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高村光太郎『道程』がグッときた 魂の叫びは人の心を震わせる

彫刻家で詩人でもある高村光太郎の詩を読んでたらぐっと来たのでこの感情を書き残しておこう。道程(どうてい)、童貞じゃないですよ。童貞は僕です。どうでもいい話は捨て置いて、この詩をぜひ読んでほしい。

この詩は自らの人生を振り返り、自然から受けるインスピレーションとこれからの人生を鼓舞するような内容の詩。

『どこかに通じてる大道を僕は歩いてゐるのぢやない
僕の前に道はない
僕の後ろに道は出來る
道は僕のふみしだいて來た足あとだ』

すごいグッとくる一節から始まります。用意され、舗装された道を歩むのが人生じゃない、何もわからない場所をもがきながら進んでいくことこそ、人生であり、後ろにしか道はできないと。

『道の最端にいつでも僕は立つてゐる
何といふ曲りくねり
迷ひまよつた道だらう
自墮落に消え滅びかけたあの道
絶望に閉ぢ込められたあの道
幼い苦惱にもみつぶされたあの道
ふり返つてみると
自分の道は戰慄に値ひする
四離滅裂な
又むざんな此の光景を見て
誰がこれを
生命いのちの道と信ずるだらう』

自分の人生にも刺さりまくります。大人たちが提示する舗装された安全な道、つまり塾に通って、いい高校、大学、いい会社に行く。僕はそこから脱落し、自分を見失い、絶望に突き落とされましたよ。振り返ればそんなものクソ食らえだったなと。自分で考え、自分にとっての幸せ、人生を追求すること、それこそが正しい道だったのに。

『さめよ、さめよと叫んだのは自然だ
これこそ嚴格な父の愛だ
子供になり切つたありがたさを僕はしみじみと思つた
どんな時にも自然の手を離さなかつた僕は
とうとう自分をつかまへたのだ
恰度そのとき事態は一變した
俄かに眼前にあるものは光りを放射し
空も地面も沸く樣に動き出した』

高村光太郎は迷いながら、自然の美しさや厳しさの中にその答えを導きだしたのでしょう。人によって人生の答えは千差万別で、幸せの形も人それぞれです。そうして生きる意味を見出した時、そこから本当の人生が始まる。高村光太郎は大いなる自然を父に見立て、父の声に従い道を進んでいく。

人類の道程は遠い
そして其の大道はない
自然の子供等が全身の力で拓いて行かねばならないのだ
歩け、歩け
どんなものが出て來ても乘り越して歩け
この光り輝やく風景の中に踏み込んでゆけ
僕の前に道はない
僕の後ろに道は出來る
ああ、父よ
僕を一人立ちにさせた父よ
僕から目を離さないで守る事をせよ
常に父の氣魄を僕に充たせよ
この遠い道程の爲め

こういう魂の叫びというか血が通ったメッセージって心が奮い立ちます。上辺だけの綺麗ごとを並べ立てたものとは全く違う。普遍的であり、色んな人の背中を押す詩だなと思います。

昨日書いたエミネムの記事でも言及したけど、最近の綺麗ごとばっか、上辺ばかり取り繕われたものが氾濫してることに辟易してるんすよ。カラフルで綺麗なパッケージだけど中身はなんもねえみたいな。

これまでの人生で幾度となく嘘に惑わされ、道を誤ってきたことか。この世の真理を教えてくれ、魂の叫びを聞かせてくれと願う常日頃です。高村光太郎の『道程』を抜粋しながら紹介しました。全文読んでもそんな長くないのでぜひ調べてみてください。


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