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杉野 真理恵「ライフ・イズ・ビューティフル」

1.結婚式を支える仕事

数年前、大学の同級生の結婚式に出席した。

彼は晩婚だったけれど、とても良い式だったことを思い出す。

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そのとき初めて紹介してもらった彼の奥さんも、優しそうな女性で、いまでは娘も誕生し、年賀状で届く家族の成長を僕は毎年楽しみにしている。

彼は決して輪の中心にいるような男じゃなかったけれど、あのとき、彼は間違いなく輝いていた。

そんな人生の晴れ舞台である結婚式を、裏方として支え続けるのが、ウエディングプランナーという職業だ。

今日ご紹介する杉野真理恵さんも、ウエディングプランナーとして活躍を続けている。


2.父を追いかけ、銀行員へ

杉野さんは、1980年に茨城県でひとりっ子として生まれた。

高校は、茨城県牛久市にある私立高等学校へ進学。

家から高校まで片道1時間ほどかけて通っていたため、部活には所属せず、近所のケーキ店などでのアルバイトに精を出した。

高校を卒業したあとは、父が銀行員をしていたこともあり、以前から興味を抱いていた経営を学ぶため、東洋大学経営学部の会計ファイナンス学科に入学した。

学業とアルバイトを並行してこなしつつ、自分の視野を広げるために、イタリアやフランス、ドイツやチェコ、タイやシンガポール、香港、マカコ、オーストラリア、ハワイなどを知人たちと頻繁に海外旅行へでかけた。

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「社会人になったいまでも、ひとり旅をよくしています。ヨーロッパの街並みがすごく好きで、なかでもマルタ共和国は大好きです。地中海に浮かぶ小さな島国なんですが、街全体が世界遺産になっているほど、どこを切り取っても絵になる美しさなんですよ」

大学卒業後は、父のあとを追うように地元の銀行へ就職した。

「テラー」と呼ばれる顧客の応対を直接行う窓口事務をこなしていたが、2年半で退職。


3.人と接する仕事に就きたい

「退職するとき、両親はがっかりしたと思いますよ。銀行の仕事も素敵だったんですが、お客様と一対一で応対できる時間が短いんです。働いているうちに、もっと人と接する仕事に就きたいと思うようになりました。もともと、サプライズで友だちの誕生日会を企画するなど、学生時代から人を喜ばせることが好きだったんです。就職活動をしていくなかで、さまざまな仕事を知る機会があり、誰かのために全力で企画をつくりあげていくブライダルの仕事に惹かれていきました」

しかし、ブライダル業界は他業種に比べて早い時期に採用活動が行なわれる上に、当時は就職氷河期だったこともあり、新卒では採用してもらうことができなかった。

そこで、銀行を退職後に再挑戦し、都内に本社があるブライダル会社へ転職。

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ウエディングプランナーとして、結婚式や披露宴のトータルコーディネートを行っている。

式当日までに衣装や料理、装花、ウエディングケーキ、引き出物、挙式スタイルなど、新郎新婦が決めなければならないことは数多くある。それをサポートするのが杉野さんの役目だ。

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「2人がどんな人生を歩んできたのか、なぜ結婚式をあげたいのかなど、じっくりお話を伺っていきます。人と違った結婚式を挙げたいという要望も多いんですが、いままでどんな式を見てこられて、どんな式にしたいのかなど、優先順位を付けて、できる限り要望を受け止めるようにしています。自分たちでも気づかなかった真意を引き出していくことで、人生の一部である結婚式が最高のものになるように、一緒に考えていくんです」


4.ウェディングプランナーという仕事

これまで6年間働いてきたなかで、200組を超えるカップルを杉野さんは送り出してきた。

結婚式までの約半年、長い人であれば1年間を、2人の希望に沿ったイベントにつくりあげていくその仕事は、やりがいも大きい。

しかしその反面、「絶対に失敗は許されない」とう大きな重圧も感じてしまう仕事だ。

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「私の伝達によっては、別のものが発注されてしまう可能性もあるので、常に最新の注意を払うようにしています。何百組と担当してきましたが、式当日の朝は、やっぱり緊張しますよ。2人にとっては、一生に一度のイベントですから。営業の仕事違って、お客さんが担当者を選ぶことはできないから、絶対に後悔はさせないように努力しています」

仕事をやり遂げたあとは、2人や親族から感謝の言葉を掛けられることもある。

そのときが、一番嬉しい瞬間だという。

また、数年後に記念日などの食事を兼ねて杉野さんの元を訪れてくれる夫婦も多いそうだ。

「私が店舗を異動するときは、当時担当させていただいていた夫婦が私の顔を見に店に来てくれたこともありました。顔を見た途端に泣き出しちゃって。そんな姿を見ると、この仕事に携わることができて良かったなと実感します。いま思い返せば、私は祖父母や両親からたくさんの愛情を受けて育てられたんです。だから、今度は私が恩返しというわけじゃないですが、人が幸せになるお手伝いをしたいと考えています。他人の人生に深く関わることができるなんて、とても幸せだと思っていますよ」

ただ、ウエディングプランナーの仕事は、土日の休みが取りづらかったり、繁忙期には勤務時間が長くなってしまったり、少しのミスが大きなクレームへと発展する可能性も秘めている。

女性が多い職場であるがゆえに、女性としての幸せと天秤にかけた結果、結婚後に去っていく人も多い。

杉野さんも、「このまま、この業界に居続けてよいのか」と頭を過ることがあるようだ。

他者の人生を支え続けてきた杉野さんにとって、いまは漠然としているが、「いつかは子どもの教育にも関わってみたい」と教えてくれた。

僕らが想像している以上に、ウエディングプランナーという仕事は激務のようだが、やり遂げたあとの達成感は格別のものなんだろう。

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これだけインターネットが普及した現在、検索すれば僕らは何でも知ることができる。

ときには、顧客のほうがプランナーよりも詳しいなんてこともあるかも知れない。

そうなったとき、これからのプランナーに求められるのは、単なるプランニングの能力だけでなく、ストーリーをつくりあげていく力だ。


5.結婚式の大切さ

「人生において自分が主役になれるのは3度ある」と言われている。

1度目は生まれたとき、2度目が結婚式、3度目はお葬式だ。

生まれたときを覚えている人はいないし、亡くなったあとの様子をうかがい知ることはできない。

だからこそ、なおさら結婚式の重要性が際立ってくる。

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結婚式とは、カップルにとって儀式的な行為ではない。

2人にとっての、門出となるはじまりの日なのだ。

それを皆でお祝いする。

そこに立ち会い、2人を支え、これまでの人生を演出する人がいる。

人が幸せの絶頂にいる瞬間に立ち会える杉野さんは、なんて羨ましいんだろう。

近年、結婚式を挙げない人たちも増えているなかで、僕は杉野さんの仕事を通じて、改めて結婚式の意義を考えさせられた。

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「私は、もちろん結婚式は挙げたいです。でも、自分たちが主役というより、これまでの感謝の気持を伝える場にしたいと思っていますね。ここまで色々携わってきたから、逆にシンプルな式でも良いかなと思ってますけどね」

百選練磨をくぐり抜けてきた人が、いったいどんな式を挙げるのか、こっそり参列してみたい気もする。

そして、これから杉野さんはどんな人のどんな人生を美しく紡ぎ出していくのだろうか。

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