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ゆったりと冬を迎えたいよ

松本駅前にある大きな書店で何冊か新刊本を買って、その隣にある喫煙のできる小さな喫茶店で午後を過ごしている。野菜のサンドイッチとブレンドコーヒーを注文。キュウリを刻む心地よい音が聞こえてきて、それからしばらくして飾り気はないけれど手作りのおいしいサンドイッチが届いた。素朴な味わいに心が安らいで、ほっとため息をつく。コーヒーは酸味があって飲みやすかった。

最果タヒさんの新刊が読めるのでワクワクしてます

冬の気配がする地方都市の雰囲気は好きだ。紅葉もそろそろ見ごろを過ぎて、街行く人たちもあったかそうな上着を着て忙しなく歩いている。どこかのお店からピザを焼く匂いが届いて、カラスはビルの隙間を気持ち良さそうに飛んでいる。夕方がずーっと続いてくれるような感じがして、僕は嬉しくなる。

今日は趣向を変えてレディースのブラウスに真っ黒なカーディガンを羽織り、吸血鬼の見習いみたいな格好で過ごしている。駅前の商業施設にはハロウィンの人工カボチャが規則的に並べられていて、なんだか僕もコスプレに参加しているような気分になる。ちょっとくらい変な格好をしたって街では目立たないから、僕はハロウィン、というかハロウィンにかこつけた街の浮ついた感じが好きなんだと思う。

僕のきらいな街渋谷では、例年の騒動からついにハチ公広場が閉鎖されたと聞いている。若者が年に一回どんちゃん騒ぎしてちょっとトラックをひっくり返したぐらいで過剰だなと思ってしまう。街行く人々はいつだって行政の言うことなんか聞かないし、「渋谷はハロウィーンの会場ではありません」と渋谷区ごときが決めるのはちゃんちゃらおかしな話だと思う。まあ、きらいな街なので勝手に壊れてくれとは思うけれど。

来月から仕事の担当範囲が2倍以上になって、これまでのようにのんびりと過ごすわけにはいかなくなるからかなしい。それでも秋はできるだけたっぷりと楽しんで冬を迎えたいね。昨日電話してくれたひとが「君は今冬眠するべきなんだよ、来るべき時に備えてじっと待つ時なんだ」っていってくれたことがすごく助かっている。2杯目のコーヒーを注文して、窓辺からもう少し街を眺めてみようかな。それではまた。

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