-Up で起きていること~経験上、ここで挙げる「2つのパターン」が多い

現場で起きていることは一つひとつ異なるのは承知の上で、私の経験をもとに、「よくあるパターン」を2つ抽出しました。

①「壮大なビジョン(かつ、一般論)」はあるが、「まずこれで儲ける」がない

②「当面は、これで儲かる」があるけど、「その先」がない

毎日のように、大中小問わず、企業の新規事業開発担当の方や役員の方、および、スタートアップのCEOの方や投資家の方から、いろいろな相談を受けます。上で書いた通り、具体的なご相談の内容は千差万別なのですが、極論すると、だいたい、上記2つのどちらかに分類できます。

ちなみに、前職のナノテクスタートアップで起きていたことは、①の方で、現職立ち上げてから5年ほどは、②が課題になっていました。両方経験して思うことは、

「まぁ、どちらかがあれば、大抵の人は起業してしまうし、両方揃うまで待ってたら、永久に何もできないよね」

です。何もしない、というリスクを避けるという点では、ご相談に来られる方々は、スタート地点に立っている、あるいは、スタートは切られている(こっちかな)ので

「全員、合格!」

なのだと思います。ですが、ゴールまでには、かなりの壁がある状況だ、ということも事実です。


①のパターン)「壮大なビジョン(かつ、一般論)」はあるが、「まずこれで儲ける」がない~「わらしべ長者」物語を考え抜き、最初にマネタイズできる製品/サービスを決める

前職の ナノテクStart-Up で起きていたのが、これです。当時開発を手掛けていた、「ナノインプリント」技術は、2000年に「世界を変える10大技術」に取りあげられ、世界中の企業がこぞって研究開発を進めていました。日本で、大口の資金調達をしてまで進めていたのは我々だけですが、世界では、老舗の電子ビーム描画装置メーカー(スウェーデン)と、60億円以上の資金を集めたスタートアップ(アメリカ)の2つが、巨大な壁になって立ちはだかっていました。逆に言えば、それだけ「可能性を秘めた」技術だと、認識されていたことになります。

前職立ちあげ時に掲げていた壮大なビジョンの一つに、「次世代の半導体で不可欠な技術になる」がありました。理由として、X線を使うリソグラフィーが必須になっているが、非常に高価な装置になることから、利用できる企業や用途は限られることを挙げていました。そこに、代替手段を提供する、という理屈です。理屈としては正しいのですが、「いつ」「だれが」「どの工程(用途)で」使い始めるかは、誰も具体的なイメージを持っていませんでした。もちろん、僕も持っていませんでした。

もう一つは、「一家に一台、ナノインプリント」という、さらに壮大なもの(笑)でした。しかし、これは必ずしも悪いことではなく、3Dプリンターは、試作用を含めれば、多くの製造系の企業に1台は導入されていますし、食品用のプリンターは、今後、小さなお菓子屋さんなどにも、導入されていくでしょう。

食品用のプリンターの話は、長くなるのでまた別途取り上げますが、例えば、「レオン自動機」の「包餡機」は、長い年月をかけ、町のお菓子屋さんに導入されていますので、同じことが起こると考えているだけです。信じられない、という方は、レオン自動機さんの特許を隅から隅まで読んで、取材に行けば、わかります。私の調査と取材の結果は、以下の動画で取りあげています。特許情報分析も、他の多くの情報分析と同様、「調査と取材」の繰り返しでしか、精度は上げられないと私は考えています。

第2回前半Part4 が、レオン自動機さんについて調査分析を行った部分です。全体の流れを無視して、レオン自動機さんのことだけを知りたい方は、ここだけで十分かと思います。

脱線しているようで、脱線していません。「壮大なビジョン」が、新規事業や Start-Up の資金調達において意味を持つのは、「その第一歩」が、どこでどう起こるか(起こりつつあるか)を、具体例で示せる場合だけです。

ここで、

それは経営者の仕事だ

とか

それが示されないので、そのビジョンには共感できません

とかいう人は、そもそも新規事業や Start-Up には向いてません。自分ならどう考えるか、「他の人が考えていないのはチャンス」だから、自分なりの答えを出して、問うてみよう、と思える人は、すごく向いています。

「だれもやってないから、自分がやる」
「だれも考えてないから、自分が考える」

というメンタリティーですね。これが常に徹底している人は、新規事業やStart-Upのために生まれてきた人です。あまり、見ませんけれど、、、。

私の場合は、「壮大なビジョン」は、まぁさておき、誰もアイデアがない「ノーアイデア」状態であるなら、自分で考えてさっさとやるか、ということで、

「ナノインプリントにおいて、最初に実現されるアプリケーションが何か、”自分だけの証拠”を掴もう」

と考えました。そこで出てきたのが「特許分析」(今でいう、IPランドスケープ)です。今日の主題は特許分析ではありませんので、委細は割愛しますが、その時の経緯は、以下に掲載している論文、eラーニング講座、動画講座で説明しています。

(論文)特許情報を用いた技術マーケティング

(eラーニング講座)開発テーマ企画・立案における特許情報分析の活用

(動画講座)「特許情報を用いた技術マーケティング」セミナー動画
(現在、申込みサイト準備中です、、、泣)

特許情報を徹底的に分析し、ヒアリングに行きまくった結果として、3つの有望なアプリケーションが見つかりました。「有望」の意味は

「直近(2-3年)に市場が立ち上がる」
「自分たちの技術力(世界の競合に比べれば、大したことない、相手の資本力は10倍以上)で対応可能である」
「ある仕様を満たせば、必ず顧客が買ってくれる」

の3つを満たす、という意味です。

「ケツに火が付いたスタートアップ」

が、必ず見つけないといけない新規事業(テーマ)です。もちろん、一部の中小企業や、一部の大企業でも、事情は同じかもしれません。

「有望な」テーマを見出すうえで重要なことは、「自分だけの」証拠であって、「有名なXXさんがこういうこと言ってます」「販売されている調査レポートに書いてありました」「いろいろ考えてみたら、論理的にはこれしかないと思います」というような、「一般論」ではないということです。

繰り返しですが、重要なのは、

「自分だけの具体論」

です。調査レポートなどは、そこへ行くための「きっかけ」「ヒント」でしかありません。「調べてもらったら、こうなりました」というのはグレーで、調べてもらった人が、「他の人が気づき得ないところ」(情報が出てこないところ)まで、深く掘り進めたかどうか、が重要になります。

企業内発明塾で、「エッジ情報」を見つけてからが勝負、とお話をしているのですが、実際には、最初は「見つけて安心」してしまう方が多いので、私がここで書いていることは、多くの方にとっては「実感を伴って理解するのが難しい」のだろうな、と感じています。

つまり、そこまで行けた人が、圧倒的に強い、ということです。

私の場合、見つけた3つのアプリケーションのうち、一つは「BtoB(顧客に製造装置を提供する)」で進め、一つは「BtoC(自社開発して、エンドユーザーに直接製品を販売する)」として事業企画を立案し、再度の資金調達(5億円程度)を行いました。

もう一つは、「やる人がいない」という理由で、お蔵入りにしました。非常に悔しかったのですが、任せた担当者が

「批判はするけど、進めない(文句は言うけど対案はない)」
「(採算性や売り上げ予測など)数字は計算するけど、具体的な進め方は考えない(考えられない)」

という状況だったので、やむを得ません。よい担当者がいなければ、どんなに良い企画、そして、「証拠が整った企画」であっても、前には進みません。企業内発明塾で「よい仲間と、よい議論」を重視している理由が、ここにあります。この段階で求められるのは、「数字の計算」や検証ではなく、「どう数字を創っていくか」という仕事なのですが、これが出来る人は非常に少ない、ということを、身をもって経験しました。

弊社のサービスは、すべて、実体験、多くの場合、「挫折と、そこからの復活経験」から生まれています。徹底した調査とヒアリングを積み上げ、血のにじむ努力の上に何とかたどりついた出した企画が、よい担当者が見つからず進まない、というのは非常に悔しかったですね。期待に応えてくれる人材を見つけて入れ替えるしかありませんでしたが、その前に、私が去ることになりました。2つの企画のうち、1つは、大手化学メーカーに事業売却されています。その企業は、その後、その製品を含む事業分野に大きく舵を切られているので、「事業構造改革」の一手として、高く評価いただけたのだろうと考えています。

私の仕事の多くは、こういった

「事業構造改革」
「ターンアラウンド」

のきっかけ、あるいは、決め手になっています。今ある事業(既存事業)を飛躍させる、というところでは、私(の経験)はお呼びではないようで、

「どん底から這い上がる」
「行き詰まりを打開する」

ところで、お役に立っているようです。あくまでも、実績と結果からの判断ですが、、、。

過去、「大手(外資)コンサルティング会社に依頼したが、全く成果が出なかった」というお客様のところで、新規事業テーマが継続的に創出される仕組み作りを担当したこともあります。かなり骨太なテーマがいくつも出るようになり、その企業さんのポテンシャルを感じました。やはり私は、「立て直し」向きなんだなぁと、その時も感じました。


「①のパターン」のサマリー

長くなったので、こちらもサマリーをつけておきます。

-「壮大なビジョン」はあるものの、「いつ」「だれが」「どの工程(用途)で」「どのような製品」を使い始めるか、誰も具体的なイメージを持っていないままに、進んでいるスタートアップは存在する(実際、存在した)

-「なんで、こんな大事なことを誰も考えてないんだ!」とか愚痴を言ったり批判をしても仕方がない、そんな暇があったら自分で考えて手柄をあげたほうが良いし、そのために自分は存在するのだと思う人が、新規事業やスタートアップに向いている

-「壮大なビジョン」の次に考えることはひとつ、それは、「XXXにおいて、最初に実現されるアプリケーションが何か、”自分だけの証拠”を掴もう」これだけ、これが出来れば、その瞬間にあなた中心で世界が回り始める

-「市販の調査レポート」「著名人のコメント」「論理的に考えた(だけの)結論」は、「自分だけの証拠」を掴むための素材でしかない、乗り越えて「他の人には見えていないもの」を見つけよう


②のパターン)「当面は、これで儲かる」があるけど、「その先」がない~「自分たちだけが、カギを持っている扉」を探し抜き、どんなに大変でも挑戦すると決める

こちらは、①とは逆のパターンで、「当面は食える」のだけれど、「その先に、ワクワクするような/世界に打って出られるような」世界が描き出せていない、というパターンです。ここで「描き出せていない」と言っているのは、「やってれば、そのうち見えてくる」という側面もあるため、「無い」のとは違う、ということが言いたいからです。モヤモヤっとしたものはあるけど、「明確化できていない」という場合もあります。この辺は、①で紹介した「証拠探し」に共通するものがあります。根拠がない「ビジョン」には、結局誰もついてきません。

自己資金や、少額の借り入れでやっている間は、「当面は食える」のであれば問題なく、「その先のワクワク」などは無くても済ませられます。一方、「ある程度の規模の投資」には、「その先」の話が必要になります。ここで、本来であれば、「その先」があるから、投資が必要になるんでしょ、というツッコミが出ると思います。その通りなのですが、「ある程度」にもいろいろあって、「その先」の描き出し方次第で、「投資額が10倍」になる可能性もあります。企業価値は「未来」「可能性」で決まるからです。

私の経験を振り返ると、「中途半端な状態の将来像」での資金調達を繰り返し、「何となく手詰まりになっていく」というスタートアップが、それなりに多い気がします。自社のポテンシャル/価値を「最大化」する、という視点から、「思い切った、スケールの大きな将来像(企画)」を出し、そこに向けて、「まず、こういうことをします(する必要があります)」「これが出来るのは、我々だけです」「なので、未来に一番乗りできます(独占できます)」のように整理するのがよいのでは、と考え、実際に、そうなるように、

「将来の大きなビジネスの絵(企画)」

を、アイデア段階から一緒に創っていきます。これが、私が実際に

「壁打ち」

で行うことです。近いところの打ち手を、次から次へと考え出して、食いつないでいく、というのは、スタートアップとしては最悪のシナリオなので、

自分たちだけが到達できる(自分たちが一番乗りできる)、未来の大きな土地

について、証拠を示しながら具体的なビジネスプラン(特にビジネスモデルの詳細)に落とし込み、投資家と共有する必要があります。それを、短くて3か月、長い場合は1年程度かけて、作り込んでいきます。

「こういう世界が、(自分たちがやらなくても)いずれ訪れる、どうせなら自分たちでやりたいし、そこに至る扉の鍵を持っているのは、今は自分たちだけだ(そして、その鍵を守り通せる自信がある)」

という宣言書を、数字やビジネスモデルの詳細とともに、誰もがわかる企画書としてまとめ上げる、そんな感じです。

スタートアップのCEOにとって、これは、今後10年20年の大航海を乗り切るための

「航海地図であり、羅針盤」

作りです。これをやらずして「サメがひしめく」荒海に乗り出しても、サメ(競合企業やら模倣者)に食い殺されて死ぬだけだと、私は、経験から実感しています。現職で、私も一度死にそうになりました(笑

ちょっとしたアプリを作って、1-2年で事業売却する、という事業モデルではない、10‐20年後に新たな業界を創るようなことを考えている(考えたい)スタートアップのCEOに、ここ数年で何名かお会いし、ご縁をいただくことができました。そういったCEOの方々には、私の経験を踏まえ、上記のような支援を、実際に日々行っています。
(起業に関する考え方は人それぞれですので、1‐2年で売却するモデルを否定するつもりはありません、また、そういうところで実績を作って、次のステップへ行こう、という方も周りにおられます)

企業内の新規事業であっても、「こういう面白い製品(サービス)を考えました」ではなく、「その後、どうなるのか(どうしたいのか)」を、10‐20年のスパンで考え、示していくことが重要だと、私は考えています。特に、「既存事業」からの脱却や、「新たな、会社の柱になる事業の構築」を求められている、という流れの中での新規事業の場合、

既存事業に代わりうる、骨太な事業としての可能性(発展性)があるのか」

という経営者の疑問に答える必要が、どこかで出てきます。

そういう難しいことは、後で考えればよい、という人もいます。それでもOKなのですが、私の場合、「どうせやるなら、最初に考えておきたい」という人なので、皆さんにも最初から考えていただきます。「将来の発展性」について、ある程度の確信が持てれば、取り組み方も変わってきますし、苦しい時の頑張りも変わってくる、と、私自身が日々感じているからです。

どんな事業にも苦しい時がありますし、他の人が「苦しいからと言ってあきらめる」ところを乗り切れる「何か」があるから、勝てるわけです。その「何か」は、どんな小さなものであってもよいし、多い方がよい、というのが、これまた私の実感です。「他の人があきらめる理由」が、自分にとって存在しないとき、事業の成功確率が高まる、というのが発明塾の考え方です。

表現を変えると、「他の人は、これであきらめるんだろうな」というのが見えていれば、勝てるよね、と考えており、いつもそういうお話をしています。私自身が手掛けた事業や研究開発において、自分たちがあきらめたことも、競合があきらめていったことも、数多く経験しました。そこから来る、経験論ですが、突き詰めて考えれば、結局そうなるのかなという気もしています。「経験」にもとづいて、「徹底的に考え抜いた」上での結論であり、支援先で「実践」いただき、「よい成果が出ている」ものでもあります。

繰り返します。「他の人があきらめる理由」が分かれば、勝ち筋が見えます。大切なことは、「同じところであきらめる」という愚を犯さない、ただそれだけです。


「②のパターン」のサマリー

長くなったので、こちらもサマリーをつけておきます。

「当面は食える」のだけれど、「その先に、ワクワクするような/世界に打って出られるような」世界が描き出せていないために、「中途半端な状態の将来像」での資金調達を繰り返し、「何となく手詰まりになっていく」 Start-Up がある
モヤモヤっとしたものはあるけど、「明確化できていない」という場合もある)

- 上記から抜け出すには、自社のポテンシャル/価値を「最大化」する、という視点から、「思い切った、スケールの大きな将来像(企画)」を出し、そこに向けて、「まず、こういうことをします(する必要があります)」「これが出来るのは、我々だけです」「なので、未来に一番乗りできます(独占できます)」のように整理するのがよい

- 「自分たちだけが到達できる(自分たちが一番乗りできる)、未来の大きな土地」を示し、そこに至る扉の鍵を持っているのは自分たちだけだ、という宣言書を、数字やビジネスモデルの詳細とともに、誰もがわかる企画書としてまとめ上げよう

- 上記は、スタートアップのCEOにとって、これは、今後10年20年の大航海を乗り切るための「航海地図であり、羅針盤」作りであり、これをやらずして「サメがひしめく」荒海に乗り出しても、食い殺されて死ぬだけ

企業内の新規事業であっても、その後、どうなるのか(どうしたいのか)」を、10‐20年のスパンで考え、示していくことが重要で、特に、「既存事業」からの脱却や、「新たな、会社の柱になる事業の構築」を求められている場合、「既存事業に代わりうる、骨太な事業としての可能性(発展性)があるのか」という経営者の疑問に答える必要がある

「他の人があきらめる理由」が分かれば、勝ち筋が見える、「同じところであきらめる」という愚を犯さないように


まとめ

私の個人的経験から、新規事業開発担当者、Start-Up の CEO、あるいは、Start-Up を支援している投資家が、なんとなく「行き詰まり」を感じる理由を明確にすると、多くの場合、以下の2つのいずれかになると、考えています。

①「壮大なビジョン(かつ、一般論)」はあるが、「まずこれで儲ける」がない
②「当面は、これで儲かる」があるけど、「その先」がない

これが起業家体質なのでしょうか、ビジョンか当面の食い扶持のどちらかがあれば、「エイヤ!」で起業してしまう人が多いので、ある程度やむを得ないのかな、という気もします。何も始めないよりはマシなんだろう、と、最近思うようになりました。

対処策は、発明塾的には明確です。数多くの支援実績もあり、処方箋ができています。実行するのは、大変と言えば大変ですが、大変なことが嫌なら起業や新規事業はやめておけばよいので、やると決めたら、これぐらいのことはできるでしょう、という感じです。どんなに時間がかかっても、それでもやりたい、と思える企画を作る、というのが私の考えです。

①の「まず、これで儲ける」が無いパターンの場合、「小さいが独占」が可能な「顧客課題」(市場)を見つけ、すぐに使ってもらえる(そして、すぐに作れる)製品を作る必要があります。この場合、発明塾/企業内発明塾では、「課題解決思考(1)」の考え方と手法を使います。一番の「強み」を用いて、「独占的に解決が可能な課題」を探す、というものです。

②の「その先」が無いパターンの場合、「その先」に起こりうること、起こしうることについて、「課題解決思考(1)」の考え方と手法を用いつつ、「壁打ち」を通じて、徹底的に議論します。「どんなに困難であろうとも、それはやり遂げたい」と思う「未来の設計図」(青写真:BluePrint)を描き出す必要があるからです。同時に、それができるのは、自分たちだけだ、という条件を満たす必要があり、可能性を広く探りつつも、「深く、狭く」突き詰めて、他の人が考えつかないレベルまで考えていく必要があります。

上記は、特にスタートアップには不可欠なことですが、企業内の「新規事業テーマの企画立案」でも、原理原則は同様であると考えています。したがって、以下、新規事業や新規研究開発テーマ創出支援の「企業内発明塾」サービスでも、同様の検討と議論を行っています。既に多くの方が、企業内でこのプログラムを卒業され、新規事業や新たなテーマでの研究開発へ、踏み出されています。私の目から見ても、非常に画期的で、「死角的(言われてみれば、そこがあったか!)」なものが、最近、特に多数出ております。また、分野を問わず、そういう状況になっていることから、私の考え方と手法は、それなりに普遍性があるものだ、という実感を持っています。

スタートアップの場合は、資金調達に向けた緊急度や技術内容など、個別に事情をよく伺ってから進めるようにしています。きちんと検討すれば、資金調達額が10倍になる可能性もありますが、当座の資金が足りない場合は、あまり悠長に検討ができません、ここはトレードオフです。詳細は、以下よりお問い合わせください。まずは、秘密情報ではない範囲のお話しだけを、ご記入ください。企業内の新規事業開発についても、以下からお問い合わせを承ります。

その他、ここに記載した内容に関するご質問なども、上記からお寄せください。

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楠浦 拝


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