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【詩】『ぼくの真珠 きみの鱗』

ぼくの

ぼくの

ぼくの

ぼくの

宝物


ぼくの

ぼくの

ぼくの

ぼくの

宝物


君の

君の

君の

君の


君の鱗を

1枚盗んだ

君の鱗は

虹色に光って

とてもきれいだから


君の鱗は

つるつる すべすべ

気持ちいい


君の鱗を

ぼくは食べた


どうしてだろう?

髪が伸びなくなった

どうしてだろう?

爪も背も伸びない

どうしてだろう?

みんなみんなぼくをおいて

死んでゆく


これは君の呪い?

君の鱗を盗んだからなの?

あれから君とは

会っていない

君の鱗は

ミルク飴のように 美味しかったよ


甘い 甘い 匂いがした

とても とても いい匂い

舐めてみたら

しゅわっと溶けて美味しかった

ぼくはついそれを

飲み込んだ


ぼくの

ぼくの

ぼくの

ぼくの

命は


永く

永く

永く

永く

生きすぎて


なんだか

なんだか

いつも

眠いよ


君が居た洞窟

君はあれから居なくなった

君はどこへ

行ってしまったの?

謝るから 謝るから

ぼくの 命を 返して

返して


ミルク飴のような君の鱗

あの味が忘れられない

永遠の命のぼくも

あんな味なの? 


何百年経っただろう

この世界もずいぶん様変わりした

ぼくだけが変わらない

なにも変わらない

身体も 心も 子供のまんまで

息をしているのかも わからない


ぼくは海へ行った

たくさん落ちてる貝殻の螺鈿が

君の鱗にそっくりで

次々 次々 次々 食べたんだ

ぼくは海へ行った

君に会って謝りたかった

許してほしかった 許してほしかった


貝殻はぼくの口を 喉を 胃を 傷つける

ぼくの中では きれいな真珠が作られる

それを吐いて 吐いて 吐いて 吐いて

またそれを食べたら

なんだか少し 楽になった


この永い命を

ぼくは持て余して

たくさんのことを知りすぎて

ぼくは心を失った


どうして君の鱗には

こんな呪いが込められているの?

君の鱗を盗んだぼくを

そんなに苦しめたかったの?


貝殻を食べ 螺鈿色の真珠を吐く

君の鱗と よく似ているよ

真珠を食べ また吐いて 食べて

喉に詰まらせて

息が できない


息ができないことは

最初は苦しいけれど

ずっと意識を失えるなら

悪くないと思えた

だけどそんなことすら

君は許してくれなくて

君はぼくの喉から 真珠を取り出し

それを それを それを

食べた


ぼくの真珠 ぼくの真珠

それを食べた君は

「おいしい」と言って

優しく笑った


ごめんなさい ごめんなさい

あんなことしてごめんなさい

どうか どうか 許して

早く 僕の命を 返して


君は 優しく微笑んで

鱗を何枚も剥がして ぼくの口へ

押し込んで 押し込んで

飲み込ませた


それは甘いミルクの味

君の血と肉も

きっと美味しい


ぼくの真珠はどんな味がしたの?

それを食べた君の身体は

だんだんと人に近づいた


ぼくの身体からは鱗が生え

エラが 背びれが 尾びれが

どんどんと できてゆく


ぼくが真珠を吐くのを

君は待っていたんだね

ぼくが君になるのを

望んでいたんだね


ぼくが君になって

君はぼくになって

どうしてか それは

悪い気はしなくて…


君になったぼくは

自分の鱗を剥がして食べた

なぜかミルクの味はしなくて

あの真珠の味に似ていた


君の鱗よ

君の血肉よ

甘い 甘い 君の身体よ


君の命が尽きる頃また会おう

ぼくの鱗を食べてもいいから

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