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鉄道インフラの整備(Development of Railways)

 2024年3月16日に北陸新幹線が金沢から福井・敦賀まで延伸されて開業しました。これまでに新幹線が建設された地方は、新幹線の開業を歓迎してきました。新幹線が通った地方では、地元に伝わる伝統文化を多くの人に知ってもらういい機会として、地元の方たちは大変な努力をされています。確かに、新幹線は地方を元気にしてきましたが、時がたつと地方の衰退化に拍車をかけてきたように思われます。
新幹線を利用して地方を訪れる方は、仕事で出張される方もありますが、日頃の緊張した都会生活を離れて地方の景色や食事などを楽しむために利用される方も少なくありません。彼らは非日常を楽しんで心身をリフレッシュすると、新幹線で都会へ戻っていきます。新幹線は仕事も余暇も含めて、都会に住む人たちの生活を便利にしているのです。
新幹線が通った地方の方が都会に用事があるときは、新幹線が利用できますから、地方の生活を便利にしてきたともいえます。しかし、新幹線が通ったおかげで、地方が元気になったという話は聞きません。新幹線が開通したとき、一時、地方は活性化しますが長続きしないようです。理由の一つとして考えられるのは、新幹線は人の移動を便利にしましたが、地方の文化を育てることはしてこなかったことです。
地方の伝統文化を生かすためには、地方の文化を育てる人を増やさなければなりません。地方に新しい文化を届け、伝統文化を守り育てる人を増やさなければ、若い人が減って地方は衰退していきます。
人口が減少する社会にあっても未だに多くの人が首都圏に住むことを選択し、地方へ行く用事があるときに新幹線を利用しています。首都圏には仕事があり新しい文化を享受することができるので、今も人が集まり続け首都圏の一極集中が収まりません。地方に仕事があって文化的な生活ができるとしたら、新幹線とICTを活用することで首都圏に住む理由はありません。
文化的な生活とは、子育てができ教育環境が整っていて食事や余暇を楽しむ場所があることです。シニア世代が暮らせる介護施設や医療が充実していることも重要な条件になります。災害避難の住民に必要な諸設備が準備されていることは当然です。
大都会に住む人たちが新幹線を利用するのは帰省、出張、旅行などの短期利用です。故郷で地元の特徴を生かしつつ文化的な生活ができるとしたら、都会に住まなくてはならない理由はありません。若者は新幹線で都会の事務所へ出社することができますし、地方に住んでも都会に行く用事があるときは、新幹線が利用できるからです。
最近は在来線が地方の過疎化によって存続の危機に立たされています。1日の乗客が1,000人以下の鉄道の支線は全国に61路線あります。鉄道支線網の多くは利用客の減少のためにすでに廃線になったり、廃線の検討対象になったりしています。鉄道が廃線になると訪れる人が極端に減って地域の衰退はさらに進みます。
地方を結ぶ鉄道網はヒト、モノ、情報を運ぶ地域の重要な基礎的インフラでした。鉄道は都会から地方へ新しい文化を運び、地域の伝統文化を支えていました。鉄道が地方へ文化を運び、支え、育てる役をしていたのです。
利用客の減少のほか水害などの被害を受けて復旧ができていない路線もあります。地域に必要な鉄道ですが、諸般の事情(復旧費用など)で復旧には至っていません。鉄道網全体が存続の危機に立たされているのです。
全国をカバーしている鉄道網は日本が誇る貴重なインフラです。地方の文化程度を上げて住む人を増やせば、鉄道支線網ほど役に立つ施設はありません。在来の鉄道網は役割を終えようとしているわけではないのです。鉄道を存続させるためには、沿線に住む人を増やすことと訪れる人を増やす必要があります。
伝統的な文化は後継者不足で存続の危機にある地方が少なくありません。沿線に住む人を増やすためには、地域の文化を育てなければいけません。地域に必要な文化とは、伝統文化と新しい文化です。首都圏の文化的な一極集中が地方の衰退を招いているのです。人口が減少する中で、地方の衰退を止めて首都圏の一極集中を是正する解決策は、地方の伝統的な文化を守ることと新しい文化を育てることです。
地方に仕事があって子育てができて教育環境が整っていることに加えて、高齢者が田舎の時間で生活できるとしたら、都会に住む必要はなくなります。地方の伝統文化を支える人たちと共に、職人の下で修業しながらウデを磨く若者たちの生活を支えて、地方に定住することが魅力となるような施策が必要なのです。
若者には余暇を過ごせる場所が、年配者には昼間にゆっくりする場所が必要です。食事が楽しめるレストランや、ゆっくりできるコーヒーショップなど人が集まる場所は生活を豊かにします。地域に人が集まれば、来る人が楽しめる地域の文化が盛り上がります。地域が盛り上がれば、伝統文化が守られて新しい文化が育ちます。文化が育てば人が集まります。ヨーロッパの田舎町で若者がはつらつと生活して、年配者が元気に暮らしている様子は参考になります。
鶏が先か卵が先か、というような話かもしれませんが、地方に仕事があれば人が集まります。人が集まれば文化ができます。文化があれば人が集まります。最近、たくさんの若者が地方の町おこし活動をしていることには勇気づけられます。
在来線が危機に面している中で、新幹線は1973年の整備計画に基づいて今も建設が続いています。リニア新幹線も建設中です。日本が先進国として発展し続けていくならば、日本の誇りである地方の文化をどのように支え育てていくかを具体的に検討する時期に来ています。

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