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10年後の手紙

その会社はたくさんの社員がいた時期もありましたが、
今は社長と奥さんの2人しかいません。
次第に業績が悪くなり給料が払えなくなってしまったからです。

「ごめん。今月も厳しいから給料はもう少し待ってくれ」

ないと言われたらどうしようもありません。
社員はガマンするしかありませんでした。
遅れてでも給料が支払われるなら・・・と思ったからでした。

しかし、そんな状態も長くは続きませんでした。
仕事が減り、もうどうしようもなくなったのです。

社長は会社をたたもうかと思いました。
しかし、どうしてもやりたくて始めた会社です。
たたむことはできませんでした。

困ったのは社員も同じです。
結局は社長と奥さん以外はみんな会社を去ってしまいました。
給料をもらうことなく。

社長がその時どんなことを思っていたかはわかりません。
ただ、頼まれている仕事を終わらせなければならない
ということだけははっきりしていました。

一方、辞めた社員はというととても困った状態でした。
辞めるまでの数ヵ月分の給料をもらっていなかったのですから。

中には何度も社長に訴えた者もいました。
が、社長もないものはないのです。
ただ「ごめん」というしかありませんでした。

それから10年以上が過ぎたでしょうか。
辞めた社員が穏やかな日常を取り戻した頃です。

社長から辞めた社員宛てに一通の手紙が届きました。
内容は次のようなものでした。

お変わりなくお過ごしでしょうか。
未払い分の給料をお渡ししたく存じます。
つきましては○月○日に弊社へお越しいただけませんでしょうか。
よろしくお願いいたします。

その日、辞めた社員全員がその会社に集まりました。
薄暗い小さな会社には、
ほんの少しですが飲み物と食事の用意がされていました。

この社長の行為には賛否両論あるかもしれません。

しかし「何事も取り返しがつかないことはない」と思うことが
大切なんだなぁと思います。

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