【洋服屋の自分史③】たかが洋服であっても、その人にとってはかけがえのないものがある。パンツ編

トラディショナルなファッションが大好きな私ですが、そのこだわりは行き過ぎるとオタクぽくなってしまいます。

そうなるとお洒落からは遠のき、ただのトラッドおじさんみたく、まわりから「ファッションが好きなんだろうけどなんか違う」と言われるパターンに陥ります。一般の人にもよくありがちですが。

元来、トリッキーなもの、アバンギャルドなものも嫌いではなかったので、幸運にもそのパターンに陥ることはなかったです。しかし、トラッド好きの固い頭を柔らかくしてくれた服の出会いがなければ、幅の広いファッション提案などできないアパレル人になったのは間違いありません。

前置きが長くなりましたが、今回は私の洋服人生に大きな影響を与えた変わりものを紹介します。

junhashimo black easy wool pants

これは、10年以上前に福岡で購入しました。なんとまったく同じものを2本。試着した時にあまりの感動に滅多にない衝動買いをした覚えがあります。

junhashimoは今ではメジャーになりましたが、当時はそれほどでもなく、その店がどのような経路で仕入れたか分かりませんが、破格の赤札がついていたように記憶しています。

デザイナーの橋本さんは、徳島のセレクトショップでバイヤーをした後、イタリアに渡りその後自分のブランドを立ち上げています。シルエットにこだわりがあり、体型をスタイリッシュにみせることが上手なデザイナーです。

得意なスタイルはアーミーカジュアル。有名なのはリンクルシャツ。芸能人もこぞって着用し一時期ブームとなりました。個人的にはあまり好きではありませんが。

私が惹かれて購入し、10年以上愛用しているこのパンツの生地は細番手のウールツイル。色は深い黒でツヤがあり、タキシードパンツのごとく側章が施されています。また、ウエスト後ろ部分はゴム仕様でリラックスして着用できるようなっています。シルエットはややブーツカット気味。なぜかスタイリッシュに見える絶妙なパターンです。

ダラダラと説明しましたが、フォーマルなディテールと素材にカジュアルな仕上げをミックスした点が面白い。最近は増えましたが、塩梅が秀逸です。

本当に2本買って良かった!

コーディネートは、ゲンズブールが好んだrepettoなどの小ぶりなバレーシューズやローテクスニーカーなどが気分です。トップスはミリタリージャケットやウールカットソーあたりを合わせることが多かったです。ちょっとフレンチテイストにするのが気に入ったスタイルです。

いずれにしろ、ガチガチのトラッドとは違う雰囲気を演出するには、ベストアイテムです。そのおかげで随分モードなスタイルにも関心が強まり、今に至ります。これからもずっと愛用し続けると思います。

橋本淳さん ありがとう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?